その2 - 内山アドバンス

1031
日本建築学会大会学術講演梗概集
(九州) 2007年 8 月
単位水量の違いが高強度コンクリートの諸性質に及ぼす影響
(その2 フレッシュコンクリートの性状に関する検討)
高強度コンクリート
加圧ブリーディング
単位水量
脱水率
ふるい通過率
凝結時間
正会員 ○女屋 英明*1
同
斉藤 丈士*3
同
春山 信人*5
1.はじめに
ここでは,前報(その1)に引き続き,単位水量の違い
が高 強度コンクリートのフレッシュ性状に及ぼす影響を
明ら かにするために,フレッシュコンクリートのふるい
通 過 率 , 加 圧 ブ リ ー デ ィ ン グ 試 験 1) に よ る 脱 水 率 お よ び
凝結時間について検討した結果を述べる。
3.結果および考察
3.1 ふるい通過率
単位水量と震とう時間1分間におけるふるい通過率の
関係 を図1に示す。ここで取り上げているふるい通過率
は , 調 合 か ら 求 め た コ ン ク リ ー ト 中 に 占 め る 粒 径 5mm以
下 分 の 質 量 に 対 す る 震 と う に よ り 5mmふ る い を 通 過 し た
モル タル分の質量の割合を百分率で示したものである。
ふる い通過率は,いずれの水セメント比においても単位
水量 が多いほど大きくなる傾向にあり,この傾きは,水
セメ ント比が大きいほど大きくなる傾向にあった。これ
は, 単位水量が多いほどモルタル相の中に占めるセメン
トペ ーストの量が多く,モルタル分の平均粒径が小さく
なり ,ふるいを通過しやすくなるためと考えられる。ま
た , 単 位 水 量 170お よ び 175kg/m 3 で は , 水 セ メ ン ト 比 が
脱水率 (%)
ふるい通過率 (%)
45
ふるい通過率=(ふるい通過質量/調合から求めた
試料中の粒径5mm以下の粒子の質量)
80
60
震とう時間:1分間
40
170
175
180
単位水量 (kg/m3)
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
185
中田 善久*2
大塚 秀三*4
藤井 和俊*6
大きいほどふるい通過率は小さかった。これは,スラン
プ(スランプフロー)の違いによるモルタル分の流動性の
違いが影響していると思われる。なお,同一の単位水量
における水セメント比ごとのふるい通過率の差は,単位
水 量 が 大 き い ほ ど 小 さ く な る 傾 向 に あ り , 単 位 水 量 180
お よ び 185kg/m 3 におい て水セ メン ト比35% と25%はほぼ
同 等 であ り,単 位水量 185kg/m 3 にお いて は,水 セメン ト
比にかかわらずいずれの調合も80%程度でほぼ同等であ
った。これより,本試験における震とう時間1分間のふ
る い 通 過 率 に よ っ て , 単 位 水 量 が 170~ 180kg/m 3 の 範 囲
におけるモルタル分のワーカビリティーを評価できる可
能 性 があ るが, 単位水 量が180kg/m 3 を超 える場 合には 震
とう時間やふるい目を調整するなどの工夫が必要と思わ
れる。
3.2 加圧ブリーディング
加圧ブリーディング試験による単位水量と脱水率の関
係およびコンクリート中のセメントペースト量と最終脱
水率の関係を図2に,水セメント比ごとの加圧時間と累
加脱水量の関係を図3に示す。ここで取り上げている脱
水率は,コンクリート試料中に含まれる水量に対する加
圧 ブ リ ー デ ィ ン グ 試 験 (JSCE-502:1999)を 行 っ た と き に
抽出された水量の割合を百分率で表したものであり,加
圧から60秒後における脱水率を60秒脱水率,加圧終了時
の脱水率を最終脱水率と称した。
(1)60秒脱水率
水セメント比45および35%における60秒脱水率は,単
位水量が多いほど増大する傾向にあった。これは,試料
中に占めるセメントペースト量が単位水量ごとに異なる
ためと考えられる。また,水セメント比が大きいほど60
2.実験概要
前報(その1)において対象としたコンクリートについ
て, ふるい通過率,加圧ブリーディングおよび凝結時間
の各 試験を行い,単位水量の違いがフレッシュコンクリ
ー ト 性 状 に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ た 。 試 験 方 法 は , 前 報 (そ
の 1 )に お い て 示 し た と お り で あ る 。 な お , 加 圧 ブ リ ー
デ ィ ン グ 試 験 に お い て は 60秒 脱 水 率 お よ び 最 終 脱 水 率
を,凝結試験においては始発時間を測定した。
100
同
同
同
60秒脱水率
30
15
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
最終脱水率
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
セメントペースト量と
最終脱水率の関係
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
0
750
1000
170 175 180 185 170 175 180 185 500
単位水量 (kg/m3)
セメントペースト量 (kg/m3)
単位水量 (kg/m3)
図1 単位水量とふるい通過率の関係
図2 単位水量およびセメントペースト量と脱水率の関係
Influence of Water Content Per Unit Volume Content on Various Properties of High-Strength Concrete
(Part2. Examination about Properties of Fresh Concrete)
ONAYA Hideaki,NAKATA Yoshihisa,SAITO Takeshi,
OTSUKA Syuzo,HARUYAMA Nobuhito and FUJII Kazutoshi
―61―
4.まとめ
前報(その1)に引き続き,単位水量を変化させた高性
能AE減水剤コンクリートのフレッシュ性状に関する検討
を行い,次の知見を得た。
*1 (株)内山アドバンス 中央技術研究所 課長
*2 日本大学 理工学部 建築学科 准教授・博士(工学)
*3
*4
*5
*6
(株)内山アドバンス 中央技術研究所 研究員・博士(工学)
ものつくり大学 技能工芸学部 建設技能工芸学科 助教
フジミ工研(株)滑川工場 コンクリート品質管理担当 課長
(株)ピーエス三菱 技術研究所 副所長・博士(工学)
150
加圧による累加脱水量 (ml)
水セメント比:45%
水セメント比:35%
W=170
W=175
W=180
W=185
W=170
W=175
W=180
W=185
50
0
0
水セメント比:25%
W=170
W=175
W=180
W=185
100
5
10
加圧時間 (分)
15 0
5
10
加圧時間 (分)
15 0
5
10
加圧時間 (分)
15
図3 加圧時間と累加脱水量の関係
7:00
単位水量と
始発時間の関係
水セメント比45%における
高性能AE減水剤使用量と
始発時間の関係
6:00
始発時間 (H:M)
秒脱 水率は大きく,この場合の差は顕著であった。これ
は, 水セメント比の異なる調合ではセメントペーストの
粘性 が相当に異なるためと考えられる。なお,水セメン
ト比25%における60秒脱水率は著しく小さく,単位水量
の違 いにかかわらず,いずれもほとんど脱水しない結果
であった。
(2)最終脱水率
最終脱水率は,単位水量が多いほど,また,水セメン
ト比 が大きいほど増大する傾向にあった。水セメント比
の違 いにより最終脱水率には顕著な差があり,水セメン
ト比25%においては,単位水量が多いと最終脱水率は著
しく増加する傾向にあったが,最大でも水セメント比45
%の 半量程度と少なかった。これは,前述のようにセメ
ント ペーストの粘性が異なるためと考えられる。なお,
水セ メント比が小さいほど単位水量の増大に伴うセメン
トペ ーストの増大量が大きいため,低水セメント比にお
ける 最終脱水率にはこのセメントペースト量の違いが影
響している可能性がある。
(3)累加脱水量
加圧時間に対する脱水量の傾きは,水セメント比が小
さい ほど緩やかであり,時間当たりの脱水量は少なかっ
た。 また,脱水の継続時間は水セメント比が小さいほど
長く なる傾向を示した。これは,前述したように,水セ
メン ト比が小さいほど粘性が高くなるためセメントペー
スト の保水力が高まり,加圧による脱水はしにくくなる
が, コンクリート中のセメントペースト量が多いために
脱水 が継続するものと考えられる。これに対し,水セメ
ント 比が大きい場合には粘性が低いため加圧の初期に急
激に 脱水し試料中の水の割合が少なくなるために脱水の
継続時間が短くなると思われる。
3.3 凝結時間
単位水量と始発時間の関係および水セメント比45%に
おける高性能AE減水剤使用量と始発時間の関係を図4に
示す。水セメント比が45%の場合,始発時間は,単位水
量が多いほど早くなる傾向を示した。これは,単位水量
が多くなると高性能AE減水剤のセメントに対する添加率
が減少する傾向にあるため,この使用量が少なくなるこ
とが影響していると考えられる。また,水セメント比が
35および25%の場合,45%の場合とは逆に単位水量が多
いほど始発時間は長くなった。これより,単位水量が凝
結時間に与える影響は水セメント比によって異なり,低
水セメント比の場合には,高性能AE減水剤の使用量より
も単位水量の違いの影響が大きくなる可能性がある。
5:00
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
4:00
3:00
170
175
180
単位水量 (kg/m3)
185
2.0
2.5
3.0
3.5
高性能AE減水剤使用量 (kg/m3)
図4 始発時間
(1)ふる い通 過率は ,単位 水量が 170~180kg/m 3 の範囲に
おいてモルタル分のワーカビリティーを評価できる
可能性がある。
(2)加 圧 ブ リ ー デ ィ ン グ に よ る 脱 水 量 は , 水 セ メ ン ト 比
により単位時間当たりの速さが異なり,単位水量に
よって最終脱水率が異なる。
(3)凝 結 の 始 発 時 間 は , 水 セ メ ン ト 比 に よ り 単 位 水 量 の
違いによる変化の傾向が異なる。
【謝辞】
本実験を行うにあたり,(株)内山アドバンス中央技術
研究所の白鳥秀幸所長より御指導を頂きました。また,
ものつくり大学卒業研究生の酒井祥平君,草間晃君なら
び に 山 宗 化 学 (株 )の 榎 本 哲 也 氏 よ り ご 協 力 を 頂 き ま し
た。ここに付記し,感謝の意を表します。
【参考文献】
1)加圧ブリーディング試験方法(JSCE-F 502),コンクリ
ー ト 標 準 示 方 書 【 規 格 編 】 , pp.180~ 182, (社 )土 木
学会,2005.3
Chief,Technical Research Institute of Uchiyama Advance Co.ltd.
Assoc.Prof., Dept.of Architecture, College of Science & Technology,
Nihon Univ., Dr.Eng.
Research Engineer, Uchiyama Advance Co.ltd., Dr.Eng.
Assistant, Dept.of Building Technologists,Institute of Technologists
Chief, Charge of QC of Concrete Namegawa Factory FUJIMI KOKEN Co.Ltd.
Subdirector,Technical Research Institute of P.S.Mitsubishi
Construction Co.Ltd., Dr.Eng.
―62―