多発骨折・著明な低K血症で発見された fanconi症候群の一例 - SQUARE

多発骨折・著明な低K血症で発見された
fanconi症候群の一例
近江八幡市立総合医療センター
腎臓内科
宮澤里紗 原将之 高木彩乃 門浩志 八田告 澤田克徳
宮澤里紗・原将之・高木彩乃・門浩志・八田告・澤田克徳
整形外科
森本 茂
症例:39歳 女性
【主訴】 腰痛
【現病歴】
2006年に右股関節痛が出現し、2007年他院にて大腿骨頭壊死と診断されたが,
軽度であったため保存療法となっていた。しかし徐々に壊死部分の拡がりを認め
たため同年人工骨頭置換術を施行された 術後も歩行困難が続いており 2009年
たため同年人工骨頭置換術を施行された。術後も歩行困難が続いており、2009年
腰痛も出現してきたため、近医受診。骨量減少に伴う腰椎側弯と電解質異常を指
摘され当院当科紹介受診、精査加療目的にて入院となった。
【家族歴】父 DM
【既往歴】特になし
【内服】ロキソニン・アレロック・ムコスタ
入院時身体所見
身長 142cm 体重 50kg
BT37.0℃ BP107/70mmHg
眼瞼結膜:貧血軽度
眼球結膜:黄染なし
口腔:発赤なし,扁桃腺腫大なし
リ パ節 触知 ず
リンパ節:触知せず
呼吸:清 雑音なし
心音:整
音
雑音なし
雑音
腹部:軟 圧痛なし
四肢:両下腿浮腫あり
項部硬直なし
叩打痛なし
神経所見異常なし
入院時検査所見
血液検査
WBC
7.5 ×103 /μL
Na
139 mg/dL
抗核抗体
(-)
RBC
4.7 ×106 /μL
K
2.5 mg/dL
抗ds-DNA抗体
(-)
HgB
13.7 g/dL
Cl
110 mg/dL
抗SS-A抗体
(-)
HCT
90.0 fL
Ca
8.5 mg/dL
抗SS-B抗体
(-)
PLT
177 ×103/μL
IP
2.6 mg/dL
IgA
270
TP
8.6 g/dL
iPTH
8.6 g/dL
IgM
1152
ALB
4.4 g/dL
TSH
2.230 μIU/mL
IgG
1409
ALP
1227 IU/L
F-T4
0.72 ng/dL
血ガス
AST
22 IU/L
F T3
F-T3
2 64 pg/mL
2.64
/ L
PH
7 211
7.211
ALT
20IU/L
BUN
20.4 mg/dL
pCO2
33.0mmHg
AMY
205 IU/L
Cre
1.84 mg/dL
pO2
95.3mmHg
T Bill
T-Bill
0 3 mg/dL
0.3
/dL
血糖
98 mg/dL
HCO3c
12 7mmol/L
12.7mmol/L
CK
28 IU/L
ABEe
-14.0mg/dL
T-cho
175mg/dL
Lac
3
尿酸
2 4mg/dL
2.4mg/dL
Aniongap
g p
9.6
HbA1c
4.9 %
入院時身体所見
尿検査
pH
6.0
随時尿Na
33.0 mEq/L
蛋白定性
100(2+)
随時尿K
29 27 mEq/L
29.27
潜血
(1+)
随時尿Cl
40.7 mEq/L
白血球
(-)
随時尿Cre
33.62 mEq/L
ブドウ糖
1000(3+)
随時尿IP
171 8mEq/L
171.8mEq/L
ケトン体
(-)
随時尿TP
171.8mg/dL
赤血球[HPF]
<1
5.11g/g・CRE
白血球[HPF]]
白血球[
5-9
尿蛋白CRE補
正値
赤血球形態
RBC陰性
随時尿NAG
10.6IU/L
尿細管上皮
細胞
1-4
β2MG
42700μg/L
硝子円柱
(1+)
上皮円柱
(1+)
顆粒円柱
(2+)
尿中アミノ酸分析
X 所見
Xp所見
腰椎
右下肢
左上肢
骨シンチ
症状
①高Cl性代謝性アシドーシス
②腎性低
②腎性低K血症
症
③腎性低P血症
④腎性糖尿
⑤アミノ酸尿
⑥蛋白尿・低分子蛋白尿
⑥蛋白尿
低分子蛋白尿
⑦低尿酸血症
⑧骨軟化症による多発骨折
⑨腎機能障害
Fanconi症候群
Fanconi症候群
Fanconi症候群とは、近位尿細管の機能障害によりアミノ
酸 糖 リ 酸 重炭酸 そ 他近位尿細管で再吸収される
酸・糖・リン酸・重炭酸・その他近位尿細管で再吸収される
低分子蛋白や尿酸などの溶質が尿中に漏出する病態の総称で
ある。
ある
Fanconi症候群
原因
・特発性
・二次性
①先天性要因
代謝異常(
代謝異常(シスチン症,ガラクトース血症,Wilson病・・・)
チ 症,ガラクト
症,
病
)
ミトコンドリア異常症
その他の遺伝性疾患(Lowe症候群,Dent病)
②後天性要因
薬物(バルプロ酸,抗腫瘍薬,抗生物質・・・,)
重金属中毒(鉛 カドミウム)
全身性疾患(アミロイドーシス 白血病 多発性骨髄腫 腎移植後
全身性疾患(アミロイドーシス,白血病,多発性骨髄腫,腎移植後,
Sjogren症候群)
Fanconi症候群
【腹部CT】明らかな異常所見なし。
【副甲状腺超音波】異常所見なし。
【血清免疫電気泳動】IgM・IgDの増加を認めるが、明らかなmonoclonarity判定
できず
【尿免疫電気泳動】
【尿免疫電気泳動】Bence-Jones蛋白認めず。その他異常M蛋白も認めず。
白
ず
他異常
白
ず
【十二指腸biopsy】アミロイドーシスを疑う所見なし。
【lip biopsy】シェーグレンを疑う所見なし
biopsy】シェ グレンを疑う所見なし
【耳鼻科・眼科】明らかな異常を認めず。
原因精査のため腎生検を施行
腎生検組織所見
IgG
IgA
IgM
C3c
C4
C1q
Fib
まとめ
①光顕
得られた検体は1条。検体全体が皮質。
(糸球体)
糸球体は18個。全硬化糸球体3個。半月体糸球体0個。
糸球体は軽度メサンギウム基質の拡大を伴う。
明らかな管内増殖、管外増殖、膜の二重化、spike、篆刻像は認めない。
(間質・尿細管)
(間質
尿細管)
びまん性に中等度~高度の線維化で認めた。
著明な炎症細胞の浸潤(リンパ球・形質細胞・少量のマクロファージ・好酸球)を認めた。
尿細管の不規則な拡張や萎縮、尿細管上皮細胞の剥離・変性を広範囲に認めた。
一部尿細管断裂像を認めた
部尿細管断裂像を認めた。
(血管)
特記事項なし
②蛍光
特異的な染色は認めず。
③電顕
Dense depositは認めず。係蹄基底膜は比較的広範囲で軽度肥厚している。
内皮下浮腫はほとんど認めず。足突起はほぼよく保たれている。
間質にはリンパ球浸潤が目立ち、形質細胞やマクロファージも散見される。
萎縮 た尿細管が目
萎縮した尿細管が目立つ。
。
[診断]
Interstitial nephritus and tubular atrophy kidney
ご教授いただきたい点
①今回間質性腎炎と診断しました。原因として何が考えられるで
しょうか。特発性でよいでしょうか?
②現在 アシドーシスの補正・低K血症の補正にて治療を行ってい
②現在、アシドーシスの補正・低K血症の補正にて治療を行ってい
ます。
間質性腎炎に対しステロイドも考慮しましたが、骨軟化症に対して
整形外科的には使用は避けるべきとの返答でした。
ステロイド以外の治療法、例えば免疫抑制剤の使用を考慮すべきか、
使用するならどの免疫抑制剤が適正か また別のよい治療法がない
使用するならどの免疫抑制剤が適正か、また別のよい治療法がない
でしょうか。
③本患者は糸球体障害をほとんど認めていないにもかかわらず、尿
蛋白を多く認めています。尿中アミノ酸が多いことが理由の1つに
白 多
多
あげられると思いますが、原因として他に何か考えられるでしょう
か。
以上の点を含め、病理所見解釈のご教授お願いいたします。
治療経過
治療
治療法:
Calcitrio(4μg/day)
Potassium Phosphate(2g/day)
NaHCO3(2g/day)
入院後の経過
代謝性アシドーシス・低K血症・低P血症は改善。
3
C re
e (m g /dl)
尿タン
ンパク (g /dl)
2.5
2
1.5
1
0.5
0
4/27
5/4
5/11
5/18
5/25
6/1
6/8
6/15
6/22
6/29