2)個人的倫理と社会的倫理

コミュニケーション ダイナミクス
担当者
総合政策学部
深谷昌弘
第Ⅰ部
ヒューマンコミュニケーションと
社会現象
人間同士のコミュニケーション、つまり、ヒューマンコミュニケーショ
におけるダイナミックな意味の社会的編成可能性が多様性豊かな
文化を地球上に発展させてきた。 しかし、このようなヒューマン
コミニケーションを取り扱うには、情報理論的コミュニケーション論
には限界があることを指摘する。そして、新しい理論の必要性と
その理論が備えるべき条件を明らかにする。
(1)人間の問題解決能力を考える:フレーム問題
(2)社会関係の成立を考える:
ダブルコンティンジェンシー問題
(3)情報理論的コミュニケーション論の限界と新理論の必要性
(1)
ヒトの問題解決能力を考える:
フレーム問題と人間の柔軟な情況編成
情報・意味づけ・行為
(2)
社会関係の成立を考える:
ダブル・コンティンジェンシー問題
(3)
情報理論的コミュニケーション論
の
限界と新理論の必要性
情報理論的コミュニケーション論
意味のコード表モデル
このモデルでは
コトバの交換=意味の交換
です
だがしかし・・・
情報理論的コミュニケーション論と
コトバの意味
モールス信号の記号コード表
プリミティブな生物にとっての信号の意味
ハチ型コミュニケーション
タマホコリカビ
コトバの意味はコード表で確定しているのか?
そうであれば会話の成立は約束されている
その成立を改めて問う必要はない・・だが?
モールス信号の記号コード表
ハチ型コミュニケーション①
ミツバチの尻振りダンス
ハチ型コミュニケーション②
意味の検出と通信
タマホコリカビ
情報理論的コミュニケーション論は
モールス信号の50音への変換
ハチやプリミティブな生物の信号の意味への変換
これらに成功しました
しかしヒューマンコミュニケーションにおける
コトバの「人々にとっての意味」およびその
相互作用にまで拡張可能なのでしょうか?
意味のコード表モデル
encoding
コトバ
decoding
コード表
decoding
コード表
コトバ
encoding
このモデルでは
コトバの交換=意味の交換 である
会話の成立は問題とならない(非問題)
だがそうだろうか?
コトバの意味はコード表で確定するのか?
そうであれば会話の成立は約束されている
その成立を改めて問う必要はない
だが?
ケイムショが担う意味
新しい意味の創造:宇宙船・地球号
「刑務所ってなんですか?」
会話場面で「ケイムショ」が担いうる意味は
あらかじめ確定しているのでしょうか?
コトバの遣り取りの進展を見てみましょう
■人々は「刑務所」を様々に意味づける









犯罪者を隔離・拘禁して処罰するところです
犯罪者を教育し更生させるところです
大切な職場です
賃金の安い家具製作所です
三食・暖房付の冬季リゾートです
犯罪技術伝習所です
小説のネタの源泉です
地価を抑制しているシャクの種です
重要な観光資源です
コトバと意味の結合は固定的・確定的でない
意味の生成・創造
「宇宙船・地球号」
意味のコード表モデルは新しい意味の
誕生・伝播・定着を説明できるのだろうか?
宇宙船・地球号
意味のコード表モデルの問題点
encoding
コトバ
decoding
コード表
decoding
コード表
コトバ
encoding
共有のラング(コード表)による意味の確定
という考えの問題点
「刑務所」「おはよう」:意味の不確定性に加え
以下のような一連の疑問が発生する
どうやって新しい意味は創造されうるのか?
理解と応答は独立の営みだろうか?
意味の齟齬はどうやって調整できるのか?
情報理論的コミュニケーション論
意味のコード表モデルの限界
(1)理解・応答の切断
(2)紛れ・誤解・曲解は例外的エラーとなる
(3)意味の生成・創造を説明できない
結局は人間同士の生きた
コミュニケーション・プロセスを説明しない
(1)理解・応答の切断:ケイムショ
質問の意味づけも応答も情況編成の所産
初期の応答はその人なりの辞書的解答
しだいに、自己の私的視点、多様な他者の
さまざまな情況での視点が導入され、
意味づけが豊かになっていく
理解の相と応答の相の融合体である
情況編成を考慮しない
コード表モデルは両者の関係について
何も言及できない(つまり発信→受信モデル)
(2)ズレ・誤解・曲解は修復できない
もしコード表に誤りがあれば会話は不成立
仮に定型化された応答機構が組み込まれて
いたとしても、コード表にエラーがあれば、質疑・
応答すら成立しない(「ケイムショ」を南極大陸と
思いこんでいる人との会話)
人間に思い違いは珍しくないし、しばしば会話は
迷走し、破綻することもあれば、軌道修正される
こともある
コード表モデルはこうした現象を説明できない
(3)意味の生成・創造を説明できない
意味はそのつど情況内に現出する
刑務所が冬季用リゾートになる
「宇宙船・地球号」が社会にいきわたる
これらの意味は初めから言語の全体系構造
(ラング)の中に存在していたとは考えられない
コード表モデルは会話における意味の進展の
ダイナミズムも社会的な概念形成の
ダイナミズムも説明できない
情報理論的コミュニケーション論は
人間同士の生きた
コミュニケーション・プロセスや
意味の社会的ダイナミズムを
説明しない
われわれは全否定しているわけではない
人々にとっての意味のダイナミズムを
扱うには新理論が必要だと主張する
意味と社会現象との
ダイナミックな関係を捉えるために
「人々にとっての意味」の
社会的ダイナミズムを
取り扱う
新しい言語・コミュニケーション論が
必要です
第II部
新しい言語・コミュニケーション論
へ進む
人間社会の諸現象は意味の社会的編成と
深く関わっている。ここでは、意味の社会的
ダイナミズムを取り扱うためにSFCで開発されて
きた言語・コミュニケーション論(意味づけ論)を
概説する。
第II部
新しい言語・コミュニケーション論
人間社会の諸現象は意味の社会的編成と
深く関わっている。ここでは、意味の社会的ダ
イナミズムを取り扱うためにSFCで開発されて
きた言語・コミュニケーション論(意味づけ論)を
概説する。
(1)会話モデル
(2)創造と迷走:意味の不確定性
(3)会話を支える意味の共有感覚:
意味づけにおける共有の秩序性