財源についての誤解を解く 2011年6月30日 国家ビジョン研究会シンポジウム 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授 ポイント • • • • ①復興には財政支出が必要:その額は最低 でも16兆円(政府推計)、おそらく20兆円以上 ②復興時の公共投資:乗数効果は通常よりも きわめて大きい:ゼロからの建設 ③政策の間違いがなければ復興は難しくな い:むしろ復興需要で経済は上向きへ ④復興財源としての増税は不合理、不公平、 そして危険 2 ①誤解1:復興資金の財源は税金 だ • 答え:財源は3通りある。 • 1)増税 • 2)借金 • 3)インフレ • 増税は最悪の選択 3 今、増税は考えられない • 1.不合理:100(1000?)年に一度の一時的 なショックはできるだけ均すべき<税の平準 化> – • 100年償還ならば単純にいえば年3000億円でよ い 2.不公平: – – 被災者に追い打ち、さらには支援をすべき他の 国民にも追い打ち<二次災害> 現役世代に過大な負担 4 浜田教授の言葉 • 臨時増税は「まるで災害という傷を 負った子供に重荷を持たせ、将来治 ったら軽くするようなもの」(6月20日 経済教室でのR・クーパー米ハーバ ード大学教授と浜田宏一イェール大 学教授) 5 誤解②:これ以上借金はできない • 答え:財政危機は誇張されている • 1)財政は悪いが、いわれるほどひどくない • • 2)不況になって経済が縮小すると財政再建 はできない 3)増税先行で財政再建はできない 6 財政の状態:ワニの口が開く 7 詳しく歳出の構成比をみると、 国債費のうち10兆円近くはみせ かけ 8 伸びが一番大きい社会保障関係 費 9 財政赤字は他国と比べてそれほ ど大きくない:財政収支対GDP比 10 総債務残高(対GDP比)は上昇 11 純債務残高(対GDP比)も上昇、 しかし・・・ 12 重要な注意! • 日本政府は、巨額の債務と同様に、資産も保 有している – • • • 諸外国では日本ほど資産を保有している国はない 純債務=総債務ー資産 ただし、上の図は資産のなかで金融資産だけ を計算 実物資産もいれると、もっと比率は小さくなる (対GDP比で約70%くらいに) 13 誤解③:日銀が直接引き受けをし たらハイパーインフレになる • • • • 答え:30兆円程度ならば、ハイパーになるわ けはない。 実際には、毎年20兆円近く直接引き受けをし ている。 デフレ(需給ギャップ約20兆円)のもとでは、 すぐにハイパーにはならない。 心配ならばインフレ目標を導入せよ。 14 GDPギャップ:約20兆円 15 デフレの続く日本 16 必要なのは財政と金融の組み合 わせ • • • ①財政支出:集中復興期間内に20兆円以 上:おそらく30兆円から40兆円 ②財源:震災復興債の発行 しかし、そのままでは金利上昇⇒海外資金流 入⇒円高⇒輸出打撃⇒所得減少<マンデル =フレミング効果> • 阪神大震災の後も円高が進行 • ③日銀による金融緩和が必要不可欠 17 18 19
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