症例32解答編

質問
・追加で知りたい問診,身体所見はありますか?
・鑑別診断としては何を考えますか?
・また,その場合どんな検査を計画しますか?
【検査所見】
WBC 10120 /μl
Neu
70.4 %
Lym 20.5 %
Mon
8.9 %
Eos
0.1 %
Bas
0.1 %
Hb
14.8 g /dl
Plt 17.4 ×104 /μl
CRP
13.10 mg/l
【尿検査】
比重 1.021
PH
7.0
蛋白
1+
糖
潜血
2+
亜硝酸
WBC反応
-
AST
15
ALT
12
LDH
192
CK
85
ALP
217
γ-GTP 36
T-BIL 1.29
TP
7.0
ALB
3.7
BUN
9.0
Cr
0.58
Na
135
K
3.8
Cl
98
PCT
ESR(1h)60
HbA1c 5.6
IU/l
IU/l
IU/l
IU/l
IU/l
IU/l
mg/dl
g/dl
g/dl
mg/dl
mg/dl
mEq/l
mEq/l
mEq/l
mm
%
【血液ガス】 (r.a.)
7.491
pH
39.1 mmHg
PaCO2
69.6 mmHg
PaO2
HCO3 ‐ 29.8 mEq/l
+6.0 mEq/l
B.E
0.8 mmol/l
Lac
【血液培養】
2セット陰性
【単純CT】
胸部~腹部~骨盤部単純CT:感染・熱源となる所見なし
【経過】
入院当日:リウマチ性多発筋痛症,偽痛風,敗血症
(フォーカス不明)などを鑑別に血液培養採取,
セフトリアキソンを開始.
翌日:全身状態は悪化なく経過.肩関節痛は軽減
するも,手関節痛,肘関節痛出現あり.頸部痛持続.
39度の発熱あり.
【経過】
経過から偽痛風を疑い
両膝レントゲン写真,頸椎単純CTを撮影.
感染否定目的に頸部~上気道を耳鼻科で,
脊椎~軟部組織を整形外科で精査を依頼.
各科での精査の結果
感染は否定的
石灰化あり
【経過】
偽痛風と診断,入院2日目からロキソプロフェンの
内服を開始した.速やかに解熱,鎮痛が得られた.
入院4日目にはADLは平素と同様の状態となった.
7日目に自宅退院となった.
頸椎偽痛風
(Crowned dens syndrome)
Crowned dens syndrome
・1985年にBouvetらにより報告された.
・軸椎歯突起周囲に石灰化を伴い,急性の頸部痛を起こ
す症候群.=環軸関節の偽痛風.
・CTで環軸椎周囲に石灰化を認め,他の関節でも関節軟
骨石灰化がみられる(66%程度)ことが特徴的.
しかし高齢者では非特異的な石灰化も多く,診断には他
疾患の除外(髄膜炎,感染性脊椎炎など)が重要.
J Bone Joint Surg Am 2007 dec;89(12):2732
偽痛風
・他疾患罹患中の発症が70%であり,入院中の発熱の原
因にもなる.
・関節液よりピロリン酸カルシウムが証明されれば診
断的だが,5%で化膿性関節炎を合併していたとの報告
もあり,培養検査は必須.
・治療はNSAID投与.重症・難治例ではコルヒチンや副
腎皮質ステロイドの使用が考慮される.
Can med Assoc J.1981 Mar 1;124(5) 545 J Rheumatol.2012 Jan;39(1) :157