優秀賞 教わることがたくさんあることに気付かされる。作法や技法はもち ろん、物事の捉え方まで一つひとつ納得する。私たちは今を生きな がら、先人たちが残してくれた独特の世界観を五感で体感している ことがわかった。 聞き、進学することを決意した。 冬、平安女学院大学では裏千家の先生方に御指導していただけると 歴史と共に愛され、守られてきた日本伝統文化「茶道」。私との出 会 い は 大学 の 授業 で あ っ た。大学進学先 で 悩 ん で い た 高校三年 の 「生きる力」には、思考力・判断力・表現力が重要とされる中で、 私にとって茶道の授業は、自分の生き方や考え方、物事の捉え方な 合いたいと考えていた。 学び、落ち着いた厳かな雰囲気を醸し出す茶道を通じて自分と向き 私は、教諭を目指すものとして、生きる力はどの様に育まれるかを 生きる力、茶道 平安女学院大学二年(大阪府) 私は、大学では茶道以外に、子供の教育について学んでいる。子 供の姿や教育について専門的に学ぶことにより、茶道の精神の奥深 さを考える機会がうまれた。 大学に入学してからは毎週、茶道の作法について先生方に手取り 足取りと御指導していただく。手厚く御指導いただきながらも、自 どを見つめ直すことに繋がる大切な機会であった。同時に、子供た 小林 美 咲 分自身の手や足がなかなか思う様に動いてくれない日々が続いた。 ちにも茶道を通して様々なことを感じ取り、学んでほしいと考える なぜなら今、教育の世界では「生きる力」が着目されているから だ。生きる力とは、知・徳・体のバランスのとれた力のことである。 また、代々受け継がれてきた作法は覚えることが多く苦労すること 様になった。自分の身の回りの人や環境と協調・調和し、思いやる たちは、多忙を極めて充実した毎日を過ごしている。しかし、多忙 も少なくはなかった。しかし、私はお稽古を重ねるたびに茶道の世 東京オリンピックの招致活動の中で一躍流行語となり、様々な使 われ方をしている「おもてなし」という言葉。この言葉は、茶道か を極めることより、豊かな心を忘れているのではないか。「生きる 心を未来ある子供たちに持ってほしいと考えるようになっていった。 ら生まれた言葉だと授業で初めて知った。茶道の精神から、「和敬清 力」を育む為にも、まずは、自分を見つめ直し心のゆとりが必要で 界をより多く知りたい、学びたいと茶道についてより関心が高まっ 寂」で示されている他者を思いやり、大切にすることを学ぶことで、 あるのではないかと私は考える。 ていった。 今までの自分自身の生き方を見直すきっかけとなった。 茶道のお道具の取り合わせやしつらえ、季節にあったお菓子から このように私は日を追うごとに、茶道の世界こそ、「生きる力」に 繋がっているのではないかと考えるようになった。現代を生きる私 伝統文化として大切に残され親しまれるものには共感することや、 穏やかな時の流れを感じ、抹茶がのどを通るときの苦味引き立つ味 わいから温かみを感じる豊かな心。それらを素直に受け止められる 人間性。様々な学び取るべき内容が茶道には含まれていることがわ かる。 茶道の授業では和室で正座をする。正座は背筋が自然と伸び、講 堂などの教室では感じられない新鮮な気持ちで授業を迎えられる。 和室で過ごすひとときは、時間に追われて気疲れしている日常生 活の空間とは異なる。また、落ち着いて一つひとつの動作に集中す ることができる空間でもある。そして、物事に集中することで自分 を見つめることができる時間でもあるのだ。 茶道は難しい世界だと捉えてしまう傾向が世の中にはあるかもし れないが、決してそのようなことはなく、また、点て方だけの技術 でもない。点前を通じて和や敬の心、作法を理解しながら、「生きる 力」 、人間形成を図っていくものだと捉え、これからも私はお稽古に 励みたいと考える。 これからも茶道を末永く学び、しっかりとした作法や考え方を身 に付けたいと考えている。茶道を通しての「一期一会」の出会いを 大切にするとともに、先生方に教えていただいた「心」からの豊か なもてなし、 「生きる力」を子供たちに伝えることができる人に私は なりたいと考える。
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