尿路 感染症 に対 す るCefroxadine(OGP-9000)の 臨 床的検 討 中牟田

CHEMOTHERAPY
448
AUG.
尿 路 感 染 症 に 対 す るCefroxadine(OGP-9000)の
1980
臨 床的検 討
中 牟 田誠 一 ・熊 沢 浄 一 ・百 瀬 俊 郎
九州大学泌尿器科
小 嶺 信 一 郎 ・相 戸 賢 二 ・江 本 侃 一
浜の町病院泌尿器科
合 谷 信 行 ・宮 崎良 春 ・山 口秋 人 ・南 里 和 成 ・原
三信会原病院泌尿器科
中洲
孝 彦 ・原
三信
肇 ・黒 田憲 行 ・八 木 拡 朗 ・尾本 徹 男
九州厚生年金病 院泌尿器科
伊 東 健 治 ・井 口 厚 司 ・中 山
県立宮崎病院泌尿器科
健
1) 九大 泌 尿 器科 およ び4関 連病 院 外 来,入 院 患者 で尿 路 感染 症 と診 断 され た46例 にCefroxadine
(CGP-9000,CXD)を
投 与 した。8例 は除 外 したの で 効果 判 定 症 例 は38例 で あ った 。
2) 単 純 性 尿路 感 染 症11例 中,著 効5例,有
性 尿 路感 染 症27例 中,著 効3例,有
効5例,無
効9例,無
効1例 で 有効 率 は90.9%で
あ った 。複雑
効15例 で有 効率 は44.4%で あ った 。
3) 副 作用 は 自他 覚 的 な もの は なか った。GOTお
よびGPTが
上 昇 した1例 とBUN,ク
レアチ
ニ ン上 昇 した1例 つ つ が み られ たが,重 篤 な腎 ・肝 障害 は認 め なか った 。
めて 高 い安 全 性 を 有 す る こ とが認 め られて い る7)。
は
じ
近 年CIBA-GEIGY社
め
に
この た び,わ れ わ れ は,尿 路 感 染症 に対 する本剤の臨
に よ って 開 発 さ れ た 経 口 セ フ ァ
ロ ス ポ リ ン 系 抗 生 物 質Cefroxadine(CGP-9000,
は,3位
CXD)
投 与 対 象 と投 与 方法
に メ トキ シ基 を導 入 した こ とに よ り既存 の 経 口
セ フ ァロス ポ リンよ りさ らに 有効 でか つ毒 性 の 弱 い もの
と報 告 さ れ て い る(Fig.
は,グ
床 的 検 討 を行 った の で報 告 す る。
1)。 本 剤 の 抗 菌 ス ペ ク ト ラ ム
ラ ム 陽 性 菌 お よ び グ ラ ム 陰 性 菌 に 広 く,そ
力 はCEXよ
り強 く,と
の抗 菌
くに 短 時 間 で 強 い 殺 菌 力,溶
菌
作用 を示 して い る。本 剤 の経 口投 与 後 の血 中 濃度 の ピー
投 与 対 象 は昭 和53年8月
者 で尿 路 感染 症 と診 断 され た46例 で あ る(Table 1,2)。
投 与 方 法 は,原 則 と して1日750mg(分3)と
期 間 は3∼5日
2,250mg投
Fig. 1
Structure
よ り昭 和54月1月 まで.九 州
大 学 泌 尿 器 科 およ び4関 連 病 院 の泌 尿器科 外来,入 院患
間 と したが,1日1,000mg投
し,
与が7例
与 が2例 に あ った。
of CXD
成
績
臨床 効 果 の 判 定 は,U. T. I.薬効 評価 基 準(第 二版)6)
に 準 じて 行 い単 純 性 尿 路感 染 症 と複 雑性 尿路感染症に分
け て検 討 した 。
7-〔D-2-Amino-2-(1,4-cyclohexadienyl)-acetamido〕
-3-methoxy-3-cephem-4-carboxylic
単 純 性 尿 路 感染 症(Table
acid
1)は,16例
投与 前 の 尿 細 菌培 養 陰 性1例,膿
クは ほ ぼ1時 間 で達 し,そ の値 はCEXと
ほ ぼ同 等 で,
半 減期 は約45分 で あ る。 ま た各 種 の毒 性 試 験 に よ りきわ
1例,投
に投与 したが,
尿が 認め られなかった
与後 に来 院 しな か った2例 お よび腎盂腎炎の1
例 を効 果 判 定 か ら除 外 し,急 性 単純 性 膀胱炎11例につい
VOL.
28
CHEMOTHERAPY
S-3
Table
1
Clinical
A.C.: Acute
cystitis
A.P.: Acute
pyelonephritis
summary
of simple
U.T.I.
cases
treated
with
CXD
Before troatment/
After treatment
て臨床効果を 検討 した。
1株 で あ り,投 与後 残 存 した 菌 は,Klebsiella 1株
総合臨床効果 は,著 効5例,有
効5例,無
効1例 で有
効率は90.9%で あ った 。 自覚 症状(排 尿 痛)に 対 す る効
果は消失11例 であ り,膿 尿 で は 正 常 化9例,改
で,細菌尿 で は,陰 性化6例,菌
交代 と考 え られ るの が3例,不
定出来 た起炎 菌 は,E. coli
449
善2例
菌 交代 と してPs. putida
複 雑 性 尿 路 感染 症(Table
で,
1株 を 認 め た 。
2)に は30例 に投 与 したが,
投 与 前 の 尿 細 菌培 養 が104未 満 の2例 と,Candidaの1
種 不 明 の た め減 少 ・菌
例 を効 果 判 定 か ら除 外 し,慢 性 複 雑 性膀 胱 炎18例 と慢 性
変2例 で あ った 。分 離 同
複雑 性 腎 盂 腎 炎9例 につ い て臨 床 効果 を検 討 した 。慢 性
9株,Klebsiella
1株,不
明
複 雑 性膀 胱 炎 の総 合 臨 床 効果 は,著 効2例,有
効5例,
CHEMOTHERAPY
450
Table
C.C.: Chronic
C.P.: Chronic
2
Clinical
cytitis
pyelonephritis
summary
of complicated
AUG.
U. T. I. cases
treated
with
Before treatment/
After treatment
CXD
1980
VOL.28
CHEMOTHERAPY
S-3
Table
Overall
3
Overall
effectiveness
Fig. 2
WBC
s-GOT
clinical
rate:
Influences
efficacy
451
of CXD classified
by type of infection
44.4%
of CXD
on the laboratory
RBC
s-GPT
findings
(1)
Hb
A1-P
CHEMOTHERAPY
452
Fig. 2
AUG.
Influences of CXD on the laboratory findings (2)
Creatinine
BUN
無 効11例
で 有 効 率 は38.9%で
1例,有
効4例,無
あ り,腎
効4例
で,有
効2例,無
有 効2例,無
2例,無
は3例
は6例
で,著
は2例
で,有
で,有
効2例,無
効
効評 価 基
ご と く,第1群
は11例 で,著
効7例,第5群
以 上,複
は,著
3の
効3例,第3群
効3例,第4群
例,第6群
盂 腎 炎 で は,著
で あ っ た 。U.T. I.薬
準 の 疾 患 病 態 群 別 はTable
効
効1例,無
効1例
GPTが35Uか
ら51Uへ
効9例,無
効15例
ら47Uへ,
と上 昇 したが,主 治医 は本剤
との 関 連 は不 明 で あ る と して い る。症 例27でBUNが18
は5例
効1例,
効2例,有
認 めな か った。 症 例38で,GOTが28Uか
効1
mg/dlか
ら27mg/dlへ,症
mg/dlか
ら1.6mg/dlへ
例26で ク レア チニ ンが0.7
上昇 した 例が み られたが,重 篤
な肝 お よ び腎 機能 障害 はな か った 。
で あ った。
考
雑 性 尿 路 感染 症 を ま とめ ると 総 合 臨 床 効 果
効3例,有
1980
按
セ フ ァ ロス ポ リン系 抗生 物 質 の なか で経 口剤 と しては
で 有 効 率 は44.4%で
あ った 。 膿 尿 に 対 す る 効 果 は,正
常 化10例,改
善2例,
Cephalexin, Cephaloglycin,
不 変15例
性 化7例,不
変10例,
つ い て は,そ れ らの 臨 床 効 果 を報 告 して来 た1)∼4)。
今回
で あ り,細
菌 尿 で は,陰
菌 交 代10例 で あ っ た 。 分 離 同 定 出 来 た 起 炎 菌 は,Klebs-
は,Cefroxadine
iella 8株,E. coli
mi-
は,グ
epider-
CEDと
rabilfs, P.
midis,
P.
morganii,
4株,E. coli,
St. faecalis各2株,S.
Serratia,
Al. faecalis
で あ り,菌
P. mirabliis,
P.
morganii
血 球,ヘ
モ グ ロ ビ ン,血
よ びBUN,ク
臨 床 検 査 成 績 で は,末
に,末
清 化 学 はGOT,
を 除 く,
梢血 は 白
GPT,
レ ア チ ニ ン を 投 与 前 後 に 施 行 し比
較 した 。 自他 覚 的 な 副 作 用 は,全
(CXD)に
例 にみ られ なか った 。
梢血 には 投与 後 異 常 値 へ の変 動 は
Cefatrizineに
つ いて 検 討を 加えた。本剤
ラム陰 性 お よ び 陽 性 菌 に お け るMICはCEX,
ほ とん ど 同 様 で あ るが,Klebsiella pneumoniae
お よ びE. coliに
対 す る殺 菌作用 はす ぐれ てい る8)。一
方,九 大 泌 尿 器科 外 来 で,1975年 ∼1976年 の主 な尿路感
染 分 離 菌 は,Proteus
coil 16.0%で
22%,
25.1%,
Ps. aeruginosa 21.5%, E
あ り,薬 剤 感 受性 で はProteusでABPC
CER20%,
KlebsiellaでABPC4%,
を 認 め た。
44例 に つ い て 検 討 し た 。 臨 床 検 査 は43例
Al-Pお
P.
交 代 と して,Ps. aeruginosa
副 作 用 に つ い て は 投 与 後 来 院 しな か っ た2例
血 球,赤
aer-
Klebsiella各2株,Serratia,
epidermidis, E. coli,
お の お の1株
5株,P.
で あ っ た 。 投 与 後 残 存 した 菌 は,Ps.
mirabilis各1株
8株,S.
aeruginosa
rettgeri, Ent, cloaoae,
お の お の1株
uginosa
7株,Ps.
Cefmdine,
E. coliでABPC
CER
57%,
CER
90%と
52%で あ り5),セ ブァ
ロス ポ リ ン系薬 剤 の 臨 床 効 果 は 期 待 で きた。実 際 に
CXDを
90.9%と
投与 して み る と,急 性 単 純 性膀 胱炎の有効率は
また慢 性 尿 路 感染 症 では44.4%と 満足すべき結
果 で あ った 。急 性 症 の 起 炎菌 はほ とん どがE. coliで あ
り,本 剤 投 与後 に残 存 した菌 はKlebsiellaで あった。慢
性症 の主 な 起 炎 菌 はKlebsiella, E. coli, Ps.aeruginosa
VOL.28
CHEMOTHERAPY
S-3
453
であり,投 与後 残存 した 菌 と菌 交 代 と して 出 現 した もの
のほとん どがPs. aeruginosaで
あ った 。
治 療 効 果 。Chomotherapy
3)
昇が,ま た1例 つ つ にBUN,ク
にGOT,
GPTの
上
4)
レア チニ ンの 上 昇 例が
みられ,発 現頻 度 は非 常 に まれ で は あ ったが,用 い るに
参
考
文
西 日泌尿31:
557∼561,
熊 沢 浄 一,
臨 床(第4版),
1969
日高 正 昭, 清 原 宏 彦, 楢 橋
他:
1970
各種 尿 路
よ る 治 療 経 験 。Chemo1975
稗 田
定,
武 居 哲 郎,
百瀬
よ る各 種 尿 路 感 染 症 と急
中 牟 田 誠 一:
24:
1925∼
尿 路 感染 症 の
金 原 出 版1976
6)
UTI薬
効 評 価 基 準(第2版)1978
7)
第27回
日本 化 学 療 法 学 会 総 会:
IV。CGP-9000,
献
1) 百瀬俊郎, 熊 沢浄 一, 楢橋 勝 利, 日高正 昭, 清 原
宏彦: Cephalexinに よ る尿路 感 染 症 の治 療 経 験 。
2) 百瀬 俊郎, 熊沢 浄 一,
Cefatrizineに
5) 百 瀬 俊 郎,
は急性症で特 に有 効 で あ り,慢 性 症 に も起 炎 菌 を検 索 し
つつ投与すれ ば,臨 床 で充 分 に使 用 出来 る と考 え た。
伊 藤 秀 明,
俊 郎,
99∼103,
百 瀬 俊 郎,
性 淋 疾 の 治 療 経 験 。Chemotherapy
1933-1976
当って注意を払 う必 要 が あ る現象 と考 え られ た 。,
以上本剤 は経 口剤 で あ る特 長 を生 か し,尿 路 感染 症 に
熊 沢 浄 一,
他:
18:
中 牟 田 誠 一,
感 染 症 のCephradinoに
therapy
23: 399∼408,
副作用 に関 して は44例 につ い て検 討 した が,自 他 覚 的
症状は全例 に認 め なか ったが,1例
熊 沢 浄 一,
新 薬 シ ンポ ジ ウム
1979
8) ZAK, O.; W. A. VICHER, C. SCHENK, W.
ZIMMERMANN, J. REGOS, E. R. SUTER, F.
KRADOLFER & J. GELZER: CGP-9000: A new
orally active, broad-spectrum cephalosporin. J.
Antibiotics 29: 653r-655, 1976
勝利: 各 種尿路 感染 症 に 対 す るCephaloglycinの
CLINICAL EVALUATION
ON URINARY
OF CEFROXADINE (CGP-9000)
TRACT INFECTIONS
SEIICHINAKAMUTA,
JYOICHIKUMAZAWA
and SHUNROMOMOSE
Departmentof Urology,Facultyof Medicine,Kyushu University
SHINICHIRO
KOMINE,KENJIAITO and KANICHIEMOTO
Departmentof Urology,HamanomachiHospital
NOBUYUKI
GOYA,YOSHIHARU
MIYAZAKI,
AKITOYAMAGUCHI,
KAZUNARI
NANRI,TAKAHIKO
HARAand SANSHINHARA
Departmentof Urology,Sanshin-kaiHara Hospital
HAJIMENAKASU,NORIYUKI
KURODA,HIROOYAGIand TETUOOMOTO
Departmentof Urology,KyushuKosei-NenkinHospital
KENJIITO, KATUSHIIGUCHIand KEN NAKAYAMA
Departmentof Urology,MiyazakiPrefecturalHospital
1) Cefroxadine (CGP-9000, CXD)
(750-2.250mg/day)
was administrated
to 46 Patients with urinary
tract infections.
2) In 11 cases of acute simple cystitis, excellent results were observed in 5 cases, good in 5 and poor in
1. Overall effectiveness
rate
in acute
cases
was 90.0%.
3) In 27 cases of chronic complicated infection, excellent results were observed in 3 cases, good in 9 and
poor in 15. Overal effectiveness rate in chronic cases was 44.4%.
4) As to side effects, no cases with subjective symptoms were noticed, but in each one case, transaminase,
BUN and creatinine was mild abnormal changed after administration of the drug .