「塩」の力 ~小さな粒が作り出す大きな世界~ 岐阜市立青山中学校 1年 1.研究の動機 山上 颯斗 きることが分かった。 「塩」は、夏場には熱中症対策として水分補給だ けではなく、塩分補給をして体を健康に保つ。その 一方、減塩醤油や減塩タイプの食品も出回っている。 一体「塩」は我々の体にどのような影響を及ぼすの (3) 〈実験1-1〉塩・氷水と水温の関係を調べる 氷水に塩を入れたボールと氷水のボールにそれぞ れ氷を入れて、氷の融ける様子を観察した。 か、一体どのような特徴があるのか疑問を抱き、調 べてみることとした。 2.研究の内容 (1) 〈実験0-1〉塩の結晶の違いを調べる 塩の結晶は立方体だと知っていたが、いろいろな 塩の結晶を調べてみた。 結晶ができるときの条件の違いによって結晶は 様々な形になる。 氷水に塩を入れた氷はなかなか溶けなかった。そ (2) 〈実験0-2〉塩が溶ける限度を調べる 精製水の量を増やすとそれに伴って塩が溶ける量 がどのように変化するのかを調べた。 れぞれの水温の変化を調べると、氷水に塩を入れた 方が水温が下がり、氷を融かすのに時間がかかった ことが分かった。塩は氷水の水温を下げることが分 かった。 (4) 〈実験1-2〉塩・氷と水温の関係を調べる 直接塩をかけた氷と何もしない氷を観察すること とした。すると、氷に塩をかけた方が早く融けた。 しかし、氷水の水温を測ると氷に塩をかけた方が低 かった。塩は氷を融かす性質があるのではなく、塩 が混ざると水が氷になる温度を下げるので、氷は氷 のままでいられなくなり、水になっていくことが分 かった。 (5) 〈実験2-1〉塩は卵黄を加工するのか調べる 動物性食品の代表として卵黄 を利用した。常温で卵黄と、塩 精製水の量(X)と溶ける塩の量(Y)との関係 を比例式で表すと、Y=0.26Xで表すことがで で埋めた卵黄を準備し、8時間 ごとに卵黄の変化を観察した。 今までは、水に浮くかどうかは物の重さで決まる と思っていた。しかし、塩を溶かすことで物を浮か しやすくすることが確認できた。また、塩だけでな く他の物質を水に溶かしても物を浮かす力が大きく 常温で置いた物は時間が経つと腐り、ドロドロに なることが分かった。 なった。一方、塩を入れた卵黄は水分を引き出され てかたまり、腐った様子を観察することはできなか った。塩は、食べ物を保存するのに適していること が分かった。 (9) 〈実験5〉塩と電気の関係を調べる 精製水に塩を溶かした食塩水、塩のみ、精製水の みに、それぞれ直列つなぎの回路を作った。豆電球 がつけば電気を通すことが分かる。以下のような実 (6) 〈実験2-2〉塩は野菜を加工するか調べる ピーマン、ナス、キュウリに塩を一つまみふりか 験結果が得られた。 (精製水) (塩) (食塩水) け、塩をかけると植物性食品はどのように変化する のかを調べた。すると、卵黄のときと同様に塩をふ りかけた野菜は水分が引き出され、漬物と同様の状 態になった。本で調べた結果、浸透圧の影響で食品 の水分が引き出され、食品の保存に適する方法であ ることが分かった。 以上の結果から、塩の濃度が高ければ高いほど電 球が明るくつくことがわかった。本で調べると、塩 がイオンになること、気体が発生することなど、様々 (7) 〈実験3〉塩と花の関係を調べる な現象が起こっていることが分かった。 60ml の精製水に、それぞれ0、1、4、8、1 2、16g の塩を溶かし、その中に同じ様な花を入 れて、5日間同じ時間に花の観察を行った。 3.研究のまとめ 塩の研究から以下のことが分かった。 ① 食品の保存に適していること。凍結防止剤として 使われること。 ② 浸透圧によって漬物ができあがること。 ③ 湿り気(水)を吸ったりはいたりすること。 ④ 電解質として体中の神経へ脳の命令を伝達する こと。 ⑤ 比重が 2.16 であること。 塩という小さな粒が、私たちの生活のあらゆる場 塩をより多く入れた水に挿した花の方が早く枯れ 面で重要な働きをしていることが分かった。塩分補 た。塩が多く含まれている水は植物に害を与えるこ 給や減塩など、塩は適度に私たちの体の中で必要な とが分かった。本で調べると塩による浸透圧の変化 物質であることが分かった。 により、植物のからだの様々な部分に悪影響を与え ていることが分かった。 (指導教諭 青井宏樹) 4.審査表 「健康維持のための減塩商品」と「熱中症対策の (8) 〈実験4〉塩と物を浮かす力を調べる 塩を36g 溶かした水と18g を溶かした水どち らにも卵を入れて浮き沈みを調べた。 ための塩分補給」。この二つに矛盾を感じ、塩の特徴 や性質を調べる活動を通して、塩は人体にどのよう な影響をもたらしているのか追究している。塩の結 晶化、溶解度などの基本的な性質に始まり、食塩水 を与えた植物は枯れてしまうことや、塩が食品の保 存に利用されていることなどを調べていくうち、浸 透圧が生命の活動に影響を与えていることを知る。 生命と塩の関係性を発見する研究となっている。
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