マリモカーボン:繊維状ナノ炭素で できた球状炭素材料の合成 東洋大学 理工学部 応用化学科 教授 蒲生西谷 美香 (Mikka Nishitani-Gamo) 1 従来技術とその問題点 炭素材料は、古くて新しい材料であり、様々な場 面で様々に活用されている。 新しい炭素材料=繊維状ナノ炭素材料は、構 造の特異性から様々な物性の発現が期待され、 現在も各方面で研究が行われている。 しかし、ナノレベルの微細構造を用途に合わせ て任意に制御する合成技術は、確立されている とは言い難い。 一般にナノレベル材料は、飛散しやすく取り扱 いが容易ではない。 2 新技術の特徴・従来技術との比較 • マリモカーボンとは、サブミクロンオーダーの ダイヤモンド微粒子が核となり、その表面にナ ノメートルオーダーのカーボンナノフィラメント (CNFs)が成長して球状をなすsp3-sp2炭素複 合材料である。本新技術は、CNFの直径、こ のCNFを形成するグラフェンの大きさや積層 状態といった微細構造を制御可能な合成技術 である。 3 新技術の特徴・従来技術との比較 • 本技術によれば、繊維状ナノ炭素をマリモ状 で提供することが可能であり、そのことによっ て、繊維状ナノ炭素の特徴を保ったまま、取り 扱いの容易さを付与した材料を提供すること が可能である。さらに、用途に合わせて、それ ら繊維状ナノ炭素を構成するグラフェンの大き さ、積層状態を制御することが可能である。 4 想定される用途 • マリモカーボンを構成するCNFの表面に存在 するグラフェンエッジを生かし、燃料電池の触 媒電極担体として適用することで、触媒活性 制御及び白金量低減の可能性を見いだして いる。 • 上記以外に、CNFの繊維状構造を生かした 排水促進効果が得られることも期待される。 • 構造制御性に優れた合成技術の達成に着目 すると、用途に合わせた材料設計により、環 境分野に展開することも可能と思われる。 5 実用化に向けた課題 • 現在、マリモカーボンを構成するCNFsの 一本一本に関して、その直径やグラフェン の積層状態を合成条件によりコントロール することに目処は立っている。しかし、マリ モカーボン一粒一粒の粒径及びその分布 の制御には、まだ課題が残されている。今 後、マリモカーボンが実用材料となっていく ためには、化学工学的見地に立った合成 法の改善が必要である。 6 企業への期待 • 未解決のマリモカーボン粒子径制御について は、流動層による気相合成法について共同研 究先と実験室レベルの合成技術を検討中で ある。 • 量産につながるレベルの上記技術を持つ、企 業との共同研究を希望。 • 本材料には、従来のナノ炭素材料には無い、 取り扱いの容易さや耐久性、各種性能向上の 可能性が期待できることは付記したい。 7 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :マリモカーボンおよびその 製造方法 • 出願番号 :特願2011-186146 :学校法人東洋大学 ほか • 出願人 • 発明者 :蒲生美香,安藤寿浩,蒲生 秀典, 鵜野美佳 8 産学連携の経歴 • 2007年-2008年 凸版印刷株式会社と委託研究実施 • 2008年-2009年 凸版印刷株式会社と共同研究実施 9 お問い合わせ先 東洋大学 知的財産・産学連携推進センター(研究協力課) TEL 03-3945 - 7564 FAX 03-3945 - 7906 e-mail ml-chizai@toyo.jp 10
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