ネフローゼ症候群の問題 96 回薬剤師国家試験 50 歳男性。15 年前に健康診断で尿タンパクを指摘された。5 年ほど前から高血圧も指摘さ れるようになった。最近、排尿時に力まないと尿が出にくく、夜間に尿意で何度も目が覚め るようになったため来院した。現在、薬物療法は受けていない。 身体所見:身長 160 cm、体重 66 kg、血圧 165/95 mmHg、.胸腹部異常なし、 下肢に浮腫あり、直腸指診にて前立腺肥大あり、 胸部 X 線:心胸郭比 (CTR) 52%。 血液検査: 赤血球 315×104/μL、白血球 6,000/μL、血小板数 2.5×105/μL、 血清総タンパク 5.4 g/dL、血中尿素窒素 (BUN) 50 mg/dL、 血清クレアチニン (Scr) 2.4 mg/dL、 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) 25 IU/L、 アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) 20 IU/L、 γ-グルタミルトランスペプチダーゼ (γ-GTP) 40 IU/L、 Na 138 mEq/L、K 5.2 mEq/L、Cl 102 mEq/L、Ca 9.2 mEq/L、 総コレステロール 300 mg/dL、HDL コレステロール 30 mg/dL、 トリグリセリド 310 mg/dL、空腹時血糖 108 mg/dL、HbA1c 5.6%、 前立腺特異抗原 (PSA) 3.0 ng/mL (基準値 4.0 ng/mL 以下)。 尿検査:タンパク(3+)、糖(-)、潜血(±)。 問 209 この患者に関する記述の正誤について、正しいのはどれか。 a b c d 尿タンパク陽性は、糖尿病性腎症による。 低タンパク血症は、栄養障害による。 貧血は、血中エリスロポエチンの減少による。 本態性高血圧が疑われる。 問 210 50 歳男性。15 年前に健康診断で尿タンパクを指摘された。5 年ほど前から高血圧も指摘さ れるようになった。最近、排尿時に力まないと尿が出にくく、夜間に尿意で何度も目が覚め るようになったため来院した。現在、薬物療法は受けていない。 身体所見: 身長 160 cm、体重 66 kg、血圧 165/95 mmHg、.胸腹部異常なし、 下肢に浮腫あり、直腸指診にて前立腺肥大あり、 胸部 X 線:心胸郭比 (CTR) 52%。 血液検査: 赤血球 315×104/μL、白血球 6,000/μL、血小板数 2.5×105/μL、 血清総タンパク 5.4 g/dL、血中尿素窒素 (BUN) 50 mg/dL、 血清クレアチニン (Scr) 2.4 mg/dL、 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) 25 IU/L、 アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) 20 IU/L、 γ-グルタミルトランスペプチダーゼ (γ-GTP) 40 IU/L、 Na 138 mEq/L、K 5.2 mEq/L、Cl 102 mEq/L、Ca 9.2 mEq/L、 総コレステロール 300 mg/dL、HDL コレステロール 30 mg/dL、 トリグリセリド 310 mg/dL、空腹時血糖 108 mg/dL、HbA1c 5.6%、 前立腺特異抗原 (PSA) 3.0 ng/mL (基準値 4.0 ng/mL 以下)。 尿検査: タンパク(3+)、糖(-)、潜血(±)。 問 210 a b c d e この患者の高血圧治療に関する記述の正誤について、正しいのはどれか。 降圧目標値は、通常の高血圧患者よりも低く設定すべきである。 アンギオテンシン II 受容体遮断薬を用いる場合には、急激な腎機能低下に注意する。 チアジド系利尿薬の使用が推奨される。 体液中の電解質を改善するため、アルドステロン受容体遮断薬が推奨される。 前立腺肥大症を合併しているので、アドレナリンα1 受容体遮断薬が推奨される。 参照 Wikipedia ネフローゼ症候群(ネフローゼしょうこうぐん、英: Nephrotic syndrome)は、高度の蛋白 尿により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称。 低蛋白血症、高度な蛋白尿、浮腫(眼瞼や下肢)を主な症状とし、病理学的には糸球体基底 膜の透過の亢進を一次的異常として認める。時に高脂血症(高コレステロール血症)も合併 する。ネフローゼ症候群は元来病理学的な概念であり、腎炎=nephritis と異なり、炎症性の 変化(炎症細胞浸潤など)がみられないものの総称として提唱された。若年層(特に幼少期で は男子)に多く発症するが、30 代の男女も発症例も多数報告されている。 原発性糸球体疾患に起因する一次性ネフローゼ症候群と続発性糸球体疾患による二次性ネ フローゼ症候群に分類される。 一次性ネフローゼ症候群の成人の占める割合は、70~80% と多数を占めるが中高年では半数以上が慢性腎症であり、加齢に伴って割合は増加する。最 初の発症から 5 年以内に 2 回以上の再発率は 80%~90%と高い。 二次性ネフローゼ症候群の発症は年齢によって異なるが、小児では紫斑病性腎炎が多く、糖 尿病性腎症やループス腎炎は成人の発症が多い。 種類 原発性 微小変化群(または微小変化型)Minimal change nephrotic syndrom:MCNS 巣状糸球体硬化症 Focal glomerulosclerosis:FGS または巣状分節状糸球体硬化症 Focal segmental glomerulosclerosis:FSGS 膜性腎症 Membranous nephropathy:MN 膜性増殖性糸球体腎炎 Membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN 続発性 アミロイドーシス 膠原病 多発性骨髄腫 ホジキン病 HIV 感染、HBV 感染 糖尿病など 症状 上記の主症状以外にも、強度の全身倦怠感、皮膚の蒼白化や無気力、食欲不振、腹水・胸水 等をみる。タンパクを尿中に排泄してしまう濾過障害の原因は、主に、腎臓の糸球体にあり、 この部位に何らかの原因で、透過性が亢進することによって、本症を惹起すると考えられて いる。主に、アルブミンなどの血中タンパクが排泄されるため、血中タンパクが減少し、血 漿膠質浸透圧が低下する。このため、全身に浮腫を形成する傾向が現れる。また、尿中タン パクが増大するため、尿の浸透圧が増大し、尿細管における水の再吸収が抑制され、一過性 に利尿傾向となる。なお、この遺失タンパク分を肝臓が補完しようとするため、肝臓が、ア ルブミンの合成を開始するが、同時に LDL のようなコレステロール運搬タンパクも合成し てしまうため、本症のような腎臓疾患の罹患者では、高頻度に高脂血症の状態をみることが ある。長期の利尿期間を経て、腎臓の病態が改善されず、高度に腎不全の状態を呈し始める 時期には、乏尿となる。 腎臓には内分泌作用がある。まず腎血漿流量の低下に反応して傍糸球体細胞よりレニンを分 泌することでレニン-アンジオテンシン系 を賦活し、血圧、尿量を調節している。同時に、 血管拡張作用を有するプロスタグランジンが産出され、腎血流の調節に関与している。これ はアンギオテンシン II による血管収縮作用が腎動脈に及ばないように調節する意味がある。 また、尿細管ではエリスロポエチンを分泌し、骨髄での赤血球の産生を働きかける。このた め、腎疾患で尿細管が傷害されると貧血になることがある。また、副甲状腺ホルモンは尿細 管に作用してビタミン D の活性化を起こし、血中カルシウムの上昇作用を担う。 問 209 正解 c 問 210 正解 b e
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