「経営の腑」第119号(通算434号)がPDF形式でご覧になれます

No.121 (通算436号)
平成27年1月30日(隔週発行)
ザ・オフィス せき
関 洋一 (携帯 090-2791-0005)
FAX:0191-88-0066
ご挨拶:経営者の皆様の多くが、腑に落ちないと思われるような事柄を、明快に論じることを目指します。
ご迷惑な向きは、ご面倒ながら当方までご一報下されば、次回からはメール致しません。
この通信全体のバックナンバーURL は、http:/ /www.kurikoma.o r.jp/~sekiyan/content4.h tm、
「経営の腑」の狙いは、http://www.kurikoma.or.jp/~sekiyan/news063.htm#n315 です。
世の中になかったものは売りにくい
一倉定著「新事業・新商品開発」(社長学シリーズ第4巻:1978年刊)より
人々は、新商品を口にする時には、申し合わせたように“アイデア商品”という。アイデア商品でなければ
新商品ではないような口ぶりである。
そこにあるのは、「アイデア商品は必ず売れる」という神話らしい。すでに世の中にあるものは、先発事業者
が喰い荒してしまっているからダメだ。だから“創業者利潤”を手に入れるためには、どうしてもアイデア商品
でなければならない、ということらしい。
そこには、顧客の要求や流通業者の立場などは、爪のアカほども考えられてはいない。あるのは、“天動
説”から生れる単細胞的思考――「アイデア商品は必ず売れる」――以外の何物でもないのである。
(中略)
新商品新事業というものは、顧客の要求を満たすものでなくてはならないのである。そのための基本的な
態度は、市場と顧客に対する不断の注意深い“洞察”と、真摯に顧客の意見を聞く“耳”と、顧客の潜在する
要求を見つけだす“洞察力”などである。
顧客の要求を正しく捉えれば、あとは必然的に“どのような商品”あるいは“事業”を開発したらいいかが
決まってくるのである。
この辺で、「世の中になかったもの」に対する結論を出そう。
いままで世の中になかった商品には、市場がない。
消費者やエンドユーザーは、その商品のあることを知らない。販売実績のない商品は流通業者は扱いた
がらない、という全くゼロの状態から出発しなければならない。
だから、何もかも初めから一つ一つ作り上げていかなければならないのだ。そこには、多くの時間と多額の
費用がかかるのである。
だから、私は、余程の時間的な余裕と、投入できる資金がない限り、中小企業では「世の中になかったも
の」「アイデア商品」には取り組むべきではない、という意見をもっている。
だからといって、絶対に取り組んではいけないということではない。立派に成功している商品も事業も数多
くあるのだ。
ただ、以上のことをよく認識した上で、腰を据えて取り組むべきだといいたいのである。不用意に走り出す
ことは絶対に慎まなければならないのである。そして、早急に成果を期待せず、長期的な育成を図ることが
肝腎なのである。これが成功へ導く秘訣であるといえよう。
セキやんコメント
説明に労力がかかる「世の中にないもの」ではなく、むしろ「今あるものの欠陥を見つけ
出せ」と一倉は勧めている。それには、やはり市場と顧客に対する「洞察」が不可欠だ。事業経営の答えは、
すべて顧客のところにあることを肝に銘じて欲しい。