石炭灰を用いた吹付けコンクリートの凝結性状・強度発現 - 土木学会

V-488
土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)
石炭灰を用いた吹付けコンクリートの凝結性状・強度発現に関する研究
飛島建設技術研究所
正会員○岩城圭介
飛島建設技術研究所
正会員 平間昭信
飛島建設広島支店
正会員 渡辺 博
中国電力土木部 正会員 齊藤 直 安野孝生
山口県錦川総合開発事務所
緒方正則
1. はじめに
山岳トンネルの吹付けコンクリートでは,産業副
材料
セメント C
産物の有効利用の観点から,フライアッシュや石炭
灰原粉の適用に関する数多くの検討がなされている.石炭灰 CA
最近では,コスト縮減を目的にセメント置換で石炭
灰を用いた適用事例
1)
もある.一方,トンネル支保
細骨材 S
粗骨材 G
部材である吹付けコンクリートは,セメント置換で 急結剤 A
混和材を適用する場合であっても,急結剤の作用に
表−1 使用材料
材料の諸元
3
普通ポルトランドセメント,密度 3.16 g/cm
2
新小野田火力発電所産,比表面積 3,290 cm /g,
3
密度 2.20 g/cm ,強熱減量 3.7%,
活性度指数 82.9%(28 日)95.2%(91 日)
岩国市守内蒲江沖産,砕砂・海砂混合砂,粗粒率 2.64
3
密度 2.66 g/cm
3
岩国市守内産,砕石 1505,密度 2.65 g/cm
3
セメント鉱物系,密度 2.70 g/cm
表−2 室内モルタル試験の石炭灰置換率の組合せ
セメント容積置換率
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
360 324 288 252 216 180 144
0%
0
25
50
75 100 125 150
360 324 288 252 216 180
−
3%
27
52
77 102 127 152
360 324 288 252 216
−
−
6%
53
78 103 128 153
360 324 288 252
−
−
−
9%
79 104 129 154
360 324 288
−
−
−
−
12%
106 129 155
360 324
−
−
−
−
−
15%
130 155
360
−
−
−
−
−
−
18%
155
よる適切な凝結・強度発現性状を有する必要がある.
本研究では,配合選定のための資料を得る目的で,石炭灰の
添加方法・添加量が吹付けコンクリートの凝結・強度発現性状
細骨材容積置換率
に与える影響を室内モルタル試験により把握した.また,試験
施工で得られた強度試験結果から室内モルタル試験結果の妥当
性を検証した.
2. 実験概要
使用材料を表−1 に示す.石炭灰は,原粉で JIS A 6201 フラ
イアッシュ規格の II 種に近い品質を有するものである.
3
室内モルタル試験では,単位セメント量 360 kg/m ,W/C
60.0%,s/a 62.0%のコンクリート配合のモルタル部分を対象と
し,石炭灰容積置換率の組合せを表−2 に示すように設定した.
表中上段:コンクリート換算の単位セメント量(kg/m3)
表中下段:コンクリート換算の単位石炭灰量 (kg/m3)
表中網掛け:長期圧縮強度試験(材齢 7,28 日)実施
表中には,試験を行ったモルタル配合に基づくコ
表−3 試験施工の配合
ンクリート換算の単位セメント量,単位石炭灰量
を示す.なお,モルタルのフレッシュ性状は,
JIS A 1173 によるモルタルスランプが 65 ± 10 mm
の範囲となるように単位水量の調整を行った.単
3
位水量は,コンクリート換算で 216∼228 kg/m の
範囲であった.また,急結剤の添加量は,コンク
配合
No.
水粉体 水セメント
スランプ
比
比
(cm)
W/P
W/C
(%)
(%)
細骨材
率
s/a
(%)
N
CA1
CA2
CA3
61.1
58.9
60.0
52.2
61.7
61.3
61.6
60.0
10 ± 2
3
リート換算で 21.6 kg/m 一定とした.
以上のモルタル配合に関し,表−4 に示す凝結時間,圧
縮強度の試験
2), 3)
を行った.なお,凝結性状は,始発時間
を指標とした.一方,試験施工
1)
では,表−3 に示す N
(一般的な配合),CA1,CA2,CA3(石炭灰添加量,添
加方法を変化させた配合)の 4 配合について,表−4 に示
す初期強度,長期強度の試験を行った.
区分
室内
モルタル
試験
試験施工
61.1
84.1
70.6
70.6
水
W
220
212
216
216
3
単位量 (kg/m )
粉体 P
急結剤
セメント 石炭灰
A
C
CA
360
0
252
108
25.2
306
54
306
108
表−4 試験方法
試験方法
JSCE-D 102 凝結時間測定に準拠*
JSCE-D 102 圧縮強度試験に準拠*
圧縮強度
試験材齢 3, 24 時間, 7, 28 日
プルアウト法(JSCE-G 561,JHS
初期強度
702)による.試験材齢 3,24 時間
コアの圧縮強度(JSCE-F 561,JIS
長期強度
A 1107),試験材齢 7,28,91 日
試験項目
凝結時間
*モルタル先練り,急結剤後添加による湿式練混ぜ方式 3)
キーワード:吹付けコンクリート,石炭灰,置換方法,凝結性状,強度発現
飛島建設技術研究所 〒270-0222 千葉県東葛飾郡関宿町木間ヶ瀬 5472 TEL: 04-7198-7559 FAX: 04-7198-7586
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土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)
3. 試験結果および考察
2.2
2.0
3
メント量 C (kg/m ),粉体水比 P/W,石炭灰の対粉体添加率 CA/P (%)
1.8
始発時間 (m in)
室内モルタル試験で得られた凝結・圧縮強度の試験結果を単位セ
などの配合要因と関連づけた.試験結果と配合要因の組合せのうち,
1.6
顕著な関連が認められた組合せを図−1∼図−4 に示す.なお,凡例
1.4
の LT は室内モルタル試験,FT は試験施工を表す.
1.2
3.1 凝結性状 図−1 に示すように,CA/P が大きいほど始発時間が
1.0
遅れる傾向を示し,特に,CA/P が 30%を越える範囲で極端な始発時
0.8
0
間の遅延を示した.始発時間の遅れは,急結性不足による壁面に吹
14
3.2 初期強度 室内モルタル試験の材齢 24 時間圧縮強度については,
12
図−2 に示すように,単位セメント量 C が多いほど強度が高くなる
10
が比較的大きいことが指摘されており
4)
,一般的な初期強度の管理
2
圧縮強度 (N/m m )
設定における CA/P は,30%以下が望ましいと考えられる.
る値を示した.初期強度の範囲では,急結剤の作用により品質変動
20
30
40
50
60
図−1 石炭灰の対粉体添加率と始発時間の関係
き付けた後のダレや剥がれを誘発する可能性がある.よって,配合
3
2
傾向であり,C が 250 kg/m 程度を越える範囲では,6 N/mm を越え
10
石炭灰の対粉体添加率 C A/P (%)
LT 3 hr
LT 24 hr
FT 3hr
FT 24hr
8
6
4
2
2
3
基準である材齢 24 時間 5 N/mm を満足するには,C 250 kg/m 以上
0
を確保する必要があると考えられる.なお,室内モルタル試験の材
100
150
200
250
300
350
400
3
単位セメント量 C (kg/m )
齢 3 時間強度は,配合要因との明確な関連を示さない結果であった.
図−2 単位セメント量と初期強度の関係
また,試験施工の初期強度は,材齢 3 時間,24 時間とも,室内モル
35
タル試験に比べて高い値であった.
4 に示すように,単位セメント量 C,粉体水比 P/W との関連がそれ
ぞれ認められた.すなわち,C が多いほど,また,P/W が高いほど
材齢 7 日,28 日とも圧縮強度が高くなる傾向を示した.一方,試験
施工の長期強度は,材齢 28 日,91 日で P/W との相関が認められる
2
圧縮強度 (N/m m )
3.3 長期強度 室内モルタル試験の長期圧縮強度については,図−3,
が,C との明確な関連を示さない結果であった.また,強度レベル
LT 7 d
LT 28 d
FT 7 d
FT 28 d
FT 91 d
30
25
20
15
10
に関しては,室内モルタル試験の材齢 7 日,28 日に対し,試験施工
150
4. まとめ
石炭灰を用いた吹付けコンクリートでは,1) 石炭灰の対粉体添加
3
率 CA/P を 30%以下とすること,2) 単位セメント量 C を 250 kg/m
以上とすること,3) 長期強度に基づき粉体水比 P/W を選定すること
により,適切な凝結性状,強度発現を確保できると考えられる.
2
圧縮強度 (N/m m )
吹付けによる締固め効果なども影響したと考えられる.
350
400
35
計基準強度を確保する配合選定に際しては,P/W と長期強度の関係
に相違を生じた.これは,急結剤添加量や養生条件の違いに加え,
300
図−3 単位セメント量と長期強度の関係
似する結果であった.以上から,一般的に材齢 28 日で設定される設
なお,室内モルタル試験と試験施工では,材齢に応じた強度発現
250
3
単位セメント量 C (kg/m )
の材齢 28 日,91 日がそれぞれ符合し,P/W との関係もそれぞれ類
を利用することが合理的であると考えられる.
200
LT 7 d
LT 28 d
FT 7 d
FT 28 d
FT 91 d
30
25
20
15
10
1.20
1.40
1.60
1.80
2.00
粉体水比 P/W
図−4 粉体水比と長期強度の関係
[参考文献]1) 山本他:石炭灰を用いた吹付けコンクリートの現場適用について,土木学会第 57 回年次学術講演会 VI(投稿中),
2002. 2) 平間他:急結剤を添加したモルタルの凝結性状に関する基礎的実験,土木学会第 51 回年次学術講演会 V-236,1996. 3) 寺
村他:各種急結剤と吹付けモルタルの特性に関する基礎的研究,土木学会論文集,No.634/V-45,pp.91-101,1999. 4) 平間他:高強度
吹付けコンクリートの品質変動について,土木学会第 50 回年次学術講演会 V-71,1995.
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