Q&A 「耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震診断 および耐震改修指針講習会」質 問・回 答 集(m) 既存鉄骨造建築物の耐震診断および耐震改修指針検討委員会 昨年10月から本年5月にかけて開催いたしました「耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震 診断および耐震改修指針講習会」において,受講者の方々から寄せられました質問と回答を掲載いたしま す。 8。柱 067 A67 脚 柱脚がピンの場合(ベースプレートが剛強でない場合)の耐力の算出方法を教えて下さい。 柱脚がピンという条件は,柱脚で軸力とせん断力を伝達する以外に,柱脚の回転が許容されるこ とが必要です。露出柱脚の場合,柱脚に回転能力を確保するためにはアンカーボルトの塑性伸び能力 が必要となり,結果として柱脚には曲げモーメントが生じることになります。 したがって,露出柱脚でピン柱脚として設計されている場合でも,アンカーボルトが降伏するまで ベースプレートの面外曲げ降伏や基礎コンクリートが破壊しない場合は本耐震診断指針5.5(1)によっ て柱軸力に応じて桂脚の全塑性曲げ耐力(バ馬)及び全塑性せん断耐力(jQp)を算出することができ ます。この場合,柱脚の靭性指標は付表(4)に示されております。 また,ベースプレートの面外曲げ降伏がアンカーボルトの降伏に先行する場合は,ベースプレート の面外曲げ降伏時におけるアンカーボルトの軸力を用いて(ダ砧)及び心硲)を算定すればよいと考 えられます。 なお,露出柱脚でピン柱脚として設計されたものは一般に5.5(1)で算出される桂脚の(ン沁)は小 さな値となります。診断者がこの値を骨組の保有水平耐力の算定に際して無視することは,安全側の 措置となりますので,診断者の裁量の範囲と考えられます。 068 露出型柱脚は曲げ・せん断耐力を検討するのに,埋込み型で埋込み不足,根巻き型で根巻き高さ が不足する場合にぱピンとする”となっております。埋込み型・根巻き型において露出型に準じた 検討は不要でしょうか。 069 柱脚の耐力で埋込み,根巻き型で「ピン」と判断される場合,ベースプレート,アンカーボルト の形状によっては,露出型として扱ってもよいでしょうか。 A68・A69 埋込み柱脚で埋込み深さが浅い場合,または根巻き柱脚で根巻き高さが低い場合はピン柱 脚として評価し,靭性指標としては1.2をとることになります。ただし,別途の精密診断でこれ等の 柱脚の最大曲げ耐力及び最大せん断耐力を算定する必要があるときは,日本建築学会「鋼管構造設計 施工指針・同解説」(1990年1月)が参考になりますが,これ等の柱脚は最大耐力に達した後の耐力 劣化が著しいことに留意する必要があります。 なお,実態調査によりベースプレートの形状・寸法及びアンカーボルトの配置・種類・サイズなど が明らかになれば,ご指摘のとおり,露出柱脚に準じた検討も可能と考えられます。 埋込み柱脚について Q70 角形・円形鋼管柱の場合のかぶり厚の規定は,解説では,“中空断面で,内部にコンクリートを充 てんしてないものでばとなっているが,内部にコンクリートが充てんされていると判断できる場合 は,H形断面の柱と同様に, (51X52)の式で判断をして良いでしょうか? 角形一円形鋼管柱の埋込み柱脚で,柱脚部にコンクリートを充てんした場合の実験データは僅か A70 しかありませんが,充てんコンクリートが鋼管管壁の面外変形を補剛する効果により,柱脚部が中空 の場合より耐力及び履歴状況が良好となることが日本建築学会「鋼管構造設計施工指針・同解説」 (1990年1月)に解説されています。しかし,現段階では安全側の措置として柱脚部にコンクリート を充てんした場合に対しても本指針を適用することが考えられます。 なお,角形・円形鋼管柱とH形断面柱では側柱の被りコンクリート部分のパンチングシアー破壊に 対する抵抗機構に相違する点がありますので,別途,精密診断をする場合は日本建築学会「鋼管構造 設計施工指針・同解説」(1990年1月)など関連研究を参考にして,柱脚部の耐力および履歴性状を 評価して下さい。 071 p10 : 2)b)の1≧2Hでt≧1.5Hの場合(下から2行目)とあるのはミスプリントではない でしょうか。 H=600m/mならt≧900となります。通常こんなかぶりはないのでt≧15cmが正しいのでは。 埋込み柱脚では,側柱柱脚で埋込み深さ(1)が浅く,コンクリートのかぶり厚さ(t)が薄い場合, A71 解説に記述されているとおり,埋込み部・鉄骨の支圧力により被りコンクリートがパンチングシアー 破壊します。本文5.5(2)「埋込み柱脚」に記述されている内容は,埋込み部鉄骨の納まりに特殊な工 夫を施していない場合に関するものでミスプリではありません。 側柱柱脚に関する被りコンクリートのパンチングシアー破壊に対する補強例及び終局曲げ耐力の算 定例については,日本建築学会「鋼管構造設計施工指針・同解説」(1990年1月)に詳しく解説され ていますので参考にして下さい。 072 根巻き柱脚H形断面柱(p11)角形・円形鋼管柱(p12) の解説図を見ますとフープのつめが135°となっていま すが90°のつめフックの場合の耐力・F値の考え方につ ソ 90° ズブリ 135レニ]≧ いて教えて下さい。 A72 根巻き柱脚の根巻き部鉄筋コンクリートの配筋は日本建築学会「鉄骨鉄筋コンクリート造配筋指 針(案)・同解説」(1994年7月)によることになります。したがって,フープ筋の配筋は同指針 (案)の帯筋の形状(1片塑性化部分)に示される135度フック,閉鎖形などによることになります。 実態調査により,根巻き部のフープ筋の配筋が90度フックで余長が短い場合はその旨を実態調査 用紙に明記して下さい。配筋の実態に応じて診断担当者が同指針(案)「2.3あばら筋・帯筋」の解説 などを参考にして工学的判断によりF値を低減するなど,適切な対応を行って下さい。 Q73 軸部降伏となるアンカーボルトとはどんなものですか? 棒鋼にねじ切りしたものはどうですか? A73 軸部降伏が保証されるアンカーボルトとは,ねじ部が転造で加工されているボルトです。棒鋼に 切削加工してねじ切りをしたボルトは,軸部降伏以前にねじ部で破断する可能性が大きいものですが, 軸部断面積に対するねじ部の有効断面積の比が鋼材の降伏比(=降伏強さ/引張強さ)以上であれば, 破断する可能性は低くなります。実際(公称ではありません)の降伏比が0.75以下の棒鋼で, M16 以上のアンカーボルトであればにこの条件を満足します。 Q74 A74 アンカーボルトについて 切削ネジと,転造ネジとの見分け方を教えて下さい。 ねじ加工法の違いにより,ねじ断面をみた場合,転造ねじではねじ山とねじの谷の部分に僅かに 丸みが付いていますが,切削ねじではこの部分がかなり鋭角的になっています。 また,ねじ山の表面も転造ねじでは滑らかですが,切削ねじでは細かい段差がみられ平滑度に差が あります。一般に転造ねじの方が加工精度が良いため,ボルトのねじとナットのねじの間のがたつき 具合も異なります。 075 現地調査の結果アンカーボルトの台直しが,部分的又は全体的に発見された場合の診断基準の適 用はどうでしょうか? A75 台直しされたアンカーボルトは,塑性変形しており引張力に対抗できず,また変形能力及び靭性 が低下しておりますので,原則として台直しされたアンカーボルトには応力を負担させない方がよい でしょう。 なお,柱脚の補強方法が,「耐震改修施工マニュアル」4-3柱脚の補強(P.80∼84)に記載されて おります。 076 付A5.2基礎の転倒モーメントMrの算定で長期地耐力度及び杭の長期支持力の3倍をもって決 定しているが,フーチングの強度であるベース筋やコンケリートのせん断などは考えなくてよいでし ょうか。 A76 Q77 考えなくてもよいものとする。 講師がボックス柱の中にはコンクリートを入れない様にと言われた(FL+1000rFL+500),「既 存鉄骨造建築物の耐震改修施工マニュアルJP14によればボックス柱にコンクリートを圧入し,圧縮 耐力の向上および鉄骨の局部座屈拘束効果をはかるとありますが,S造では普通アンカーボルトをト ルクレンチにてまわすので下部があいている為少しでもコンクリートが流入します。又,腰がH= 1000とした場合スタッドを取り付けて根巻きコンクリートを打設してはだめでしょうか。 A77 1スパンの建物の様に柱に大きな引き抜き力が生じる場合,ボックス柱(コラム材)が中詰めコ ンクリートの上面近傍で破断した事例が阪神大震災の被害例にありました。特に大きな引き抜き力が 生じる場合,急激な耐力・剛性の変化を生じるような補強は好ましくない事があり,詳細検討を行う 必要があります。中詰めコンクリートは,階高の1/3程度の高さまで打設した方がよい(FL十 1000程度必要)。応力状態・変形性能を検討し打設高さを決定する必要がある。 腰の高さをH=1000としてスタッドを取り付けて根巻きコンクリートを打設する場合,他の柱と の耐力・剛性が著しく異ならないよう配慮する必要があります。また,柱脚部においてアンカーボル ト用の開口のため,コンクリートが流入しますが,鉄板等で塞ぐことで対応できます。ベースプレー ト部分で密実なコンクリートを打設するための処置です。 0 78 p80 柱脚の補強,備考,最下段 「既存コンクリート強度が不明の場合,現場施工試験によってあと施エアンカーのせん断耐力の確 認をする。」とありますが,試験方法をご提示願います。 A78 あと施工アンカーの試験方法については,(社)日本建築あと施工アンカー協会の技術部会 方法小委員会が作成した「あと施工アンカー試験方法」(昭和62年3月)に詳しく述べられています 試験 ので,それを参考にして下さい。 9。混合構造の考え方 Q79 同一の層でS造とSRC造とが混在する場合や,柱SRC造―梁S造などの混合構造の場合,どの ように考えればよろしいでしょうか。御教示下さい。(下層部SRC,上層部Sの場合は例題に示され ていますが,より複雑なヶ−スにはどう用いればよいでしょうか?) A79 鉄骨造と異種の構造を組み合わせた構造については, p.25(3)精密診断が必要であると判断される 場合の(b)に記載されている通り,異種構造間の齢吐の違いや応力の伝達などに留意して診断する 必要があります。 本診断法をそのまま適用できません。 080 現在S造体育館の耐震判断業務を行っておりますが, S40年代後半に建った組立アングルによる 立体トラス構造の建築物です。これら建物の診断方法についてお伺いします。まず現在の状況では, ①現況保有状態において全体座屈しているトラスばりが存在している。 ②一次設計のみを行ってみても許容応力度を超え,NGとなる部材がある。 ③ブレース材等で,いわゆる保有耐力接合に適合していない。 ④トラス材間の接合ボルトにゆるみや,カセットプレートが座屈しているもの等がある。 などの理由により,どの様な手法で耐力を算定してみれば良いかそのイメージがつかめません。ヒ ントとなる様なアドバイスがあれば是非お願いします。 A80 基本的にはおたずねの建物は本指針の適用範囲外の建物と考えられます。耐震診断するまでもな い建物です。 081 屋根のみ鉄骨造の体育館のRC部分の靭性指標について 指針では,RC部材の終局耐力式は「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準(1990改訂)」 によるとありますが,靭性指標については記述がありません。靭性指標も同書によって算出しても良 いものか。又,lsの算出の方法(最大3グループに分類し, も使用して良いのでしょうか。 (4)式(5)式にて算出したEoを用いる方法) ちなみに文部省の「屋内運動場等 ご屋根鉄骨 の耐震性能診断基準(平成8年版)」 RC梁 匹=゛兇 ソ] しビ の靭性指標の項には鉄筋コンクリー ト部材の靭性指標として曲げは2.2,Rc片持ち柱/ 二二 せん断は1.0と記述があります。よろ しくお願いします。 A81 区区区 区区]区] 張間方向フレーム RC柱 桁行方向フレーム 「RC診断基準」によってよい。 極脆性柱,せん断柱がない場合は,3グループ式で求めても良い。 標準的な梁間方向の架構の靭性指標はこれで良い。 桁行架構については「RC診断基準」による。 ご鉄骨梁(B鋼単材or立体トラス類) Q82 A82 体育館等で右図のような場合 の鉄骨部材の検討方法を教えて 下さい。 -’ ̄ ̄へ鉄骨柱脚部 例えば,下図のようなモデル化によって検討を行うこととするが,次のような点に注意すること。 1)実態調査結果に基づく梁端接合部の最大耐力 2)柱頭の水平変位による塑性化の順序 3) RC定着部分のせん断耐力 → 鉄骨桂脚に生じるせん断力に対する安全性 4)鉛直荷重時の梁のたわみ 5)アンカーボルトの塑性変形能力に基づく鉄骨柱脚の全塑性耐力 6) RC造壁は,自立壁として基礎の回転耐力を含めて検討する 7)その他,実態調査結果による総合的に検討する ω(鉛直荷重) へ八八乙△△_△・ ↓ → コh (特に無開口壁) 083 屋内運動場等で外壁がRC造の場合 RC壁の評価方法は偏心率Feのみ考慮すればよいで しょうか。又,剛床仮定が成立しない場合は無視して よいでしょうか。 A83 RC壁 剛床が成立しない場合は,表側の壁は無視して良い。剛床が成立する場合は,耐力及び剛性に算 入して良いが屋根ブレースで水平力が伝達されるかチェックすること。 084 既存屋体はアングル組立リベット接合トラス,柱がほとんどで あり,「改修施工マニュアル」にて補強例を提示していただきたい。 理由:ロールH, BOX柱等の補強例は易しく誰でも考えつくがア ングルトラス,柱の補強は設計者として非常に難儀する構 造である。 A84 アングル組立リベット接合のトラス等の補強法を一般的に示すことは不可能です。それは次の理 由によります。 (1)古い建物であり,アングル材等の材質が現在のものに比べて劣っております。特に溶接に不適な ものが多い。したがって,溶接を用いた鋼板を付加する補強はできません。 (2)リベット接合を高カボルト接合に変更することも不可能で,多分,高カボルトを付加して接合部 を補強することもできないでしょう。 (3)これらのトラス等の一部を補強して,強度のバランスを変えると,また新たな弱点を作ることに もなり,全体として補強になりません。 (4)大切なことは無理をして形ばかりの補強をしないことです。名目上の補強をして利用者に間違っ た安心感を与えることは,最も危険な行為です。できないことはできないとはっきり言うべきで す。 (5)どうしても補強するときには,新たな耐震要素となる架構を付加することです。 085 A85 適用範囲で構造が特殊な場合等は精密診断を行うとありますがこの場合の精密診断として考えら れる診断方法を教えていただきたいのですが。(例えば,柱SRC造で梁S造の建物など) 適用範囲を超えるあらゆる構造物に一般的な診断方法を示すことはきわめて困難です。 構造物の特性にあわせて,できるだけ正確に保有水平耐力の算定や,地震応答解析等を行って,現 行の建築基準法等の規定などに照らし合わせて耐震性の判断をすることになると思われます。 10.例題について 0 86 p109の例表1.3各階の地震時外力でPiはどの様にして出たのでしょうか? A86 建築基準法施行令88条では「地震時外力は当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力 として,固定荷重と積載荷重の和に地震層せん断力係数を乗じて計算すること」とされている。 すなわち, Qn=Cn (M)L十既乙) G=Z・拓・ふ・G ここで 仇 :n階の地震層せん断力 G :n階の地震層せん断力係数 W辿:固定荷重 肌む:積載荷重 以上の式により求める。 ここで娠は,nより上階の水平外力Rの合計なので,例えば,3階建ての2階部分では,屋階床の 外力Ryと3階床の外力Rの合計となる。したがって各階の水平外力は,層せん断力の差分となるj 例題の場合は,下図の通り。 ヤ一 Q3= 6.16ぴ=Ry 一 凡 02=9.72び=Ry十R したがって, P3= 9.72-6.16 = 3.56ぴ ej=12.00び=Q2十R したがって, P2= 12.00-9.72 = 2.28ぴ 0 87 119ページの例図4.6について 1階柱の靭性指標が柱頭,柱脚とも1.0となっていますが,柱脚は埋込み柱脚ですので, 3.3であ ると思いますが。 A87 P.119の「例図4.6各部材および接合部の靭性指標と階別の靭性指標F釧こついて」の質問と思われ る。 ご指摘の通り,柱脚のFiii 3.3が正しい。 Q 88 p120構造耐震指標lsの文章は地盤種別第2種とあるが,説明用のOHPでは第1種となっていた。 どちらが正しいのでしょうか? A88 089 A89 第2種地盤が正しい。 適用例1において,ケース2では長期応力を考慮しているのに,ケース1では考慮しないのはな ぜでしょうか。安全のためでしょうか。(p114,115) 適用例1では,本指針に従った診断計算の流れを理解することを目的に,可能な限り基本的な事 項についてのみ示すように構成してある。 ケース1は,柱・梁接合部が保有耐力接合であることを確認した上で,塑性解析に基づく建物の保 有耐力を計算する手法を示している。 長期応力が影響するのは,梁,柱および柱脚の全塑性耐力である。 ケース1では,柱はP.llOに示すように,鉛直荷重時柱軸力として考慮してあり,また,柱脚につ いては固定度の検定から柱耐力と同値を使う結果となっている。もし,指針の㈲∼図式を用いるので あれば,柱軸力として同様に長期応力を考慮する必要があるのは,言うまでもない。 梁については,長期応力の影響により塑性ヒンジの発生位置が端部から中央部へ移動することがあ るので, P.129例表-2.4 塑性ヒンジ位置と梁端モーメントを参考にするのが良い。 例題では,梁の等分布荷重が小さく,またスパンも5mであるため,ヒンジ位置の移動がないこと を確認してあf), Mp = l.lF・冶)を採用している。 090 例題「適用例1,例図3-2,ケース2」では,脆性破壊が起こる箇所にヒンジが生じた時点で弾塑 性解析をストップさせています。この場合,他の階では未降伏部材が多く残ったままで保有水平耐力 を評価することになり,その層の耐力が過小評価となってしまいます。原則的にはメカニズム状態を 求めて,保有水平耐力を求めるべきではないでしょうか? A90 本指針適用例1では,同一の建物について,接合部の条件だけを変えて3ヶ−スに区別し,診断 計算の方法を示している。 ケース1では,柱・梁接合部が保有耐力接合であること,すなわち接合部の破断が部材の塑性化に 先行しないばかりでなく,建物の崩壊メカニズムが形成されるまでその強度を維持しつづけることが 可能であるという条件が成立することを確認した上で,塑性解析に基づく保有耐力計算を行なってい る。 ケース2とケース3では,梁または柱の仕口部分が非保有耐力接合であるために,接合部での曲げ 応力増大に追従できず,部材の塑性化以前に破断することが考えられる。したがって,塑性解析を適 用するための「強度維持」という前提が成り立たなくなる。適用例では,この非保有耐力接合となる 仕口を「塑性ヒンジ位置」の代わりに「危険断面位置」と呼び,水平外力を漸増させたときに建物の いずれかの接合部応力が最大強度に達する時点での層せん断力を限界耐力,すなわち保有水平耐力と している。 091 「耐震改修指針・同解説(1996)」のP167の,第2番目の危険断面位置の図,水平力5.57 t (4.31 t)第4番目の危険断面位置の図,水平力14.56 t (2.21 t)は,同方向水平力を1方向のみ のゆれの解析を行っているが,両方向ゆれの検討を行わなければならないのでは無いでしょうか? 又,福井の場合は,雪多積地域に指定されていて,鉛直荷重時応力と一方向水平力を組み合わせま すとますます危険側になると考えられます。積雪時での考え方を示してください。 A91 本指針の適用例3は,鉄骨造体育館の診断の方法を示しているが,例図を見てもお分かりのよう に,張間方向および桁行方向とも荷重と部材配置は全く対称であり,この例に限っては,一方向加力 時の結果のみ求めれば良い。 しかしながら,雪荷重など鉛直荷重が偏在する場合,RC造の下屋部分が付設するなど,応力的に 非対称となると考えられる場合には,2方向加力時の結果を求める必要がある。 一般的に多雪地域では,鉛直荷重の影響が著しくなるので,特に梁の横座屈耐力にその影響を考慮 する必要がある。 11.その他 092 鋼材,鉄筋の基準強度をJISに定めるものついて1.1倍とあるが診断を行うような既存建物では, JIS規格品が使用されているかの判断が出来ないと思われますがこの場合どうしたらよいでしょう か。 A92 対象建物の図面または構造計算書が保存されており,そこにJIS規格品を指定していれば, 格品を使用していると考えてよく, 強度をそのまま用いてください。 JIS規 1.1倍して良いでしょう。 JIS規格品と認定出来ない場合は,基準 Q93 例題では一次固有周期を算出するのにストドラ法,レイリ一法を用いられていますが一般的に使 用しているT=0.03hでもよろしいですか。 094 建物の固有周期の算定にあたって,現行基準法で用いられているT= 0.03hを用いていないのは なぜでしょうか?用いてはいけないのでしょうか? 固有周期は耐震性能指標値を決定する上で重要な要素になります。 A93・A94 一つの建物でも, (1)平面的にX,Y方向で剛性が著しく異なる場合,例えば,①純ラーメン構造である場合と,②筋 違付ラーメン構造である場合,あるいは, (2)立体的に層の剛性の変化が著しい場合 (3)不整形な架構の場合 には構造の実態にあった固有周期を高さ式によって求めるこどはできません。 適用例では高さ式に代わるものとして,ストドラ法とレイリ一法を紹介しました。勿論,ヤコビ法な ど通常の固有値解析によって周期を求めるのは結構です。 095 終局時の層間変形角については特に規定はないのでしょうか。(検討しなくてよいでしょうか) A95 終局時の層間変形については特に規定はない。これは,建物が所定の耐力と変形能力を保持して いれば倒壊に至るほどの変形は生じないであろうという見解に基づいている。 Q96 保有水平耐力算定に増分解析を用いる場合,現在市販の解析コードではパネルゾーンの耐力は考 慮できません。この場合,どのようにして増分解析を行ったらよいでしょうか? A96 増分法による保有水平耐力の算定は診断基準になじまない点が多い。しかしながら,増分法によ り水平耐力を算定する場合,等価な梁または桂のモーメントに置換し,解析することが考えられる。 F値については別途検討を行う必要がある。 097 例示されている補強方法は自由に使用可能でしょうか。 (特許等の使用制限がないでしょうか。) A97 補強例に例示されたものは使用しても良いと考えられる。
© Copyright 2024 ExpyDoc