はじめに 下腹部痛を契機に発見された 骨盤内Castleman病の1例 ○下埜 城嗣、 柿木 康孝、 竹村 龍、 千葉 広司、 福原 敬、 三宅 高義 市立旭川病院血液内科 Castleman病はリンパ節腫大を来たす 良性のリンパ増殖性疾患である。 好発部位は胸腔内、特に縦隔に発生 することが多く骨盤内に発生すること は非常に稀と言われている。 検査所見 症例 48歳 男性 主 訴 左下腹部痛・背部痛(鈍痛) 現病歴 2009年1月頃から持続する左下腹部痛、背部痛を自覚し、 3月18日当院消化器内科受診。 既往歴 昭和63年大動脈弁置換術施行(ワーファリン内服中) 生活歴・家族歴 特記すべき事なし 身体所見 身長178cm 体重68Kg 血圧122/70mmHg 脈拍 60回/ 分・整 体温36.4℃ SpO2 98 %(room)意識清明 眼球結膜貧血なし 眼瞼結膜黄染なし 胸部異常所見なし 左下腹部に圧痛あり 腹部腫瘤触知せず 肝・脾腫なし 浮腫なし 表在リンパ節触知せず <末梢血> WBC 6220 /μl seg 60.9% eos 4.7% baso 1.1% mon. 3.1% lym. 30.2% RBC 503x104 /㎕ Hb 15.2 g/dl Ht 46.3 % PLT 27.9x104 /μl <凝固系> PT 21.0 秒 PT-INR 2.06 PT 36.0 % APTT 37.2 秒 Fib 225.0 mg/dl <生化学> Na 141 K 4.6 Cl 105 Ca 9.6 BUN 14.6 Cr 0.71 TP 7.7 ALB 4.7 T-Bil 0.6 AST 20 ALT 17 LDH 319 γ-GTP 22 ALP 108 CRP 0.03 mEq/l mEq/l mEq/l mg/dl mg/dl mg/dl g/dl g/dl mg/dl IU/l IU/l IU/l IU/l IU/l mg/dl <尿検査> 尿比重 PH 糖 蛋白 ケトン体 1.015 6.5 (-) (-) (-) <感染症> HBs抗原 (-) HCV抗体 (-) TPLA (-) RPR (-) <腫瘍マーカー> s-IL2R 405 U/ml CEA <0.50 ng/ml SCC 1.8 ng/ml CA 19-9 2.6 ng/ml 腹部MRI、PET 腹部CT T1強調画像 T2強調画像 1 病理所見 手術所見 ・腫瘍全体が直腸間膜及び直腸壁とはげし く癒着していたため、まず生検を行った。 ・迅速病理で悪性リンパ腫疑いであった。 ・全摘するためには、人工肛門造設が必要 と判断されたため、治療は化学療法ある いは放射線療法を選択した方が良いと判 断した。 弱拡大 強拡大 小型の胚中心を有するリンパ濾胞増生を示し、硝 子化した小血管が入り込んでいる像がみられた。 治療について 診断 Unicentric Castleman病 hyalin-vascular type ・全身の検索では病変は骨盤内に限局してい た。 ↓ ・Castleman病での放射線療法は文献的に報 告症例数は少ないが有効性が期待できた。 ↓ ・骨盤内腫瘤へ回転原体照射で 40Gy/16Fr/4Wを施行した。 腹部CT 照射前CT 照射1ヶ月後CT Castleman病 ① 本邦報告例(339例) 組織分類 : hyaline-vascular type:著明な血管増生を認める・・61% plasma cell type:形質細胞増生を認める ・・ 24% Mixed type:両者の特徴を併せ持つ ・・11% 臨床分類 : unicentric type:限局型 multicentric type:多発型 ・・ 69% ・・ 31% 発生部位 : 胸部(45.4%)>頭頸部(24.8%)>後腹膜(11.0%)>多発 型(5.0%)>骨盤内(1.4%) (祝迫ら; 日臨外会誌68(12),2007) 2 Castleman病 ② Unicentric type Multicentric type 年齢中央値 20~30歳 50~60歳 症状 無症状 発熱、倦怠感など 部位 縦隔が主 多発リンパ節腫大、肝脾腫 組織型 HV型、混合型 PC型、混合型 治療 外科的切除 まれに放射線療法 ステロイド、化学療法、 抗IL-6受容体抗体 治療反応性、 予後 良好、再発はまれ 進行性、予後不良 結語 ・ 下 腹 部 痛 を 契 機 に 発 見 さ れ た骨 盤 内 Castleman病を経験した。 ・Unicentric typeで手術困難な症例に対し ては放射線治療も有効と考えられた。 3
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