非無菌的問歇的自己導尿法の経験

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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非無菌的問歇的自己導尿法の経験
平野, 昭彦; 田中, 宏樹; 黒田, 俊
泌尿器科紀要 (1988), 34(10): 1751-1756
1988-10
http://hdl.handle.net/2433/119742
Right
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
泌 尿 紀 要34:1751-1756,1g88
1751
非無菌 的問歇的 自己導尿法 の経験
聖 マ リア ンナ医 科 大学 東横 病 院 泌 尿器 科(部 長: 平 野 昭彦)
平
野
昭
中
宏
黒 田病 院(院 長:黒 田
孝)
黒
EXPERIENCE
WITH
彦,田
田
樹
俊
NON-ASEPTIC
INTERMITTENT
SELF-CATHETERIZATION
Akihiko
HIRANO and
Hiroki
TANAKA
From the Department of Urology, Toyoko Hospital, St. Marianna University, School of Medicine
(Chief: Dr. A. Hirano)
Shyun
KURODA
Kuroda Hospital
(Chief Dr. T. Kuroda)
Nineteen cases (7 males and 12 females) primarily with neurogenic bladder were treated in
our department with non-aseptic intermittent self-catheterization
during a period of approximately
ten years and were followed for three months or more. The follow-up period was three years or
more in eleven cases with a maximum of about ten years in one case. At present, this therapy is
being continued in 13 cases and there were no cases in which this mode of therapy was discontinued because of undesirable effects. Dysuria improved in six cases, suggesting the effectiveness of
this therapy in the management of the incompetent detrusor. Renal function remained almost unchanged and IVP findings improved in four of eight cases, suggesting the favorable effect of this
therapy on the upper portion of the urinary tract. Although no serious complication
occurred,
45.3% of the cases were complicated by UTIs. However, these infections could be controlled by
antibacterial drugs. Antibacterial drugs were administered
in all cases but the total dose was
unexpectedly high. In view of the possible untoward effects associated with such high dose chemotherapy, we thought we should avoid the prophylactic use of antibacterial
agents wherever possible.
(Acta Urol. Jpn. 34: 1751-1756, 1988)
Key
words:
Non-aseptic
fection,
緒
intermittent
Antibacterial
self-catheterization,
Neurogenic
bladder,
Urinary
tract
in-
drugs
言
優 秀性 が 世 界 的 に認 め られ て,わ が 国 で も1976年 折 笠
らDに よ り紹 介 され て 以来,現 在 で は ほぼ 定着 した 感
主 と して神経 因 牲膀 胱 に 原因 した 難治 性 の排 尿 困 難
が あ る.著 者 も本 法 を 適用 して最 長 観察 例が 約10年 に
の治療 法 と して 保存 的に は,種 々の薬 物 療 法,尿 道 カ
達 した の を機 会に,自 験19症 例 につ い て再 検討 した の
テーテル の留置,手 術 的 に は外 尿 道括 約 筋 の切 開,止
で 報告 す る.
むを得 ない場 合 に は 尿路変 更 術 な どが従 来 行わ れ て き
対 象 症 例 お よ び方 法
た.し か し薬 物 は ほ とん ど有 効 とい えず,そ の他 の 療
法 も尿路 異物 に起 因 した 感染,装 具 に よる 日常 生 活 上
の不 便 さな どの点 か ら満足 す べ き もので は なか った.
一 方,1972年Lapidesら
は この 治療 法 と して,非
無菌的 問 歌的 自己 導 尿 法 を提 唱 した.こ の方 法 は 従来
の泌尿 器科 的 常識 を 破 る もので あ ったが,そ の後 そ の
1979年2月
よ り1987年6月 ま での10年4ヵ
月間 に 自
己 導尿 を 行 った 主 と して神 経 因性 膀 胱 に よる排 尿困 難
の24症 例 中,3ヵ
月 以上 経 過 を観 察 した19症 例 を対 象
と した.た だ し,1例
は家 族 に よる導 尿例 で あ った.
検 討 項 目は,性 別 お よび 年 齢,経 過観 察 期 間,原 因
1752
疾 患,本
泌 尿 紀 要34巻10号1988年
法 の継 続 の 有 無,導 尿 回 数,排 尿 困難 の 推
移,腎 機 能 お よびIVP所
結
果
見 の 推移,尿 路感 染 の 合併
全 症 例の 概 要 を別 表 に示 す(Tablei)・
率,抗 菌 剤 の投 与 状況 お よび 合 併 症 と した,一 部 患者
性 別 お よび 年 齢 は,男 子9例,女
に は ア ンケー ト調 査 を,ま た 一 部 患者 で 尿流 動 態 検査
子10例 で各 々平均
65.3歳(26∼85歳),61.2歳(42∼83歳)で
を 行 った.
自己導 尿 の方 法
(Table2)、
指導 前 に 目的 お よび意 義 を患 者 お よび家 族 に充 分 に
で,平 均2年10カ
あ つた
経 過 観 察 期間 は3ヵ 月か ら10年2ヵ 月 ま
月 で,3年
以 上 が11例 で あ っ た
説 明す る.カ テ ー テルは 初期 の頃 は ネ ラ トンカ テ ー テ
(Table3).原
ル(No.8前
通 過 障害 に よ る2例 以外 は 神経 因 性 膀胱 で,内 訳 は脳
後)を 使 用 した が,ほ とん どの症 例 で,
因 疾 患 は,明 らか な16例 中下 部 尿路 の
富 士 シス テ ム社 製 の 自己 導 尿 セ ッ トを使 用 した.外 筒
卒 中 な ど脳 血 管 障害 に よ る もの7例,子
管 内 に0.2%イ
盤 内 手術 の後 遺症 に よ る5例,先
ソジ ンな ど消毒 液 を満 して 数 日ご とに
交 換 した.患 者 は導 尿時 手 指 を石 け んを 用 い て流 水 で
患 に よる も の3例 な どで あ る(Table4).
本 法 実施 の 経過 は 明 らか な17例 中 継 続 中 の も の13
洗 浄 し,外 尿 道 口部 を 同様 の 消毒 液 を ひた した綿 球 で
消毒 後,な るぺ く残 尿 が ない よ うに 導尿 させ た.導 尿
例,4例
後 カ テ ーテ ルは洗 浄 して外 筒 管 内に 収 め る.男 子 で は
て い る(Tablc5),導
潤滑 剤 と して キ シ ロカイ ンゼ リー⑪ を使 用 した.
例,つ
2週 間 か ら1ヵ 月 ご とに検 尿 を行 い,感 染 尿 が認 め
宮 癌 な どの骨
天 性 また は代 謝性 疾
が 離 脱 しそ の うち2例 は 軽 快,2例
い で3∼4回
(Table6).排
は 死亡 し
尿 の回 数 は 玉日2∼3回
お よ び6回
以上 が 各4例
が7
と 多い
尿 困 難 の 経 過 は,推 移 の 明 ら か な15
られ た場 合,原 則 と して感 受 性 を有 す る抗 菌 剤 を投 与
例 中8例 が 不 変,6例
し,尿 所 見が 消失 した 時点 で 中 止す る こと と した,し
(Table7).な
か し結 果 的に み る と,ほ と ん どの患 者 が きち ん と定 期
に 改 善 とみ な した.腎 機 能 の 推移 の 明 らか な12例 中7
的 に来 科せ ず,止 む を 得 ず予 防 的 な少 量持 続 的 また は
例 が 不 変,3例
間歌 的 投 与 の形 とな った.
8).な お改 善 は血 清BUNお
Tablei.全
が 改善,i例
が 悪化 し て い る
お残 尿 率 が20%以 上 減 少 した 場 合 を仮
が 改善,2例
が悪 化 して い る(Table
よび ク レアチ ニ ン値 が,
症 例 の 概要
一
経過
氏名
性別
年齢
導尿
観察
回数
期間(/日)
1柏 木'
a
79
2米 田
♀
63
3松 村
♀
63
4萩 原
a
82
5勝 又
a
26
6小 嶋
♀
59
7宮 川
♀
55
8石 川
a
72
2年
4ゲ 月
6年
10ケ 月
5年
107月
10年
2ヶ 月
5年
9ヶ 月
2年
9ケ 月
4年
4ヶ 月
1年
10ヶ 月
9河
野
70
♀
52
4ケ 月
15奥
山
♀
59
16梅 津
♀
42
3年
8ヶ 月
4年
4ケ 月
17二 村
a
85
8ケ 月
IS山 本
♀
58
♀
69
19山 本(タ}
1年
3ケ 月
1年
10ヶ 月
zo
発熱
継続
改 善37.9
38
なし
継続
改 菩28.8
10
なし
ioo
なし
継続
中止(泊
》
不 変25.0
50
なし
欠26.3
6
なし
欠70.0
ioo
なし
死
欠50.0
4
なし
継続
不 明'50.0
4
なし
継続
不 変50.0
is
なし
不明
低下
欠90,9
39
なし
不明
不変
不明
不変
不明
不 変25.0
12
なし
ioo
なし
継続
死
16
なし
継統
0
なし
継続
糖尿病
不変
3-4
綿 菱
認建
裡灘
裡灘
改善
不変
不変
不変
5-6
6∼7
♀
継続
改 善95.6
4'5
3-4
2年
巻
なし
不変 改善
不変 不明
2-3
11横
14天 木
57
建羅
鞭
3-4
4-5
13西
齢
欠45.0
不変
改善
不変
改善
改善
改善
不変
不変
z
4年
3ヶ 月
1年
4ヶ 月
4年
6ヶ 月
なし
改 善45.3
4ケ 月
52
18
50
61
83
継続
52
不 変16:8
2-3
3
5-6
4-5
4
4'5
z
3
経過
蔽
鵠
不 変69.0
60
a
内服率. 合併症
不変 不変
改善 改善
不変 不変
♀
♀
尿路
染
鰭 躁
脳卒中
脳卒中
脊叢
裂
嶽 『
穰 『
躯建
腰鵜
柵
脳卒中
糖尿病
4
a
光
排尿 腎IVP感
困難 機 能(%)(%)
糖尿病 不変 低下
2'3
10稲 井
12吉 川
原因
疾患
不変
改善
不変
不変
不変
不明
不明
不明
欠4.5
欠56.5
不 変75.0
欠0
継続
中止(治
)
継続
1日 平 均 投 与量
申内服 寧 需X100
常用 量
1753
平 野,ほ か:非 無 菌 的 間 歌的 自己導 尿 法 ・尿 路 感 染
Table2.性
導尿 回数別頻度
別 及 び年 齢 分布Table6・
男
年 墜(畿}
子
女
計
子
回 数
0-9
症例数
書∼z回
t
1
2∼3回
7
3∼4回
4
4∼5回
3
6回 以 上
4
10∼19
i
加 ∼29
30∼
詔
1
i
鵠 ∼59
1
5
s
50∼69
i
4
5
70∼79
z
i
3
80∼
z
1
3
鱒 ∼49
7
計
12
19
計
19
Table7.排
Table3.経
尿困 難 の程 度 の推 移
過観 察 期 間
期
症例数
症 例数
悶
不
変
8
2
改
警
6
2年 ∼3年 未満
i
悪
化
1
3年 ∼4年 未満
4
不
明
4
4年 以上
7
3ヶ 月∼1年 未満
5
1年 ∼2年 未 満
計
19
19
計
Table8.腎
Table4・
原
経
因
性
霧
胱
機 能 の推 移
症例 数
原 因疾 患 別分 類
因
疾
息
症例 数
不
変
7
脳血 管障害(脳 卒中等)に 因 るもの
7
改
善
3
子冒癌 等骨盤 内手術 後遺症 に因 るもの
5
悪
化
2
先天性 又は代 謝性疾 患 に因 るもの
3
不
明
7
不明の 原因疾 息に よ るもの
2
下部星路通過 瞳害 に因 る もの
計
19
2
計
19
Table9.IVP所
見 の 推移
症例数
Table5.自
継
離
己 導尿 の継続 の推 移
続
軽
中
快
窪例 数
計
13
73
2
4
説
死
不
計
亡
2
明
2
2
19
19
不
変
4
改
警
4
悪
化
0
不
明
11
計
(いずれ も正 常),明
IVP所
見 は,推 移 の 明 ら か な8例 中4例
らか な改 善 が4例 で み られ,悪 化
した もの はな い(Table9).尿
異常 高値か ら正常 値 に 下 降 した 場 合 と した.
が不 変
19
路 感 染 の 合併 率 は,感
染 尿 の 全検 尿 回 数 に 対す る割 合 で 計 算 す る と 全 体 で
泌 尿 紀要34巻10号1988年
1754
Table10.合
一 方Bennettら(1984)は
併症
t
腎
炎
1
導尿時出血
2
結石 形成
1
孟
特 に な し
以 上 の 男 女に 問
題 な く行z.た と発 表 し,本 邦 に お い て小 児 例 で の経 験
症例 数
導尿時痙痛
,60歳
も多 く7β),内 外 とも に 年 齢 お よ び 性 別 を 問 わず 行 わ
れ て い るが,老 人例 が 増 え る傾 向で あ る ・経 過 観察 の
期 間 は最 長 が 約10年 間 で,3年
以 上 がIl例 あ り比較 的
長 期 間 で あ る.こ の うち 本法 を 継 続 中 の ものが13例
で,離 脱 した もの は4例 と少 な くそ の うち2例 は 死亡
し,2例
は軽 快 に よる も ので,本 法 が 不 都合 とい う理
由 で中 止 した もの は い な い,
15
原 因 疾患 は脳 卒 中 な ど脳血 管 障害 に よる も の7例,
45.3%で
あ った.た だ し症 例 ご とにみ る と,全 例 で合
併 した.全 例 が 抗菌 剤 の投 与 を 受 け,1日
は 常用 量 に換 算 して36.4%で,そ
平 均 投与 量
の量 を 連 日投 与 され
た ことに 相 当 した.合 併 症 は重 篤 な もの は な く,軽 度
の 出血2例,導
尿 時痛1例 な どで あ った(Table10).
尿 流 動 態検 査 は4例 に 行 い,い ず れ も低 緊 張 性 膀 胱
で,利 尿筋 括約 筋 協 調不 全 がみ られ た.ア ンケ ー ト調
査 はll例 に 行 って6例 で回 答が あ り,発 熱,出 血,膀
胱 炎 な どの合 併症 は な く,特 に具 合 の悪 い点,困
った
子 宮 癌 な どの骨 盤 内 手術 に よ る ものが5例 な どが 多 い
が,今 後 これ ら の疾患 が 増 え る こ とが 予 想 され,本 法
の重 要 性 は高 ま る と思わ れ る.導 尿 の回 数 は1日2∼
3回 が7例
と最 多 だ が,排 尿 困Jjの 程 度 に よっ て左右
され,6回
以上 の もの も4例 あ りほぼ 症 例 ご とに 適切
に 行わ れ て いた.排 尿 困難 の経 過 は,推 移 の 明 らか な
15例中8例 は不 変 だ が6例 に 改善 がみ られ,ほ とん ど
の も のが 慢性 疾 患 で あ る こ とか らみ て,本 法 の膀 胱利
尿 筋に 対 す る有 効 性 が示 唆 され た.腎 機 能 の推 移 は血
清BUNお
ことな どの訴 え は なか った.
よび ク レア チ ニ ン値 でみ た,精 度 の高 い
もの では な い が,判 明 した12例 中7例 が 不 変 で,残 る
考
察
非 無 菌 的間 敏 的 自己 導尿 法 は,現 在 主 として神 経 因
性膀 胱 に 因 る難 治性 の排 尿 困難 の 治療法 として ひ ろ く
半 数 ず つ が 改善 お よ び悪 化 で ほぼ 変 動 が な か った.
IVP所
見は8例 中4例 が不 変 で いず れ も正 常 で,残
る4例 で 明 らか な改 善 を みた.以 上 よ り本 法 の 腎機 能
を含 め た上 部 尿 路に 対 す る影 響 は,ま ず良 好 と考 え ら
普 及 して い る.
そ の理 論 的根 拠 は周 知 の ご と く,多 少 無菌 的操 作 は
れ た.
伸 展に よ る感染 御 禦機 能 の低 下 を 防 ぐと共 に,膀 胱 本
尿 路 感 染の 合 併率 は1般 に40∼60%(平
11)とい わ れ てい るが,自 験例 で も45.3%と
来 の拡 張,収 縮 運 動 を起 させて 利 尿筋 の 機能 の回 復を
で あ った.こ れ を症 例 ご とに み る と全 例 で合 併 を みた
は か り,残 尿 を排 除 して 腎 機能 の 保全 に も役立 て よ う
が,抗 菌 剤 に よる コ ン トロール は可 能 で あ った.抗 菌
とい うもので あ る.導 尿 時 膀胱 内に 注入 された 細 菌 は
剤 の投 与 状況 は,全 例が 投 与 を 受 け結 果 的 に は,常 用
犠 牲 に して も頻 回 に導 尿 す る こ とに よ って,膀 胱 の過
均50%)4,9,
同様 の結 果
同時 に 大 部分 が排 除 され,頻 回に 行 え ぽわ ずか に 残 っ
量 に換 算 して1日 平均36.4%を
た 細 菌 の増 殖 を 防 ぎ,危 惧 され た 感 染 の点 で も問 題 な
に 相 当 した.投 与 法 は 検尿 で感 染 を認 めた 際 に抗 菌 剤
連 日投 与 され た こ と
い と された レ3).さ らに 本 法 の利 点 と して,異 物 のな
を 感染 が 消 失す る まで投 与 す る こ とを 原則 と したが,
い こ と,装 具の不 要,患 者 自身 の尿 路 管理 に基 づ く自
実 際 に は患 者 が き ち ん ど定 期 的 に 来科 せ ず,そ の 間 自
覚 お よび 自信 の 回復 な どが挙 げ られ て い る4).以 上,
己 判 断 で 内服 し,医 師 の 指示 も不 徹 底 で,結 果 的 に予
本法 は 日常生 活 上 多少 の わず らわ しさは あ る もの の,
防的 な 少量 連 続 また は間 歌 的投 与 とな った.そ の 結果
生理 的 に 近 い形 で排 尿 が得 られ る点 か ら,比 較 的理 想
前 述 の ご と く総 投与 量 は予 想 外 に多 い こ とが分 り,こ
的 な方 法 と云 え る.
の こ とは 副作 用 の点 か ら問 題 で あ る.自 験 例 で幸 い 副
今 回著 者 は,当 科 にお い て約10年 間 に23例 で 本 法を
作 用 が な か った が,今 後 は困 難 で あ って も定 期 的 な検
経 験 した が,そ の うち3ヵ 月以 上経 過 を 観察 した19例
尿 に よ る患者 管 理 を 強 化 して,で きる だ け抗 菌 剤 の予
に つ い て検 討 した.
防 的投 与 を避 け て適 正 に投 与 す べ きで あ る と反 省 させ
性 別 お よび年 齢 は 男女 約 半数 ず つ で,平 均 年 齢 は い
ず れ も60歳 代 で,2例
を除 い て50歳 以上 と高齢 であ っ
られ た.一 般 に抗 菌 剤 の予 防的 投 与 は 行 わ ない とす る
説 が 多 いが6),実 際 に は か な り行 わ れ て い る と思 わ れ
た.英 国 では 以前 男 子 で は尿 道損 傷 を恐 れ て あ ま り行
る4,12).一 方,尿
わ れ ず,先 天 性疾 患 に よる小 児例 に 限 られ た5,6).
が なけ れ ば,抗 菌 剤 を 投 与 しな い と い う報 告 も あ る
路 感染 が あ っ て も発 熱 な どの 症 状
平 野,ほ か:非 無 菌 的 間欺 的 自己導 尿 法 ・尿 路 感 染
1755
が5・6・13),感
染 が 腎機 能 に及 ぼ す影 響 を 無 視 で きず,
法 が 不 都 合 とい う理 由で 中止 した ものは な い.排 尿 困
その点 も今 後 の検討 課 題 であ る,自 験 の二 分 脊 椎 の1
難 は6例 で改 善 し,膀 胱 利尿 筋 に対 す る 本法 の有 効 性
例(症 例5)が,抗
が 示 唆 され た.腎 機 能 は ほ ぼ不 変 で,IVP所
菌 剤 が 無 効 の た め 中 止後 膿 尿 が
持続 して い る が,5年9ヵ
BUN値
mg/dl前
が30.Omg/dl前
月 の経 過 で 腎機 能 は 血 清
後,ク
レア チ ニ ン値 が2,1
後 とやや 高 値 を保 ち,IVP像
見 は8
例 中4例 で改 善 し,本 法 の上 部 尿路 に 対す る影 響 も良
好 と考 え られ た.合 併 症は 重 篤 な もの は なか った.尿
が 改善 して 比
路 感 染 の合 併 は全 体 で45.3%で,全
例 が抗 菌 剤の 投 与
較的 良好な経 過 を示 して興 味 が ある.滅 菌 操作 に 関 し
を 受 け て コ ン トロール は可 能 で あ った が,そ の総 投与
ては,で きるだ け ク リー ンが望 ま しいが,手 技 的 に こ
量 は予 想 外 に 多か った.副 作 用 の点 か ら,抗 菌 剤 の予
れ以 上感染率 を低 くす る こ とは困 難 と考 え る.
防 的投 与 を 出来 るだ け避 け た 適切 な投 与 が 大切 で あ る
と反 省 させ られ た.
合併 症は軽 度 の導 尿時 出血 お よび疹 痛,発 熱 な どが
あ った が,重 篤 な ものは なか った.自 験 の63歳 の 女子
例(症 例2)で,入
本論文 の要 旨は第52回日本泌尿器科学会東 部総会で発表 し
浴 後 導 尿時 に たび た び 出血 を み た
た.
が,外 尿 道 カル ンクル スを認 め,入 浴 時 の充 血 が 原因
と考え られ た.一 般 に本 法 の適 応 と して,尿 流 動 態検
文
査で低緊 張性膀 胱 で あ って尿 道 括約 筋 機 能不 全 に よる
1)折
尿失禁が な く,あ る程 度 以上 蓄 尿 可能 で あ る こ とが 挙
査結果 でか つ利 尿筋 尿 道 括約 筋調 不 全 が認 め られ た.
2)小
なお強度 の尿失 禁 に対 して,あ らか じめ尿 失 禁 防止 手
川 秋 實:非
3)土
の指 導 で 容易 に修 得 可 能 で あ っ
州 医誌
田 正 義=神
経 因 性膀 胱 に 対す る 自己 間 歌 導 尿
正,能
登 宏 光,佐
藤
貞 幹,原
田 忠,土
田 正 義:間
歓的 自己導 尿法 に
よ り 自排 尿 が 可 能 と な り,重 篤 な 精 神 症 状 が 改 善
の不 自由 な 関 節炎 の患 老,inten
あ る視 力 障 害 を も った 多 発性 硬 化症
した 先 天 性 神 経 因 性 膀 胱 の1例.西
日 泌 尿 磁:
761-764,1982
の女子 で も可能 であ った が13),自 験 の1例 の様 に 家族
5)K.Murray,PatLewis,JanetBlanninand
が行 って もよい.使 用 す るカ テ ー テルは,私 製 鏡 つ き
AngelaShepherd:Cleanintermittentcathe-
金属 カ テー テルな ど種 々工夫 され て い るが3・7・11・14〕.自
terizationofadulturinarytractdysfunction.
験例 では市 販 の シ リコ ン製 セ ル フ カテ ー テルを 使 用 し
て問題 なか った.
無 菌 的 間 敗 的 自 己 導 尿.信
法.綜
合 臨}休34:809-810,1985
4)松 尾 重 樹,西
沢
理,西 本
手技 的に 当初 危 惧 された 女子 例 で も他 の報 告 と同様
tiontremorの
村 勝 昭 ,工 藤 哲 男,富 樫
泌 尿 会 誌67=7
29:361-362,1981
術を 行 う場合 もあ るiz).
た.文 献 上 では,手
柳 知 彦,木
正 樹:問 歌 自 己 導 尿 法 の 経 験.日
-13 ,1976
げ られ るが3,14),同 検 査 を行 った 自験4例 で 同様 の検
に,老 人で も1∼2回
笠 精 一,小
献
BrJUrol56:379-380,1984
6)Shortsreports:Intermittentselfcatheteriza-
一部患 者 に ア ン ケー ト調 査 を 行 った が
,出 血,発 熱
tioninadults.BrMedJ289:467-46R,1984
7)戸
な どの合 併症 は な く,特 に具 合 の悪 い とい う訴 え もな
く日常生 活上 まず まず の満 足度 であ った.Murrayら
(1989)に よれ ば,37例
中1例 が 不 満 を訴 え,他
8)宮
野
は自
信 を回復 して い て,精 神 面 で の利 点 が述 べ られ て い
る.
以上 の ご と く本法 は 尿 路 感染 の合 併以 外 に特 に 問 題
塚 一 彦,坪
井 成 美,富
導 尿 法 に つ い て.日
武,新
田
井 健 男,駿
河 敬 次 郎,舟
害 に 関 す る 研 究.横 浜 医 学33:工9-43,1981
野 俊 康,川
口光 丁.三 崎 俊 光,久 住 治 男:子
10)天
唆 され,そ の有用 性 が再 認 識 された.
問 歌 的 自 己 導 尿 法 の 経 験.泌
幸 一,黒
導尿法 を行 って3ヵ 月以 上経 過 を 観 察 した,主
と して
神経因性 膀胱 の19症 例 に つ い て検 討 した.性 別お よび
年齢は男 女約 半 数ず つ で,平 均 年 齢 は いず れ も60歳 代
巧,大
宮
腸 癌 根 治術 後 の排 尿 障 害 に対す る非 無菌 的
1984
11)長 田 尚 夫,井
過 去約10年 間に 当科 に お い て非 無 菌 的 な問 歌 的 自己
島 なを み ・
児 外 科16:79-84,1984
井 啓 国=直 腸 癌 根 治 手 術 を 伴 う膀 胱 尿 道 機 能 障
9)宮
癌,直
語
児 の 間 敏 自己
神 経 因 性 膀 胱 児 の 排 尿 コ ン ト ロー ル の 問 題 点.小
な く,上 部 尿路 お よび膀 胱 利 尿筋 に対 す る好 影 響 が示
結
勝:小
医 大 誌52:95-98,1985
上 武 夫,高
田
山
俊,山
登:神
橋
尿 紀 要30:493-500,
剛,吉
越 昌 成,中
野
尾 正 治 ,黒
勝,浜
子
尾
経 因性 膀 胱 にた いす る間 歓 自己
導 尿 法.聖
マ リ ア ン ナ 医 大 誌11:295-303,1983
12)DavidM,BarrettandWillamLFurlow
Incontinence,inter皿ittentself二
tionandtheartificialgenitourinarysphinc-
と高齢で あ った.経 過 観察 期 間 は11例 が3年 以上 で,
ter.JUrol132:268-269,1984
最長 約10年 であ る.本 法を 継 続 中 の もの が13例 で,本
13)CarlJBennett,AnaniasCDiokno:Clean
・catheteriza_
1756泌
尿 紀 要34巻10号1988年
intermittentself-catheterisationintheelder・
歌 自 己 導 尿 の 試 み.
2例 の 経 験.西
日 泌 尿46=
ly.Urology24:43-45,1984899-903,1984
i4)高
木 隆 治,上
原
徹,内
山 武 司,佐
藤 昭 太 郎:対
麻 痺 の女 子 に対 す る私製 金 属 カテ ー テル に よる 間
(1988年1月ll日
受 付)