その3 - 内山アドバンス

1032
日本建築学会大会学術講演梗概集
(九州) 2007年 8 月
単位水量の違いが高強度コンクリートの諸性質に及ぼす影響
(その3 硬化コンクリートの性状に関する検討)
単位水量
静弾性係数
水セメント比
長さ変化率
正会員 ○春山 信人*1
同
斉藤 丈士*3
同
大塚 秀三*5
1.はじめに
ここでは、前報(その1,その2)に引き続き、単位水
量の違いが高強度コンクリートの硬化性状に及ぼす影響
を明らかにするために、圧縮強度,静弾性係数および長
さ変化率について検討した結果を述べる。
2.実験概要
前報(その1,その2)において対象としたコンクリー
ト に つ い て 、 材 齢 2, 7, 28お よ び 91日 に お け る 圧 縮 強
度,材齢28日における静弾性係数ならびに乾燥材齢21週
までの長さ変化の各試験を行い、単位水量の違いが硬化
コンクリート性状に及ぼす影響を調べた。試験項目およ
び供試体の養生方法と試験材齢を表1に示す。
試験方法
供試体と
その養生方法
試験材齢
圧縮強度
JIS A 1108
φ10×20cm
標準養生
2,7,28,91日
静弾性係数
JIS A 1149
φ10×20cm
標準養生
28日
長さ変化率 JIS A 1129-2
10×10×40cm 1,2,3,4,8,13,17,21,26週
標準7日後乾燥
(現在21週まで)
120
材齢 7日
材齢 2日
100
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
80
60
40
20
120
圧縮強度 (N/mm2)
材齢91日
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
材齢28日
100
80
60
W/C=45%
W/C=35%
W/C=25%
40
20
170
175
180
単位水量 (kg/m3)
185
170
175
180
単位水量 (kg/m3)
185
図1 単位水量と圧縮強度の関係
50
120
100
80
60
40
W=170
W=175
W=180
W=185
20
7
28
材齢 (日)
91
W=170
W=175
W=180
W=185
W=170
W=175
W=180
W=185
7
28
材齢 (日)
材齢の対数と強度の関係式
F=a ・ log10(t) + b ここに,F:圧縮強度
水セメント比:25%
水セメント比:35%
91
7
28
材齢 (日)
図2 材齢と圧縮強度の関係
91
材齢と強度の関係式における傾き
水セメント比:45%
圧縮強度 (N/mm2)
中田 善久*2
女屋 英明*4
藤井 和俊*6
試験項目
3.結果および考察
3.1 圧縮強度
単位水量と圧縮強度の関係を図1に,材齢と圧縮強度
の関係を図2に,材齢と圧縮強度の関係式における傾き
を図3に示す。
水セメント比が25%の場合、材齢28および91日におい
て単位水量が多いほど圧縮強度が低下する傾向を示した
ほかは、同一の水セメント比において単位水量が変化し
ても、全体に圧縮強度には明確な傾向は見られなかっ
た。また、単位水量および水セメント比の違いにかかわ
らず、圧縮強度は材齢の進行に伴い増進する傾向にあっ
た。材齢と圧縮強度の関係において、単位水量および水
セメント比の違いにかかわらず材齢の対数と圧縮強度の
関 係式 に おい て は、 圧 縮強 度 に対 す る材 齢 の寄 与 率 (R 2)
は0.95以上であり、いずれの調合においても高い相関を
0
同
同
同
表1 試験項目および供試体の養生方法および試験材齢
圧縮強度 (N/mm2)
高強度コンクリート
圧縮強度
40
W=170
W=175
W=180
W=185
30
t :材齢
a :傾き
b :切片
20
10
0
45
35
水セメント比 (%)
25
図3 材齢と圧縮強度の関係式における傾き
IInfluence of Water Content Per Unit Volume Content on Various Properties of High-Strength Concrete
(Part3. Examination about Properties of Hardened Concrete)
HARUYAMA Nobuhito,NAKATA Yoshihisa,SAITO Takeshi,
ONAYA Hideaki,OTSUKA Syuzo and FUJII Kazutoshi
―63―
50
8.0
W=170
W=175
W=180
W=185
構造計算規準式
W/C=45%
材齢28日
長さ変化率 (×10-4)
静弾性係数 (kN/mm2)
60
2)
40
30
40
60
80
100
圧縮強度 (N/mm2)
120
W=170
W=175
W=180
W=185
4.0
予測式2)による
W170~185kg/m3
の範囲
0.0
予測式2)による
W170~185kg/m3
の範囲
W=170
W=175
W=180
W=185
2.0
0
10
20
乾燥期間 (週)
図4 圧縮強度と静弾性係数の関係
に示す。本検討の結果からは、単位水量の違いが静弾性
係数に及ぼす影響はほとんど見られなかった。また、圧
縮 強 度 と 静 弾 性 係 数 の 関 係 は 、 構 造 計 算 規 準 1) に 示 さ れ
る式と同様の傾向を示していた。したがって、本研究の
試験水準の範囲において、静弾性係数に及ぼす影響は、
単位水量および水セメント比の違いやワーカビリティに
より変化する単位粗骨材かさ容積などの調合要因よりも
圧縮強度によるものが大きいと考えられる。
3.3 長さ変化率
水セメント比ごとの長さ変化率を図5に示す。図中に
は、鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計
・施 工 指 針 (案 )・同 解 説 に 示 さ れ る 収 縮 ひ ず み の 予 測 式 2)
に 単 位 水 量 が 170~ 185kg/m 3 の 場 合 の 本 検 討 に お け る 調
合条件を適用して求められた予測値を付記している。ま
た、ここでは、乾燥材齢21週までの結果を示している。
水セメント比ごとの長さ変化率は,いずれの場合にも
単 位 水量 が 185kg/m 3 のと き に最 も 大き か った が 、単 位 水
量 が 180kg/m 3以 下 の 場合 に は単 位 水量 と の関 係 に明 確 な
傾向はなく、また、その差はいずれの場合にも小さかっ
た。これより、本研究の試験水準の範囲において、単位
水量の違いが長さ変化率に及ぼす影響は小さいと考えら
*1 フジミ工研(株)滑川工場 コンクリート品質管理担当 課長
*2 日本大学 理工学部 建築学科 准教授・博士(工学)
(株)内山アドバンス 中央技術研究所 研究員・博士(工学)
(株)内山アドバンス 中央技術研究所 課長
ものつくり大学 技能工芸学部 建設技能工芸学科 助教
(株)ピーエス三菱 技術研究所 副所長・博士(工学)
予測式2)による
W170~185kg/m3
の範囲
W=170
W=175
W=180
W=185
30
0
10
20
乾燥期間 (週)
30
0
10
20
乾燥期間 (週)
30
図5 乾燥材齢と長さ変化率の関係
示していた。ただし、水セメント比が25%の場合、単位
水量が多くなるほど関係式における傾きは小さくなる傾
向、即ち、材齢の進行に伴う強度発現が緩やかになる傾
向を示した。これらの結果より、水セメント比が小さく
単位水量が多い場合の圧縮強度は、初期においては単位
水量が少ない場合と同等であるが、材齢の経過に伴う増
進が小さいため、比較的長期では単位水量が少ない場合
よりも小さくなる可能性があると思われる。
3.2 静弾性係数
材齢28日における圧縮強度と静弾性係数の関係を図4
*3
*4
*5
*6
W/C=25%
6.0
日本建築学会 構造計算規準式
E=3.35×k1×k2×(γ/2.4)2×(Fc/60)1/3
20
20
W/C=35%
れる。なお、指針に示される式により計算された予測値
と本検討の結果を比較すると、本検討における長さ変化
率は、水セメント比が45および35%の場合には予測値よ
りも大きく、水セメント比が25%の場合には予測値とほ
ぼ同等であった。
4.まとめ
前 報(その1,その2)に引き続き、単位水量を変化さ
せた高強度コンクリートについて硬化コンクリート性状
に関する検討を行い、次の知見を得た。
(1)水 セ メ ン ト 比 25% の 場 合 、 単 位 水 量 が 増 え る と 材 齢
に伴う圧縮強度の増進は小さくなる傾向にあった。
(2)静 弾 性 係 数 は 、 単 位 水 量 よ り も 圧 縮 強 度 か ら 受 け る
影響が大きかった。
(3)単 位 水 量 が 185kg/m 3 の 場 合 、 長 さ 変 化 率 は 水 セ メ ン
ト 比 に かか わ らず 単 位水 量 が170~ 180kg/m 3の 場 合よ
り も 大 き か っ た が 、 単 位 水 量 が 180kg/m 3 以 下 で は 単
位水量が長さ変化率に及ぼす影響は小さかった。
今 後は、セメントの種類を変えて単位水量の影響に関
する検討を行っていく予定である。
【謝辞】
本 実験を行うにあたり,(株)内山アドバンス中央技術
研究所の白鳥秀幸所長より御指導を頂きました。また,
ものつくり大学卒業研究生の酒井祥平君,草間晃君なら
び に 山 宗 化 学 (株 )の 榎 本 哲 也 氏 よ り ご 協 力 を 頂 き ま し
た。ここに付記し,感謝の意を表します。
【参考文献】
1)建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート
工事,pp.165~170,(社)日本建築学会,2003.2
2)鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 造 建 築 物 の 収 縮 ひ び 割 れ 制 御 設 計 ・
施 工 指 針 (案 )・同 解 説 , pp.53~ 60, (社 )日 本 建 築 学
会,2006.2
Chief, Charge of QC of Concrete Namegawa Factory FUJIMI KOKEN Co.Ltd.
Assoc.Prof., Dept.of Architecture, College of Science & Technology,
Nihon Univ., Dr.Eng.
Research Engineer, Uchiyama Advance Co.ltd., Dr.Eng.
Chief,Technical Research Institute of Uchiyama Advance Co.ltd.
Assistant, Dept.of Building Technologists,Institute of Technologists
Subdirector,Technical Research Institute of P.S.Mitsubishi
Construction Co.Ltd., Dr.Eng.
―64―