環境経済論 第7回目 ヘドニック・アプローチ ヘドニック・アプローチ • Court(米国自動車工業会)による自動車価 格変化の研究、1939 – 自動車価格とさまざまな特性(馬力、長さなど)と の数量的関係 – 財の諸特性が快楽(hedonic pleasure)を生み出 すと考える – ヘドニック要因で説明される価格(又はその部 分)をヘドニック価格という 自動車のヘドニック価格 自動車価格 1馬力あたり1万円 など 乗車定員 馬力 装飾 最高速度 騒音 不動産のヘドニック価格 地価 都心への 距離 駅・バス停 までの徒 歩時間 環境 学区 ここに着目 環境と地価の関係 (単相関モデルの例) 物件 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 騒音 ホンA 41 57 66 61 40 67 57 52 48 56 地価 万円/m 2 24.8 27.0 19.9 18.4 28.0 15.3 19.4 26.4 28.4 18.2 環境と地価の関係 (単相関モデルの例) • 騒音レベルと地価をプロットしてみる – 騒音1単位の差がどれくらい地価に影 響するか – 散らばりはどうか 環境と地価の関係 (単相関モデルの例) 30.0 地価(万円) 28.0 26.0 24.0 22.0 20.0 18.0 16.0 14.0 12.0 10.0 35 45 55 騒音(ホンA) 65 ヘドニックモデル(直線) ヘドニックモデル y = ax + b 地価y :説明変数(従属変数) 騒音x :被説明変数(独立変数) 回帰分析(regression analysis) • 直線の当てはめと適合度のチェック • 最小二乗法(least square method) : 各点から直線におろした「足」の長さの二乗 和が最小になるように直線を決める • 注目する統計的変数 – 係数(a、b)の大きさ – 相関係数 – 係数の有意性 係数の大きさ 係数a(絶対値)の大 きさ 小さい 大きい 地価への影響力 小さい 大きい 上記の例ではa = ‐0.40 b = 44.4 騒音が1デシベル上がると地価は 4000円下落する 散らばり=モデルの説明力 相関係数 R2 強い相関 弱い相関 相関なし R2=0.8以上 R2=0.3~0.6 R2=0.3以下 この例ではR=0.76、R2=0.58なので騒音は地価の 全変動の58%を説明していると考えられる 環境と地価の関係 (重相関モデル) • 地価に影響する複数の要因を考慮したモデ ルを考える p = f (A, S, E,….) p A S E : : : : 地価(万円/m2) 都心までの距離(分) 学区 環境 環境と地価の関係 (重相関ヘドニックモデルの例) 物件 地価 都心までの 所要時間 万円/m 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 55.5 34.0 50.0 50.0 58.0 67.5 43.5 59.5 23.5 44.5 分 55 80 40 50 30 35 75 45 95 55 環境 良い=1 悪い=0 1 0 0 1 0 1 1 1 0 0 環境と地価の関係 (重相関ヘドニックモデル) 80 地価(円/m2) 70 60 50 40 30 20 10 0 0 20 40 60 都心までの所要時間(分) 80 100 環境と地価の関係 (重相関ヘドニックモデルの例) ヘドニックモデル: p = aA + bE +c 回帰分析結果: a = -0.51 b = 9.11 c = 72.6 環境Eが1の時と0の時では地価に9.11の差 即ち、環境がよいか悪いかで地価に91,100円 の差が生じている 環境と地価の関係 (重相関ヘドニックモデルの例) X 値 1 観測値グラフ 80 70 60 Y 50 40 30 20 10 0 0 20 40 60 X 値1 80 100 重相関ヘドニックモデルの注意点 • 多重共線性(multi-collinearity) • 説明変数同士に相関関係がある場合、係数のゆが みが発生する • 例えばこの例で都心までの距離と環境に非常に強 い相関があった場合、環境に関わる係数がマイナス になることがある(つまり一見環境が悪いほど地価 が高いと見える) • 対策: 説明変数同士の相関をチェック 相関の強いものはひとつで代表させる 究極的にはモデルはひとかたまりで見るべき
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