6.7GHzメタノールメーザの強度変動の統計的研究

6.7GHzメタノールメーザの
強度変動の統計的研究
山口大学理学部自然情報科学科
物理コース4年 石川裕子
目次
研究背景 – 強度変動に即して
研究目的
観測 - 条件
- 観測パラメータ
結果 - 様々な強度変動
- 強度変動指数を用いた変化
- 強度変動指数の標準偏差
まとめ
今後の展望
研究背景
Szymczak et al. 2000…IRASの対象のうち1411
観測期間:1999/1/30-8/25
観測スパン4年もしくは7-8年で少なくとも2エポック観測された
検出天体数:182(うち70が新検出)
96個のソースを強度変動の違いによって4つにグループ化。
今まで観測されてきたデータと比較
1.はっきりとした変動がない(23個のソース)
2.約20%の弱い変動を示す(11個のソース)
今回の観測とのスパンは、4年もしくは7-8年

GG316.64-0.09
G9.62+0.20
3.20~50%の変動(46個のソース)
4.50%以上の強い変動(16個のソース)
Goedhart et al. 2004…長期間のモニタリング
観測期間:1999/1-2003/3の4年間,
4年間にわたって54個の天体の、369のコンポーネン
1-2週間又は2-3日の間隔
トそれぞれに対して強度変動を調査。観測の間隔は
天体:すでに変動が確認されている54個
1-2週間、変動の激しいものは2-3日間。
(複数のコンポーネントからなるスペクトルは、
→単調な増加・減少、周期的・準周期的な変動、
その1つ1つについて強度変動をみている。)
◆
非周期的な変動、変動なし
研究目的
長期間にわたる、同じ観測パラメータ・複数の
天体の強度変動は未観測である。
強度変動の統計的な研究はまだ行われていない。
観測パラメータがほぼ同じであるSzymczak(2000)
で観測されたソースを山口32m電波望遠鏡で観測す
ることで、 6.7GHzメタノールメーザの長期間(8年間)
のソースの強度変動の統計から、その領域の物理的
現象を解明する。
観測
単一鏡(山口32m)
周波数 → 6.7GHz
日付 → 2004/7~2004/9,
2005/8~2005/9,
2006/9,
2007/8~2007/9
観測条件
→山口(04,05)
IRASポイントソースを基準として
- S 60  S 25
- S60  100 Jy
-   20
→山口(06,07)
- 上記の条件
+ 検出済のソース
観測
~観測パラメータ~
スパン
5
6
3
7
8
04 05 06 07
99
1 1 1
2
2
Szymczak et al
2000
観測期間
山口 2004
山口 2005
山口 2006
山口 2007
1999年1月
2004年7月22日
2005年8月8日
2006年9月4日
2007年8月25日
~1999年8月
~9月1日
~9月12日
~9月13日
~9月1日
システム雑音
温度[K]
~60
200~250
同左
同左
同左
フラックス
校正精度[%]
≦15
~4
~4
≦11
~15
検出天体数
184
161
175
149
157
3σ~1.5-1.9
5σ≦4
5σ≦5
5σ≦4
5σ≦5
検出限界[Jy]
速度分解能(0.044 km/s), 観測帯域(4MHz), 積分時間(840秒),
分光点数(4096), 両円偏波
年
結果
~様々な変動~
(1)強弱を繰り返すソース
Flux density[Jy]
Yamaguchi
(04)
(05)
(06)
Velocity[km/s]
(99)
Torun
(07)
結果
~様々な変動~
(2)ランダムな変動をするソース
Flux density[Jy]
Yamaguchi
(04)
(05)
(06)
(07)
Velocity[km/s]
(99)
Torun
結果
~様々な変動~
(3)ほぼ変動しないソース
Flux density[Jy]
Yamaguchi
(04)
(05)
(06)
(07)
Velocity[km/s]
(99)
Torun
結果
8年経過してもラインが同定できる
データ数⇒147
メーザの寿命は8年以上である!!
結果 ~強度変動指数Sを用いた変化~
強度変動指数S
比較したいスペクトル強度(X,Y)の変動の度合いを示す指数。
例.04年と05年の強度を比較する
X Y
S
X Y
X=Y ――
S=0に近づく
X≫Y ――
S=1に近づく
X≪Y ――
S=-1に近づく
05年
04年
結果 ~強度変動指数Sを用いた変化~
x y
S
x y
各スパンの変動の様子
σ=0.15
σ=0.13
σ=0.10
σ=0.14
2年
ソースの個数
1年
σ=0.15
σ=0.19
3年
σ=0.25
σ=0.27
σ=0.29
5年
6年
7年
強度変動指数S
σ=0.29
8年
結果
X Y
S
X Y
~強度変動指数Sの標準偏差~
統計のデータ数と標準偏差
1年
Y(06→07)
2年
Y(05→06)
Y(04→05)
Y(05→07)
Y(04→(06)
3年
5年
6年
7年
8年
Y(04→07)
T(99)→Y(04)
T(99)→Y(05)
T(99)→Y(06)
T(99)→Y(07)
データ数
136
140
153
152
135
146
147
158
136
147
標準偏差
0.15
0.13
0.10
0.14
0.15
0.19
0.25
0.27
0.29
0.29
標準偏差
標準偏差
y=a(1-exp(-b*x))
a=0.300, b=0.399
y=a(1-exp(-b*x))
・タイムスケールは2.5年(1/bより)
・変動の幅はおおよそ8年で収束する傾向
スパン[年]
=変動の幅はS=±0.3ぐらい(a=0.3より)
スパン[年]
まとめ
・メタノールメーザは寿命が8年以上!!
・変動のタイムスケールは2.5年
・変動の幅はおおよそ8年で収束する傾向
メーザ寿命とは関係ない短期的な変動
の幅が8年程度で収束に向かう傾向
メーザの寿命自体はもっと長い
約8年を過ぎたらやがてはメーザ自体が
消滅する時期がやってくる
標準偏差が増加
短期的な変動によるものではなく、メーザの
消滅によって増加する (標準偏差→1)
今後の展望
観測スパンを長くすることで、強度変動指数の標
準偏差はもう一度大きな変化を示し、それは「1」
に近づくはずである。
今後も観測を続けることで、メタノールメー
ザの寿命そのものの変動を明らかにする