糸藤,安斎「フェイディングが及ぼす機械的性質への影響」

第162回(2013.5.甲府)
(54)
フェイディングが及ぼす機械的性質への影響
㈱今西製作所○滝本哲次,今西寛文
東北大学ACSセンタ一 糸藤奉書,安斎浩一
1.はじめに
① FC300は,機械的性質の低下が大きい.
鋳鉄では,溶湯処理後の時間経過に伴うMgや接種処理
効果のフェイディングにより,黒鉛組織の悪化やチルが発
生する様になる.このため,溶湯処理後,可能な限り短時間
② FC300は,二次接種要領の検討を要する.
③ FCD450は,機械的性質には影響が少ない.注湯流
二次接種は,ミクロ組織には改善効果がある.
1
0
8
そこで,本研究では,実操業レベルのフェイディング実験
6
』
4
を実施し,現場作業の指針にすること目的とした.
2
0
2.実験内容及び方法
3 6 9 12 15 18
材質は,FC300,FCD450の2種類とした.元湯は,lt高
接種処理後の経過時間,分
周波誘導炉を用いて800kgを溶製し,1t取鍋に置き注ぎ法
図1抗折試験結果
にて,FC300では接種,FCD450では球状化処理及び接種
0
0
0
0
0
0
5502B号供試材を鋳込んだ.
0
FC300ではJIS Z2203C号供試材,FCD450ではJIS G
0
溶湯処理直後を0分とし,3分毎に,カントバック試料,ク
サビ型チル試験片,CEカップにサンプリングした.更に
NEu\Z粛潜騒一m
を同時に行った.
0
また,両材質共に,フェイディングの途中で注湯流二次
3 6 9 12 15
接種を実施した.FC300では接種後9分,FCD450では接
種後18分とした.
FC300は,抗折試験,引張試験,硬度試験及び超音波伝
能であった.フェイディングに伴う成分変化は,認められな
かった.チル長は,接種後6分までは4∼5mmで,9分から
21分までは6∼7mmであった.機械的性質は,フェイディ
ングにより低下した.抗折力とたわみの低下率は,約20%と
約30%であった(図1).引張強さの低下率は,約35%で
あった(図2).二次接種は,殆ど効果がなかった.溶湯温度
の低下により,接種剤が溶込まなかったためと思われる.
郁 5。。刷 3。。2。。1。。。
3.実験結果
FC300場合,接種後の鋳込みは,温度的に21分まで可
図2FC300の引張試験結果
N∈∈\Z.乃悪鵠一m\雫逼ボZ.〇
播速度測定を行った.FCD450は,抗折試験を除き,同様
の試験と測定を行った.
18 21
接種処理後の経過時間,分
二次接種
卜己忘砲手\、\
●_
\\\\つ
jlj
\、\\、 rl。山科11
■−●
\\\\Hi
】 】
声 A
J ′鬼
】
′/−.▼1∃
伸び よ
3 6 9 12 15
18
‘++弓
21 24 27 30 33
球状化・接種処理後の経過時間,分
図3 FCD450の引張試験結果
FCD450の場合,接種後の鋳込みは,温度的に33分ま
で可能であった.フェイディングに伴う成分変化は,FC300
と同様に認められなかった.チル長は,フェイディングに伴
う変化が殆どなく,10∼13mであった.引張粋性も同様に,
殆ど変化がなかった(図3).二次接種は,引張特性及びミク
ロ組織共に効果が認められた(図3,4).
■
●
4.まとめ
18分後(二次接種)
実操業レベルのフェイディング実験により,下記の知見が
得られた.
− 54 −
図4二次接種前後のミクロ組織(3%ナイタール腐食)
日日.碕£吏
かった.
2
一●−たわみl
1
●
1
−抗折力l
●
4
内に鋳込む必要がある.これまで,研究室レベルでの知見
は示されていたものの,実操業の指針となるものが殆どな