愛媛大学教育学部附属小学校 群馬県前橋市立永明小学校 佐伯 英人 堀田 都 本実践は第 85 回愛媛教育研究大会(平成 18 年 2 月 10 日)で公開した授業実践である。 5月。2年生が遊びを計画し,学校にまだ 業状態のグループ。遊ぶ物を作るときは,同 第 3 学年「じしゃくのふしぎを調べよう」の導入期に該当し,課題づくりの場面である。 慣れていない1年生と遊ぶ活動があった。 じグループの子に指示されないと何もでき 4・5人のグループに分かれ,校庭でそれ なかったAさんが,恥ずかしそうに「いらっ ぞれのグループで考えた遊びが始まった。元 しゃい, いらっしゃい」と呼び込みを始めた。 気のよい1年生におされ気味の2年生。遊び その声につられて1年生が来てくれる。他の 終わった後には, 「1年生が言うことを聞い 2人が,遊び方について説明をする。呼び込 てくれなくて困った」 「大変だった」という み係になったAさんは,1年生がいなくなる 声が聞こえてきた。振り返りの文章にも楽し と,また呼び込みを続ける。声が最初の時よ かったことに加えて困ったことや大変だった り大きくなり, だいぶ慣れてきた様子。 グルー という言葉があった。中には, 「1年生が嫌 プでの話し合いや遊ぶ物を作る活動だけを見 子どもたちは,この矛盾を解決したいと感 がったので違う遊びをした」と,1年生の れば,活躍の場がもてなかったAさんであっ 「磁石を取り囲むように鉄粉がついた」 じ,話し合った。 様子を見ながら,予定した遊びを変更したグ たが,遊びの国では,このグループにとって 「磁石の端の方では針のようになって 「1 本の磁石の両端には違う力があるに違 ループもあった。 欠くことのできない存在になった。片付けが いる」 「磁石を鉄粉に近づけると鉄粉 いない」「でも,1 本の磁石の両端には同じ が飛んでくる」 「トレイの板を通して ように鉄粉がついたよ」「磁石の両端にある 鉄粉が磁石に引きつけられる」 「2 本 力は,鉄粉を同じように引きつけるけれど, の磁石を近づけると磁石の端の鉄粉 何かが少し違うのだと思う」「よくは知らな がいやがるように逃げる」 「2 本の いけれど,磁石には極というものがあると聞 発見の中に矛盾を見いだす 「あれ,おかしいぞ」と感じる発見が見つかっ た。2 本の磁石を近づけたとき,「鉄粉が逃 子どもたちに極の明記されていない棒磁石 げる」と「鉄粉がつながる」という正反対の と鉄粉をわたして遊ばせた。子どもたちは鉄 発見である。疑問を感じた子どもたちは,自 粉の動きや鉄粉の形状におもしろさを感じ, 分の磁石と鉄粉を使って調べ始めた。そして, 夢中になって観察した。その中で,さまざま どちらの発見も正しいことが確かめられた。 なことを発見していった。 「磁石の両端に鉄粉がたくさんつく」 「磁石 の中ほどには鉄粉があまりつかない」 矛盾を解決するための追究活動へ 磁石を近づけると磁石の端の鉄粉がつながる」 いたことがある」「極って何 ?」 これらの発見を紙に書かせ,どんどん黒板 このような話し合いがなされ,極について に貼っていった。すぐに黒板は子どもたちの 調べていくという方向性が決まっていった。 発見でいっぱいになった。このとき,自分た 本実践は,子どもたちが活動を通してさま 1年生を招待する 終わった子どもたちの満足したような様子か ら,自分たちが考えて作った物で1年生に楽 1月に入り,遊びの国を作って1年生を招 しんでもらうことができたうれしさが伝わっ 待する活動が始まった。5月の1年生と遊ん てくる。 だ体験や,12 月に「うごくおもちゃ」を作っ て遊んだ体験が生かされる活動である。 子どもたちの思いを生かす 1年生が喜んでくれる遊びの国にしよう 生活科の時間に,心動かされるような子ど と,遊ぶ物を作る話し合い。生活科の教科書 もたちの姿を目にすることがある。それは, このAさんのように, 「1年生に来てもらっ ちの発見でいっぱいになった黒板を見て,子 ざまな発見をし,その発見の中に矛盾を見い を参考にしたり,今までの体験をもとにした どもたちは満足そうであった。 だし,追究活動を始めるという展開になって りして,各グループで作る物が決まり,作り て遊んでもらいたい」と強い思いをもち,生 そこで,子どもたちが発見したことを発表 いる。本実践を公開し,提案したかったこと 始める。全員が協力して手際よく作っている き生きと活動する姿である。この「こうした し合い,整理する活動を行った。自分の発 の一つがこの「子どもの発見から授業をつく グループもあれば,友達に言われないと何を い」という思いが, 主体的な活動を生み出し, る」という展開である。 してよいか分からない子がいるグループもあ 問題を解決するための原動力にもなるようで る。しかし,どの子もとても楽しそう。 ある。 見を友達に伝え合う中で, 1年生を招待する日,子どもたちは朝から そう考えると, 「こうしたい」という強い 生き生きしていた。1・2年生全体での顔合 思いがもてるような活動を仕組んでいくこと わせが終わり, いよいよ遊びの国が始まった。 が,生活科の授業の充実を図る上では大切な なかなか1年生が来てくれなくて開店休 のだと思う。 (平成 18 年 12 月) 26 27
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