KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 妊娠中,自然破裂を契機に発見された腎血管筋脂肪腫 岡, 大三; 水谷, 修太郎; 高尾, 徹也; 井上, 均; 西村, 健作; 三 好, 進 泌尿器科紀要 (1999), 45(6): 423-425 1999-06 http://hdl.handle.net/2433/114061 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 泌 尿 紀 要45:423-425,1999 423 妊娠 中,自 然破裂 を契機 に発見 された 腎血管筋脂肪腫 大阪労災病院泌尿 器科(部 長:三 好 岡 大 三,水 谷 修 太 郎,高 井上 SPONTANEOUS 均,西 村 RUPTURE IN OF PREGNANCY 健 作,三 尾 徹也 好 進 A RENAL : A CASE 進) ANGIOMYOLIPOMA REPORT Daizo OKA, Shutaro MIZUTANI,Tetsuya TAKAO, Hitoshi INOUE, Kensaku NISHIMURA and Susumu MIYOSHI From the Department of Urology, Osaka Rosai Hospital A 32-year-old woman in the 36th week of pregnancy was admitted to obstetrics with a complaint of left flank pain. Magnetic resonance imaging demonstrated a left perinephric hematoma before the cesarean section. Spontaneous rupture of renal angiomyolipoma was suspected by computed tomographic scan and renal angiography after the cesarean section. We attempted partial nephrectomy, but performed nephrectomy because of perinephric adhesion. This is the l lth case of spontaneous rupture of renal angiomyolipoma during pregnancy in the Japanese literature. (Acta Urol. Jpn. 45: 423-425, 1999) Key words : Angiomyolipoma, Spontaneous rupture, Pregnancy 緒 節 性 硬 化 症 を思 わ せ る 皮 脂 腺 腫 は 認 め ら れ な か っ た 。 言 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 は,腎 入 院 前 検 査 所 見:11月25日:RBC356×104/mm3, に 発 生 す る 良性 腫 瘍 の1つ で,近 年 の 画 像 診 断 技 術 の 向上 に よ り術 前 診 断 が 可 能 HblO.7g/dl,Ht30.4%. 入 院 時 検 査 所 見:12月4日:血 液 検 査;RBC268 とな り,保 存 的 治 療 が 主 流 と な っ て きて い る1'2).し ×104/mm3,Hb7.8g/dl,Ht23.1%,WBC か し,破 裂 に よ り発 見 され る こ と もあ り,そ の際 は診 lO,800/mm3,Pltl5.5×104/mm3生 断 に苦慮 す る こ とが あ る.今 回,わ れ わ れ は妊 娠36週 1,2681U/1,BUN7mg/dl,CrO.8mg/dl,CRP に 自 然 破 裂 を きた し発 見 さ れ たAMLを l2,5mg/dl.検 経 験 した の で 若 干 の 文 献 的 考 察 を加 えて 報 告 す る. 症 患 者:32歳,女 転 科 時 検 査 所 見:12月9日RBC230×104/mm3, 例 27.6×IO4/mm3 画 像 検 査 所 見:帝 性 腎 実 質 とGerota筋 経 妊1回 経 産.31歳,亜 血(一),RBC<1/HPF. Hb6.7g/dl,Htl9.8%,WBC6,400/mm3,Plt 主訴:左 腰 背 部 痛 既 往 歴:1回 尿;潜 急 性 甲状 腺 腎 上 極 に5×6cm大 low,一 炎.て ん か ん ・知 能 障 害等 な し。 王 切 開 前 に 施 行 さ れ たMRIで 左 膜 の 間 に 血 腫 の 貯 留 が 疑 わ れ,左 のTl強 調 像 で 腎 実 質 に比 べ 部iso∼highintensityareaを 家 族 歴:特 記 す べ き こ とな し 位 はT2強 現 病 歴:1997年Il月 中 頃 よ り左 腰 背 部 痛 を繰 り返 す して お り,腎 痛 増 強 の た め 当 院 産科 受 診.尿 娩 後 施 行 し た 腹 部 造 影CTで も放 置.12月1日,腰 化 学;LDH 認 め た.同 部 調 像 で はIow・ 一'highの 不 均 一 な 信 号 を 呈 腫 瘍 の 自 然 破 裂 が 疑 わ れ た(Fig.1).分 も,腎 上 極 に内部不 均 路 結 石 症 疑 い に て鎮 痛 剤 処 方 され帰 宅.12月3日,再 一 な 腫 瘤 を認 め た .腫 瘤 の 辺 縁 は 一 部 連 続 性 を 欠 い て 度 腰 痛 増 強 し産 科 に緊 急 入 院 とな った.鎮 痛 剤使 用 も お り,こ 腰 背 部 痛 軽 減 せ ず,貧 血 の進 行 を認 め た た め12月9日 た(Fig.2).静 (妊娠37週4日),MRI施 側 水 尿 管 を認 め る の み で,逆 れ,当 科 紹 介.同 な った 。 なお,娩 行 し,左 腎 周 囲 血腫 を疑 わ 日帝 王 切 開 男 児 娩 出 後,転 科と 出後 腰 背 部 痛 は軽 減 し,貧 血 は輸 血 転 科 時 現 症:血 圧130/72mmHg,脈 拍72回 整.結 腫 瘍 の 破 裂 と判 断 し 脈 性 腎 孟 造 影 で は 軽 度 の 腎 杯 拡 張 と両 行 性 腎 孟 造 影 で は,腎 外 へ の 造 影 剤 の 流 出 を 認 め な か っ た.腎 孟 血 管 造 影 で, 腫 瘤 はhypervascularで,microaneurysmを い,腫 に よ り改 善 され て い た. の 周 囲 に 血 腫 を認 め,腎 数個 伴 瘤 の 中 心 か ら 下 部 に か け てavascularareaを 認 め た(Fig,3).ま た 腹 部 超 音 波 検 査 で は,高 エ コー 424 泌 尿 紀 要45巻6号1999年 '}㌦ 鯵 調 謬. Fig.1. 燈 MRI(Tl-weighted)showsaleftrenal tumor. ,鯉 Fig.4.Macroscopicappearanceofcutfaceof thetumorintheupperpoleofthe 紬鱒 kidney 麟 澱 的 に て1997年12月24日 手 術 施 行 した. 手 術 所 見=腎 周 囲 血 腫 は一 塊 とな って お り,特 に腎 門部 で は周 辺 組 織 と強 固 に癒 着 して い た.こ の た め部 論 墜一 か … 鶏 一 Fig,2. 圃 EnhancedCTshowstherenaltumor 分 切 除 は不 可 能 と判 断,左 腎 摘 除術 を施 行 した.腫 瘍 の大 き さ は5×5×6cm.腫 瘍 は被 膜 に お お わ れ て い たが,一 部 断 裂 を認 め,腫 瘍 内 部 に は 出血 壊 死 を認 め た(Fig.4). andarenalhematoma. 病 理 組 織 所 見:分 化 した平 滑 筋 細 胞 と血 管 の増 生 に 混 じって 少 ない なが ら も脂 肪 細 胞 を認 め,腎 血 管 筋 脂 豊 亀 肪 腫 と診 断 され た. 術 後経 過:1998年1月10日 退 院 し,術 後 経 過 良好 で あ る. 考 察 本 邦 で 妊 娠 中 に 自然 破 裂 に よ り発 見 され た 腎血 管 筋 脂 肪 腫(renalangiomyolipoma=以 下AML)は,わ れ わ れ が 調 べ え た か ぎ り本 症 例 をふ くめll例 で あ っ た3--5)(Tablel).こ の う ち3例 は 腫 瘍 内 出血 で 腫 瘍 被 膜 の破 裂 を認 め な い が,い ず れ も急性 腹 症 な どの 臨 、 ヤ 床 症 状 を きた して お り,自 然破 裂 に含 め た.こ れ は腫 瘍 内血 管 が破 裂 した後,腫 瘍被 膜 の伸 展 性 に よ り腫 瘍 内 出 血 に 留 ま るか,被 膜破 裂 に至 る もの と考 え られ た た め で あ る. Fig.3. Leftrenalangiographyshowshypervascularityandmicroaneurysm. AML自 然 破 裂 の要 因 と して,腎 内圧 の 上 昇,菲 薄 化 した 腎 孟粘 膜 の ビ ラ ン,外 力 の 作 用 が あ げ られ て お り6),特 に妊 娠 に合 併 して 生 じた際 は,循 環 血 液 量 の 域 を示 す 腫 瘤 は認 め な か っ た. 以 上 よ り,左 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 の 自然破 裂 が 最 も疑 わ れ た が,い ず れ の画 像 検 査 にお いて も脂 肪 成 分 が 乏 し く,腎 細 胞 癌 を否 定 しえ な い こ とか ら左 腎 部 分切 除 目 増 加,子 宮 に よ る圧 迫,血 圧 上 昇,妊 娠 で 増 加 す るエ ス トロ ジ ェ ンの 平 滑 筋 成 分 増 殖 作 用 に よ る易 破 裂 性 も 考 え られ て い る7). 11例 中3例 は術 前 にAMLと 診 断 さ れ,そ の うち 岡,ほ か:腎 血 管 筋 脂 肪 腫 自然 破 裂 Table1. 主 訴 破裂形態 出 血 性 シ ョック 術前診 断 居 ら19813629 側 腹 部 痛,下 腹 部 痛,貧 血 被膜破裂 2前 田 ら19863127 下腹 部痛,背 痛,貧 血 腫瘍 内出血 AML疑 3梅 原ら 夏98728 28 側 腹 部痛,血 尿 腫瘍 内出血 4秋 ら 198925 25 側 腹 部 痛,貧 血 21 部 5日 比ら 側 腹 部痛 6青 江 ら19903535 鹸 鞭 7土 井 ら19912813 側 腹 部痛,腫 瘤 鼎 欝 療 帝王切開 経 過 観 察 後 分 娩,経 過 観 察 正常分娩 AML 経 過 観 察 後 分 娩,腎 摘 除 術 分娩 被膜破 裂 AML 腎摘除術 人工中絶 被膜破 裂+ 卵巣嚢腫茎捻 転 腎摘除術 (記載 な し) 虫垂炎 虫 垂 切 除 術,後 術 蝋 鵬 内出血 被膜 破 裂 舶,被 膜畷 左 上側腹 部痛 い AML疑 い 1.常f立 月 台盤 早 期 剥 離, 2.急 性 膵 炎 ・ 人工 中絶 帝 王切 開 199431 28 腰 背部痛 被膜破裂 AML 10千 葉 ら 199635 38 蠣 鞭 旺橘 被膜破裂 胎児仮死 腎摘 除術 11自 験例 199832 36 腰 背 部痛,貧 血 被膜破裂 AML疑 帝 王 切 開,後 を除 き残 りの9例 は すべ て 腎摘 除術 が 施 行 され 誘発分娩 い て 発 表 した.稿 本 来,AML自 文 1)佐 薙 鉄 也,玉 4)木 結 下 博 之,池 本 論 文 の要 旨 は,第163回 日本 泌 尿 器科 学 会 関西 地 方 会 に 武,ほ か:妊 娠 に合 。 産 と 婦60:744- 上 元 保,伊 東 史 雄,ほ か:自 然破裂 尿 器外 科 葉 裕,金 城 盛 吉,田 村 是 六,ほ か:妊 娠38週 に 急 性 腹 症 を 呈 し た 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 破 裂 の1例. 道 南 医 会 誌31:100-103,1996 6)BrunceAWandAwadSA:Spontaneousruptureof thekidneyinpregnancy.Jurol95:5,1966 7)螺 良 義 彦,高 て.日 島 文 男:腎 臓 平 滑 筋 腫 の発 生 につ い 病 理 会 誌41:139-140,1952 内 裕 満,野 田 剛,国 枝 を き た し た 腎 細 胞 癌 の1例.西 語 肪 腫 につ い て,若 干 の 文 献 的 考 察 を加 えて 報 告 した. タ 7:701-704,1994 5)千 8)井 妊 娠36週 に 自然 破 裂 を契 機 に発 見 され た腎 血 管 筋 脂 口 を き た し た 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 の1例.泌 の 炎症 や癒 着 の た め腎 摘 除 術 に変 更 せ ざ る を得 な い場 分 な検 討 が 必 要 と思 わ れ る. か:エ 748,1993 だ し, 合 が 多 く,診 断 お よび治 療 方 法,治 療 時 期 につ い て十 江 裕 昭,ほ 日 泌 尿58:ll21-ll23,1996 川 晶 子,山 併 し た 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 の1例 かし 本症 例 の よ うに腎 保 存 手 術 を予 定 して い て も,腎 周 囲 田 幸 志 郎,津 自然 破 裂 の1例.西 3)草 (23,33歳)8)の 症 例 も認 め られ,完 全 に 悪 性 を否 定 し 得 な い場 合 は手 術 を選 択 す べ きで あ ろ う9)た 然破裂 ノー ル に よ る 動 脈 塞 栓 術 を 行 っ た 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 自然破 裂 なが ら,腎 細 胞 癌 の 自然 破 裂 報 告 例 で は妊 娠 可能 女 子 か:自 尿 器 外 科3:997-999,1990 野 正 彦,前 を きたす 疾患 と して は,腎 腫 瘍,血 管 病 変,感 染,結 腎 自然 破 裂 を きた した 悪性 疾 患 を認 め な い8)し 藤 和 彦,ほ 例.泌 2)原 ン トゲ ン検 査 が 制 限 さ れ,発 症 早 期 で は子 宮 病 変 との 石 等 が 考 え られ るが,こ れ まで の 報 告 で は,妊 娠 中 に 崎 千 尋,佐 部 分 切 除 術 に 成 功 し た 腎 血 管 筋 脂 肪 腫 の1 し,妊 娠 中 に 自然 破 裂 を契 機 に発 見 され る症 例 は,レ め悪 性 腫 瘍 との 鑑 別 が 難 しい こ とが 多 い.腎 野 克 行,川 献 後,腎 然 破 裂 に対 して は,腎 温 存 手術Dや 鑑 別 が 困 難 で あ る.ま た検 査 が 施 行 され て も出血 の た 帝王切 開 日腎摘 除術 医 学 部 泌 尿 器 科 学教 室奥 山 明彦 教 授 に深 謝 い た します が,妊 娠13週 と21週 に発 見 され た2例 で 人工 妊 娠 中絶 選 択 的腫 瘍血 管 塞 栓 術2)が 望 ま しい と思 わ れ る.し か 帝王切 開 を終 え る に あ た り,御 校 閲 を賜 っ た大 阪大 学 て い た.手 術 施 行 時 期 は す べ て 胎 児 娩 出 後 で あ っ た が行 わ れ て い た. 正常分娩 緊 急 帝 王 切 開術.27日 後 開 腹 ドレナ ー ジ.分 娩 後 107日 目,腎 ・副 腎 ・脾 臓 ・膵 尾 部 切 除術 田ら 1例 が 腎 温存 術 を施行 され て い た.し か し,経 過 観 察 日腎 摘 除 腎 摘 除術 9岡 の1例 胎児 緊急 開腹,腫 瘍 血 管 処 理 後 日,腎 摘 除 術 1.陣 痛 開始 後, 薙 ら19932638 治 ・ 騰 縫 捻孟 1福 8草 425 Casesofspontaneousruptureofangiomyolipomainpregnancy ・・.結 者 摯告 藷 雛 198921 妊娠 学,ほ か:自 然破裂 日 泌 尿60:469- 472,1998 9)井 上 純 夫,仙 波 大 右,蛇 腎 破 裂 の1例.日 沢 晶,ほ か:"特 発 性" 外 会 誌96:116-120,1995 (ReceivedonDecember9
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