「心」スクリプト分析 ー年齢別比較ー 環境2年 服部憲明 総合2年 相川真利 データの収集方法 データソース 朝日新聞の投書欄「声」 ⇒「心」を含むスクリプト総数約3万2千件 システム上約1万2千件入手 データの絞りこみ 「心」を含む熟語(例:中心)、対象外の助詞 を含むスクリプトを削除 → 約8千件 登場回数5回以下の動詞を削除 → 約4千件 アプローチ①:「精神」との比較 構成する意味図式が「心」と同じ方向を向いてい る? ⇒比較対象語としての問題 投書での使われ方においては 「心」と意味の共通性が少なかった (「精神病」「ボランティア精神」などの 複合語の多用) アプローチ②:複数の語との比較 比較対象語としての「魂」「心持ち」「気持ち」 ⇒「心」の一部としての意味を確実に持ち得る しかし、家族の構成員が「父」「母」「子」と いうように分けられるのに対し、 「心」の構成要素は明確ではない。 また、複数の語との比較のしかたは難しく、 実際今回はデータを集めるところで 断念し、アプローチを変えた。 アプローチ③:他の媒体との比較 視点を変え、集めたデータを他の媒体の中のス クリプトと比較することにより、投書の特性を浮か び上がらせようとした 身近にデータが沢山ある・「心」が沢山含まれる などの点から、CDの歌詞を収集 ⇒データの数などは適当だったものの、 歌の特性などを考慮すると、 分析・比較方法に問題あり ファイナルアプローチ:年齢別比較 4千件のデータから投稿者の年齢を抽出、 10歳区切りで7つのグループに割り振る 助詞を「は・が」「を」に絞り、2度以上使用された 動詞を各グループについて集計 若年層・老年層それぞれに多く見られる動詞と、 年齢に関係なく使用される動詞、計3つに分け、 それぞれの特徴を検証 助詞「は」「が」の場合 1(222) なる 痛む ある 洗われる 育つ 和む 伝わる 躍る 動く 通じる 震える 2(179) 3(406) 4(394) 5(493) 6(526) 7(375) 8 10 23 15 26 9 19 5 6 25 22 25 21 16 4 2 14 2 10 14 10 2 2 3 3 2 4 7 3 3 2 3 9 13 19 19 2 2 6 4 5 3 3 3 3 2 3 3 最上段は年齢グループ、括弧内は合計件数 助詞「は」「が」の考察 「心は(が)○○」 → 心自体が変化 ⇒感情の変化を示す場合が多い 老年層の方が同じような意味を表す 動詞の種類が豊富 (表参照) ⇒ 語彙の差 助詞「を」の場合 持つ する 込める 打たれる 和ませる 傷つける 育てる 痛める 砕く 打つ 踏みにじむ 満たす 養う よぎる 寄せる 1 14 9 7 5 4 3 3 2 2 13 11 7 4 3 2 6 5 3 16 27 8 3 5 6 10 9 3 4 14 14 13 4 3 5 4 18 5 3 2 5 10 18 20 6 8 3 4 12 3 5 2 2 2 4 3 6 15 26 27 18 8 8 2 15 2 8 7 10 17 16 11 10 2 6 9 2 8 2 2 2 4 2 最上段は年齢グループ 助詞「を」の考察 「心を○○」 → 受身 ⇒場所もしくはモノとしての「心」に 外部から変化が加えられる 各年齢層に共通して使用される動詞が多く ⇒動詞の種類数を左右するのは 語彙及び、話題の豊富さ 全体を通しての考察 一般的「心が満たされる」、老年層「心を満たす」 ⇒視点の違い ・・・ 年齢によるもの? 充分な根拠が得られず、 局地的な傾向にすぎないと判断 結論 色々な仮説を立てたものの、 いずれも充分な根拠を得ることができず、 動詞からみた「心」の使われ方は 年齢層により多少違うが、 それは 「心」を意味づける潜在的構造の違い によるものだと 結論づけるまでには至らなかった。 反省 データの多さ故に、その整理に戸惑い、 研究方針が何度も揺らいでしまった データを絞り込む過程で偏りが生じてしまった システムの理解不足により手作業をせざるを 得ず、分析にあてるべき貴重な時間を データ整理に費やしてしまった 比較対象語を用いた分析に対し、年齢別の分析 には前例がなく、無我夢中にもがいてもなお五里 霧中であった。 「心」スクリプト分析の展望 焦点の絞り方 ⇒例:「心が○○なる」というスクリプトにおける 形容詞の使用に着目する 他の媒体との比較として、歌詞との比較を試み たが、媒体の選択に多少なりとも問題があった。 しかしながら、この試み自体は配慮次第では、大 いに有効な分析方法になり得ると思われる。 「心」スクリプト分析の展望 (続) 今回の年齢別分析では、結局は労力に見合った 明瞭な結論は出なかった。 しかし、同語について 従来のスクリプト分析(比較対象語を用いた分析) を行い、同語の意味図式を見出した上で、 年齢別分析を行えば視点が定めやすく、 結果も出やすいのかもしれない
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