日本の高校において 英語の授業は英語で行うのがベストか? 言語応用コース3回 久保井 和 結論 英語の授業をすべて英語で行うことには 反対 しかし、教室の中で英語を 積極的に使うこと自体は否定しない アウトプットの必要性 教室で英語を積極的に使うことは、アウトプットの機会 を増やすことになる *Swain(1995) 豊富なインプットがあっても、言語使用の十分な機会 が無ければ、言語理解と言う意味的操作能力(sematic use)は身についても、正確な文法的操作(syntactic use)能力にはつながらない 英語で考える力が必要? 英語を使う=英語で考える力が必要? 日本語で授業をして英語力は育つのか? *J. Cummins の理論 氷山説:二つの言語は一つの処理システムで機能している 英語で考える力が必要? さらに… 発達相互依存仮説: 第二言語能力の発達は母語の言語能力に依存する 第一言語の能力が発達していれば第二言語を発達させやすい ※言語能力のすべての部分で根っこが共有されている訳ではない ←分析・類推などの認知的要素をあまり必要としない部分 ↓ 日本語で授業をしても、根っこが育てば英語も伸びる! ⇒まずは日本語で、考えるための土台を育てるべき …… ① そもそも何を目指して英語を学ぶか ○文部科学省の示した「グローバル化に対応した英語教育 改革実施計画」(H25.12) ・初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育環境 づくりを進めるため、小学校における英語教育の拡充強化、 中・高等学校における英語教育の高度化など、小・中・高等 学校を通じた英語教育全体の抜本的充実を図る。 ・ 幅広い話題について抽象的な内容を理解できる、英語話 者とある程度流暢にやりとりができる能力を養う ・英語を通じて情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝 えたりするコミュニケーション能力を養う 文部科学省の定義するグローバル人材 整理すると、概ね以下のような要素を必要とする。 要素I:語学力・コミュニケーション能力 要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、 責任感・使命感 要素III:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー (グローバル人材育成推進会議中間まとめより) つまり? ・英語が理解できたらいい? 英語が理解できても、コミュニケーション能力 が無ければうまく使うことはできない *日本語を話せても、話下手な人もいる 人間関係がうまく構築できないこともある ・そもそもコミュニケーション力とは? 語彙や文法などの知識は大前提 + 文脈を読み、相手の気持ちを推測し、 適切な場で適切な言葉を使うことのできる力 =コミュニティの中で自分で考え、実行する力 大きく言えば、生きる力……② 英語の授業で育むべき能力 ①考えるための土台 ②その上で、コミュニティの中で自分で考え、 実行する力 大きく言えば、生きる力 ⇒英語の授業は、他者と積極的に交流する中で、自 分で考え、コミュニケーションする力を磨く場であること が必要 授業モデルの提案 ○コミュニケーションを重視した協働学習 ・日本語で与えられた英語の課題をこなす ・できる限り英語を使う機会にする ・日本語でもいいので、相談したり教え合うことは奨励 ・相互・自己評価と教師によるフィードバック(日本語) 日本語を交えた協同学習の利点 ・生徒同士の関係構築 ・生徒と教師の関係構築 →コミュニケーション能力アップ 円滑で柔軟な教室運営 楽しみながらモチベーションが維持できる *Macaro&Lee(2012) 学習者は英語のみの授業に消極的な態度を示す まとめ 英語の授業をすべて英語で行うことには、反対 コミュニケーション力を育てるために必要なのは ①考えるための土台 ②考え、実行する、生きる力 =コミュニケーション能力 まとめ 日本語を交えた授業では… ・生徒間の関係構築 ・教師との関係構築 →柔軟な教室運営 生徒のモチベーションの維持 ⇒思考の土台と、コミュニティの中で考え、 生きる力を育てる 参考 江利川春雄(2012)『協働学習を取り入れた英語学習のすすめ』大修館書店 重野純 編(2010)『言語とこころ 心理言語の世界を探検する』新曜社 福田由紀(2012)『言語心理学入門 言語力を育てる』培風館 江利川春雄・久保田竜子 学習指導要領の「授業は英語では何が問題か」 「希望の英語教育へ」江利川研究室ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/gibson_erich_man/35111649.html 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/12/1342458.htm 「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」 「グローバル人材の育成について」
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