秋田大学次世代がん治療推進専門家養成プラン がんプロニュース ◆ 創刊号 ◆ 平成25年 9月20日 発 行 創刊号 【発行】 秋田大学次世代がん治療推進専門家養成プラン 事務局 HP http://www.med.akita-u.ac.jp/~ganpro24/ 「発刊にあたり」 柴田浩行 伊藤亜樹 中村順子 がんプロでは活動をお知らせし、皆さんと「がんプロ」についての情報を共有し、相互の交流を深めていきたい と考えております。皆様の更なるご協力を賜りたくお願い申し上げます。 秋田大学次世代がん治療推進専門家養成プラン 秋田大学大学院医学系研究科医学専攻臨床腫瘍学講座 コーディネーター/教授 柴田 浩行 「ネクストがんプロ」が2012年4月からスタートしています。私は秋田大学のコー ディネーターです。 「がんプロ」って何?これは国(文部科学省)が日本中、どこでも標準的な(都 会と同じレベルの)がん治療を受けられるように、がんをちゃんと診察できる医療 者を育成する計画です。医者なら、誰でもがんの治療できるんじゃないの?と思う かもしれません。実際は違います。普通の医者はがんを治療しません。専門家に紹介します。しかし、日 本中でがんの専門家(専門的なトレーニングを受けた人)が少ないことに国も気がついたのです。国民も 気がつきました。 それで国は6年前から、この「がんプロ」を始めました。医者を育てるなら大学医学部だということで 文部科学省が担当の役所になりました。最初は5年間の計画です。でも、5年間で良いでしょうか? 足りません。だから、もう5年間やることになりました。それで十分か?私は国民の最も多くが、がんで亡 くなっている以上、がんが撲滅されるまで、ずっとやるべきだと思っています。 とにかく、第2弾として始まりました。だから、「ネクストがんプロ」って呼んでいます。秋田県は「が ん死亡率、第1位!」って大きな声で言っています。だから検診を受けようというキャンペーンです。で も、がんになったら駄目なのでしょうか?「ちゃんと検診受けてなかった?」って言われるのでしょう か。がんになったら敗者ですか?そうじゃありません。 がんは長生きするとなりやすい高齢者の病気です。仕方ない部分があります。がんになったら治療でき ないとさじを投げられてしまいますか?違います。がんになっても色々な治療を受ければ、まだまだ頑張 れます。検診ではがんを治療しません。治療できる医者が必要です。治療する医者って誰?腫瘍外科医、 放射線腫瘍医、腫瘍内科医、緩和ケア医です。早期がんなら腫瘍外科医が診てくれます。進行がんなら放 射線腫瘍医や腫瘍内科医が診ます。末期がんでも見放されません。緩和ケア医が手厚く診ます。でも、ま だまだ、日本には少ない専門医です。 それじゃ、秋田県には彼らはいるの?ひょっとして居ない?居ますが、まだ数が少ないのです。だから 養成しなくてはいけないのです。皆が安心できるのは、がんになってもちゃんと治療できる医者が身近に 居てくれることです。そして、必要な施設が整っていることです。 「何で秋田県にはがんセンターが無いの?」センターができても中に入る医者が必要です。人ががんに なるのは宿命的な部分もあります。誰も悪い訳じゃないんです。気をつけていても絶対にがんにならない 保証はないんです。私たちにできることは、一人でも多くのがん専門医を養成することです。 でも、秋田県は医師が偏在しています。そんな地域の大事な医師を勉強に行っておいでと送り出すこと はできません。だから、働きながら学ぶシステムを作りました。最近、聞かなくなった勤労学生です。学 徒動員です。凄まじいなあ。でも、やらなきゃいけないのです。 私は秋田大学のネクストがんプロへの思いをAkita Prefecture Operation for Local Lodestar of Oncology(APOLLO)、アポロプロジェクトと命名しました。ジョンFケネディーのアポロ計画に際しての演説 に、「我々が10年以内に月に行こうと決めたのは、それが困難だからである。その挑戦は先延ばしするこ とを望まない。そして、それこそが、我々が、そして国民が勝ち取ろうとするものである。」「月に行 く」を「秋田のがん医療」に置き換えれば、これはまさしく我々の挑戦そのものです。どうぞ皆さんのご 声援をよろしくお願いいたします。 【発行】 秋田大学次世代がん治療推進専門家養成プラン 事務局 秋田大学大学院医学系研究科地域がん包括医療学講座・附属病院乳腺内分泌外科 助教 伊藤 亜樹 皆さんは「ピンクリボン」とか「ピンクリボンキャンペーン」という言葉を聞い たことがありますか?ピンクリボンとは乳がんについての正しい知識を広め、早期 発見を推進する運動のシンボルマークです。アメリカで家族を乳がんで亡くした女 性の草の根的な運動から始まり、現在では全世界にその運動が広まっています。乳 がんにかかる人は40代〜50代にかけて急増します。ピークは40代後半です。ただし 高齢だから大丈夫と、いうことはありません。また、家族に乳がんがいないから、 出産・授乳経験があるから大丈夫とも言えません。乳がんにならないと言える人は 一人もいないのです。残念ながら、現在乳がんの確立された予防法はありません。 早期に発見することが大切になります。早期に発見できてきちんとした治療を受ければ約90%の人が治癒 します。ただし、早期に発見できても100%の人で病気が治るという訳ではありません。そして進行した状 態で見つかったからといってすぐに悲観することもありません。乳がんの場合は薬剤が有効な場合が多く あります。 ただ、早期に発見すれば助かる命がたくさんあるのも事実です。私たちは「もう少し早く受診していれ ば・・・」という患者さんもたくさん経験しています。秋田県でも年1回毎年秋にピンクリボンキャン ペーンを開催して、乳がんの正しい知識を学び、自分の身体に関心を持っていただく機会としています。 私たちの願いは「乳がんで悲しむ人を一人でも少なくしたい」、これだけです。他人事と思わずにぜひ会 場に足を運んで欲しいと思います。 秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻地域・老年看護学講座 教授 中村 順子 医学部保健学科に本年4月に着任しました中村順子(よりこ)と申します。 私は故郷の秋田に2007年に戻ってくるまでは、東京で在宅療養支援に関わる仕事 (訪問看護とケアマネージャー)をしていました。長い経験の中ではがんの方の療 養支援も行って来ましたが、専門としていたわけではありません。ですので、がん プロの委員として適任かどうかやや不安です。けれど、がんであってもそうでなく ても、在宅という“自分が主役の場”で療養者さんが望む人生=望む生活を支える にはどうしたらよいか、私たち医療者の支援の立ち位置や関わり方、療養者さんの ニーズをどのように捉えるのか、などについてはたくさんのことを考え、様々な方に学びながら(もちろ ん療養者さんと家族からも)実践して来ました。それをもとに、がんの療養者の方々の生活を医療者すな わち専門職である看護師として支えるということについて秋田の皆様から更に学び、発信して行きたいと 考えています。看護は対象の生活を整えるのがその役割であり、対象の生活の質の向上を目指します。私 たち看護師の専門性はすべて療養者の皆様のニーズに応える形で 使われなければなりません。ケアする人・される人、という固定 化した関係性の理解は、時に看護の専門性を間違った形で使って しまう危険性を孕みます。「対象の方は自分の持っている本来の 力=自分力が、がんという病気によって少し弱まっている、本来 の自分を取り戻してもらい自分力を高める支援・自分らしく生活 する支援とはどうあるべきか」を看護は真剣に追及していく、今 それが求められています。
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