2)個人的倫理と社会的倫理

コミュニケーション ダイナミクス
担当者
総合政策学部
深谷昌弘
第II部
新しい言語・コミュニケーション論
人間社会の諸現象は意味の社会的編成と
深く関わっている。ここでは、意味の社会的ダ
イナミズムを取り扱うためにSFCで開発されて
きた言語・コミュニケーション論(意味づけ論)を
概説する。
(1)会話モデル
(2)創造と迷走:意味の不確定性
(3)会話を支える意味の共有感覚:
意味づけにおける共有の秩序性
新しい言語・コミュニケーション論
の開発
意味の社会的編成に直接関わっている
社会的営みが
人間のコミュニケーションです
コミュニケーションダイナミクスは
意味の社会的ダイナミズムを取り扱う
言語コミュニケーション論を展開します
新しい言語・コミュニケーション論
「意味づけ論」
(深谷・田中)
(1)
会話モデル
会話(図)
意味のコード表モデルの問題点
encoding
コトバ
decoding
コード表
decoding
コード表
コトバ
encoding
共有のラング(コード表)による意味の確定
という考えの問題点
「刑務所」「おはよう」:意味の不確定性に加え
以下のような一連の疑問が発生する
どうやって新しい意味は創造されうるのか?
理解と応答は独立の営みだろうか?
意味の齟齬はどうやって調整できるのか?
意味づけ論の会話モデル
コトバ
Aの情況編成
Bの情況編成
記憶連鎖の引き込み合い
記憶連鎖の引き込み合い
コトバからの事態構成
コトバからの事態構成
コトバへの事態構成
コトバへの事態構成
理解の相・応答の相
理解の相・応答の相
コトバ
意味づけ論・会話モデルの要点
情況編成(状況の意味づけ)
情況は理解の相と応答の相の融合体として
編成される
記憶連鎖の引き込み合い
意味づけは連鎖の引き込み合いによる
記憶の編集によってなされる
コトバ
コトバは連鎖の引き込み合いを整序し
事態として構成する
記憶連鎖の引き込み合い
記憶
ここでは現在および未来の振る舞いを
規定する生体に刻印された経験の痕跡のこと
ニューロンネットワーク
ニューロン(約150億個)は一つについて数千の
シナプス結合で他のニューロンと連絡しあって
おり、互いの作動を活性化しあったり抑制し
あったりしている。シナプス結合や伝達物質
の受け渡し機構が経験を介して改編されて
いく(改編といっても長期記憶(痕跡)は消滅
しない)。
記憶連鎖
記憶はニューロン内にではなくニューロン
同士の連鎖の在り方に蓄えられている
ニューロンの連鎖の集合が記憶の潜勢態で
あり、連鎖の活性化で記憶が想起される
引き込み合い
ニューロン活動の相互的な増幅・抑制関係によって
記憶連鎖は互いに引き込み合う
それによって、しなやかな記憶の分解・加工・統合
がなされ、意味として編集される
記憶連鎖の改編
意味づけの経験は連鎖を改編する
記憶連鎖の引き込み合い
この連鎖の相互干渉の積極的利用が
柔軟な情況編成およびその中での
個々のモノ・コトの意味づけを可能に
しているのです
(「おはよう」、「カリブーのステーキ」、「ケイムショ」)
この見解は脳科学とも整合的です
今後、認知科学とのさらなる協働も
期待されます
(局在説・偏在説、フレーム問題:消極的無視)
意味づけが
連鎖の引き込み合いによる
記憶の編集作業だとすれば
「意味の不確定性」
が不可避となり
ダブル・コンティンジェンシー問題や
会話の成立問題は改めて
説明されるべき問題となります
意味づけ論の会話モデル
コトバ
Aの情況編成
Bの情況編成
記憶連鎖の引き込み合い
記憶連鎖の引き込み合い
コトバからの事態構成
コトバからの事態構成
コトバへの事態構成
コトバへの事態構成
理解の相・応答の相
理解の相・応答の相
コトバ
意味の不確定性
(1)情況依存性(多義性)
(2)履歴変容性(経験依存)
(3)不可知性(暗黙知・潜在記憶)
(4)主体間多様性(記憶の差異)
この不確定性によってコトバは共有しても
意味は共有できない!
意味の不確定性と会話の成立問題
コトバの遣り取りは会話を成立させる
ことができるのだろうか?
この問いに対する解答を先取りすれば
コトバの意味は不確定であっても
デタラメではない
会話はそこそこに成立する
ダブル・コンティンジェンシー問題
消滅しない そこそこ回避される