日本建築学会大会学術講演梗概集 (東 北) 2000 年 9 月 1252 戻りコンクリートを再利用したポンプ圧送用先送りモルタルに関する実験的研究 (その10 生コンプラントにおいて製造したモルタルの実態調査) 正会員 ○中田善久 同 高野 肇 同 永井香織 同 女屋英明 *5 *6 正会員 同 会員外 正会員 *2 毛見虎雄 *4 奈良禧德 *6 池田 求 *4 川野辺正徳 表1 モルタルの試験項目および試験方法 試験項目 スランプ スランプフロー 空気量 圧縮強度 静弾性係数 試験方法 JIS A 1101 JASS5T-503 JIS A 1128 JSCE-F522 JIS原案 スランプ(㎝) 30 20 10 0 80 スランプフロー(㎝) (2)モルタルの調合 モルタルの調合は、前報(その8)に示すG,HおよびI プラントの1:1,1:2,1:3および1:4モルタルの4種類とし た。Iプラントにおいては、AE減水剤を3.0㎏/m 3使用し ている。 (3)練混ぜ モルタルの練混ぜに使用したミキサは、G,H,Iの3プ ラントとも二軸型強制練りである。なお、練混ぜ量はい ずれも1.5m3とした。 (4)試験項目および試験方法 試験項目および試験方法を表1に示す。モルタルの 圧縮強度および静弾性係数測定試験は、φ5×10㎝の 供試体によって行い、ひずみの測定は貼付ゲージによ り行った。 (5)試験の時期 フレッシュモルタルの試験は、練混ぜ直後に生コンプ ラントにおいて行い、さらに現場到着時に行った。圧縮 強度および静弾性係数測定用のモルタルの採取は、プ ラントおよび現場において行った。ただし、プラントにお いて採取した供試体については、静弾性係数の測定試 験は行っていない。なお、生コンプラントから建設現場 までの運搬時間は、GおよびI工場で約30分,H工場で 約20分である。 *3 3.実験結果および考察 (1)フレッシュモルタル 調合の種類とフレッシュモルタルの性状を図1に示 す。実機練りによるモルタルのスランプおよびスランプフ ローは、試し練りによる値よりもGおよびHプラントで非常 に大きくなる結果となった。Iプラントについては、このよ うな傾向は見られず実機練りと試し練りの値がほぼ等し い結果となった。空気量は、Iプラントが他の2プラントに 比べて多くなっている。この傾向は、(その8)における試 し練りの傾向と同様であり、IプラントのみAE減水剤を使 用しているためである。 Iプラントのように一般的なモル タルの製造に化学混和剤を使用している生コンプラント Gプラント試し練り Hプラント試し練り Iプラント試し練り Gプラント実機練り(プラント採取) Hプラント実機練り(プラント採取) Iプラント実機練り(プラント採取) Gプラント実機練り(現場採取) Hプラント実機練り(現場採取) Iプラント実機練り(現場採取) 60 40 20 6.0 空気量(%) 1.はじめに 本報告は、前報(その9)に引き続き、生コンプラントに おいて製造されるモルタルの品質を明らかにするため、 関東に所在する任意の生コンプラント3工場で実機によ り製造したモルタルの実態調査を行ったものである。こ こでは、生コンプラントで製造したモルタルのフレッシュ および硬化性状について述べている。 2.実験概要 実験は、関東に所在する任意の生コンプラント3工場 においてプラントでモルタルを練混ぜ、モルタルのスラ ンプ,スランプフロー,空気量,圧縮強度および静弾性 係数を調べた。 (1)使用材料 材料は、前報(その8)に示すG,HおよびIプラントに おいて使用しているものを用いた。 *1 4.0 2.0 0 1:1 1:2 1:3 調 図1 調合の種類とフレッシュモルタルの性状 Study on Preliminary Mortar in the Concrete Pumping Practice Recycled for Returned Concrete Part 10: Inspection of Mortars in Randomly Selected Ready-mixed Concrete Plants NAKATA Yoshihisa,KEMI Torao,TAKANO Hajime,NARA Yoshinori,NAGAI Kaori IKEDA Motomu,ONAYA Hideaki and KAWANOBE Masanori - 503 - 1:4 合 40 Gプラント試し練り Hプラント試し練り Iプラント試し練り Gプラント実機練り(プラント採取) Hプラント実機練り(プラント採取) Iプラント実機練り(プラント採取) Gプラント実機練り(現場採取) Hプラント実機練り(現場採取) Iプラント実機練り(現場採取) 60 40 1 :1 1: 1 静弾性係数(kN/㎜2) 材齢7日圧縮強度(N/㎜2) 80 1: 4 1: 2 20 1:4 Gプラント試し練り Hプラント試し練り Iプラント試し練り Gプラント実機練り(現場採取) Hプラント実機練り(現場採取) Iプラント実機練り(現場採取) 10 1 :3 0 0 20 40 80 100 図3 水セメント比と静弾性係数 60 40 1: 1 New RC式3) E=33.5×k1×k2×(γ/2.4)2×(Fc/60)1/3 +10% 1 :2 40 +10% 30 1 :3 20 0 60 水セメント比(%) 1: 4 0 20 40 60 80 100 水セメント比(%) 図2 水セメント比と圧縮強度 は、約30% 1)であり、残りの約70%の生コンプラントでは 化学混和剤を使用していないので注意が必要である。 (2)圧縮強度 水セメント比と圧縮強度の関係を図2に示す。プラント で採取したモルタルの圧縮強度は、Iプラントの結果が 他プラントよりも著しく大きい結果となった。この結果は、 試し練りにおけるIプラントの結果と比べても大きい結果 となった。これは、試し練りと実機の練混ぜ性能の違い と、IプラントのみAE減水剤を使用したことによるセメント 分散効果が影響したと考えられる。調合の種類による圧 縮強度は、水セメント比が大きく変わらないにもかかわら ず試し練り,プラント採取および現場採取でばらつきが 大きくなった。特に、プラントにおける実機練りでは、性 状変化の変動要因が多くなることが影響していると考え られる。また、モルタルの採取時期による圧縮強度の違 いは、見られなかった。 (3)静弾性係数 水セメント比と材齢28日における静弾性係数の関係 を図3に、材齢28日における圧縮強度と静弾性係数の 関係を図4に示す。現場において採取したモルタルの 静弾性係数は、試し練りの結果より小さい値となってお り、建築学会式およびNew RC式における-10%値の範 囲にそのほとんどが入っていない。実機により得られた モルタルの静弾性係数は、同一圧縮強度におけるコン クリートと比較すると10~20%程度小さくなる。 西松建設 東京建築支店 足利工業大学 工学部 山宗化学 技術部 内 山アドバンス 中 央技術 研究 所 大成建設 技術研究所 内 山城 南コ ンクリ ート工業 静弾性係数(kN/㎜ 2) 材齢28日圧縮強度(N/㎜2 ) 1 :3 20 0 80 *1 *2 *3 *4 *5 *6 1 :2 30 -10% 20 Gプラント Hプラント Iプラント -10% γ=2.3,k1=k2=1 として算出した 10 建築学会式2) E=21.0×(γ/2.3)1.5×(Fc/20)0.5 0 0 20 40 60 圧縮強度(N/㎜ 2) 80 100 図4 圧縮強度と静弾性係数 4.まとめ コンクリートポンプ施工指針・同解説 4)では、先送りモ ルタルの品質を、型枠に打込むならば静弾性係数を考 慮し、コンクリートの圧縮強度より30~40%程度高くする 必要性が述べらている。一方、建築構造物に使用され るコンクリートの圧縮強度は、品質基準強度が27N/㎜2 程度のコンクリートが一般的に使用されることが多い。コ ンクリートポンプ施工指針・同解説通りのモルタルを使 用する場合、打込むコンクリートの品質基準強度を27 N/㎜2 とするとモルタルの強度は、35~38N/㎜ 2程度必 要になる。本実験においてこの圧縮強度を満足できる モルタルは、1:2モルタル以上であった。さらに標準期以 外では温度補正が施され、コンクリートの強度が大きく なり、モルタルが要求される強度も大きくなる。 先送りモルタルは、基本的に型枠に打込まず全量廃 棄すべきであるが、施工上廃棄できない場合がある。こ のようなときは、生コンプラントのモルタルの品質を調べ た上、最適なモルタルを選定することが望まれる。 【参考文献】 1)中田善久,毛見虎雄:生コン製造業における先送りモルタルおよび戻りコンクリー トの実態調査;日本建築学会関東支部研究報告集,1995,pp.165~168. 2)日本建築学会;「鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説」,1999 3)建設省:建設省総合技術開発プロジェクト「鉄筋コンクリート造建築物の超軽量・ 超高層化技術の開発」報告書,1993.10 4)日本建築学会;コンクリートのポンプ工法施工指針・同解説,pp.81~82,1994 Tokyo Architectual Branch Office Nishimatu Constraction. Ashikaga Institute Of Technology. Yamaso Chemical Technical Department. Uchiyama Advance A Reseach Institute Technology. Taisei Corporation Technology Research Center . Uchiyama Jonan Concrete Industry. - 504 -
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