第3章.リスクの配分・管理

○格付会社の収入
○格付会社:純粋民間会社
• 19世紀中頃米国で格付け始まる~1960年代:
– 投資家からの情報提供料の受け取り(投資家側の
ニーズから格付会社が登場)
• 米国:1960年代末~:
– 投資家への情報提供料プラス
– 背景:格付けの普及
→格付けを取得しないと投資家が債券を買ってくれ
ない。高い格付けを取得すれば低金利で債券の発
行が可能。
→発行体にとって格付け取得が必要
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○格付けの信頼性
– 格付け対象の企業との癒着?、中立性?
– 信頼確保のメカニズム(
)
• 甘い格付け
→格付けが高い企業でもデフォルトが多発
→投資家がその格付会社の格付けを信用しない(評
判が悪くなる)
→その格付会社から高い格付けを取得しても低い
金利で債券が発行できない
→債券を発行する企業にとってその格付会社に格
付けを依頼しても意味がない
→格付会社としてやっていけなくなる
– 投資家は格付会社のこれまでの実績から、そ
の格付けの信頼性を判断する
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「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整備」
『日本銀行調査月報』2001年10月号
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・エンロン社破綻と格付け:破綻直前に急激な格付け引き下げ
格付会社にとっても、組織的な会計操作・粉飾を見抜くのは難しい
十分注意深く調査・分析が行なわれていたのか?
中長期的見通しに基づいた分析が行なわれていたのか?
佐賀卓雄「エンロン破綻の衝撃(4)」『証券レビュー』42巻12号
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第3章.リスクの配分・管理
• 資金の移転・提供(現在時点)→将来見返り
を得る:金融取引は異時点間の取引
– 将来のことは確実ではなく、不確実でリスクが存在する
• リスクとは?
• ⇒・リスクのある事業にどれだけ資金を提供するか
・リスクを資金提供者間でどう分担するか
・資金提供に伴うリスクをどう管理するか
・リスクをどう価格に反映させるか
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○リスクとは?
• リスク:
• e.g. ①:ある株式に投資すると、1年後に10%値
上りする確率50%、5%値上りする確率50%
– 損をする可能性はないが、リスクはある。
• ②:ある株式に投資すると、1年後には必
ず10%値下がりする(必ず損をする)。
– 損はするが、リスクはない(運命ではあるが、
リスクではない) 。
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(1)株式会社制度と事業リスクの分担
• 株式会社制度:株式の発行を通じて幅広く事
業に必要な資本を集中
• 株式:
- 株式会社に対する所有権を細かく等分し、それ
を表示した有価証券(株券)
- 株主の権利:
- ①
- ②
- ③
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• 事業リスク
– 事業遂行の結果として得られる収益に関するリ
スク
– 株式会社制度=
• 株主と債権者・貸手(銀行や社債投資家)
– 株主と貸手は共に企業への事業資金提供者
– 株主と債権者との間での企業収入の分配ルール
• 企業の収入に対して、まず債権者が負債の元利返済
という形で優先的に受け取る権利がある。
• 負債の元利返済が完了した後に、企業の収入に残り
があれば、それは株主が受け取ることができる。
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– ∵ 企業の収入が少なければ(業績が悪ければ)、株主の
受取分は小さくなる。債権者の受取分は、企業の負債の
元利返済額で一定。
• しかし、企業の収入が負債の元利返済額に足りなけ
れば(企業の債務不履行・デフォルト)
– 債権者は企業の収入の全てを受け取り(全ての企業資産
の処分換金額を含め)、株主は当初の出資金を失うだけで、
新たに損失を分担する必要はない(
)。
• ・
9
• 事業リスクはこうした形で株主・貸手間で分担
(基本的に株主が負担、貸手も一部負担)
– ハイリターン(しかしハイリスク)を望む資金提供者(株
主)とローリスク(しかしローリターン)を望む資金提供
者(貸手)の間でのリスク分担
• 貸手のリスク
– 貸手(銀行や社債投資家)は信用リスク(orデフォルト
リスク)に直面している
→借り手に関する情報生産の必要性
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(2)資産運用・投資のリスク分散
• リスク分散
– 投資先を分散することによってリスクを削減する
• 株式投資の収益率
=
・株式投資のリスク
:収益率が不確実で、ブレがあること
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• リスクの尺度
=収益率のブレの大きさ(変動性volatility)
=
• 標準偏差:分布の(平均値からの)ばらつきを
測る統計的尺度
• 投資先を分散⇒リスクが小さくなる
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・証券1が収益率のばらつき(標準偏差)が小さい
⇒リスクが小さい
・証券2が収益率のばらつき(標準偏差)が大きい
⇒リスクが大きい
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横軸は週次収益率
データの期間:1997年1月~2001年12月
野村證券投資情報部編『証券投資の基礎』丸善 p.54
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もし、収益率の分布が正規分布なら
σ:標準偏差
野村證券投資情報部編『証券投資の基礎』p.55
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資産運用の議論では、資産の組合せをまた1つの投資対象と考える。
ボディ&マートン『現代ファイナンス論』ピアソン.p.356
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リスク削減効果:投資対象間の相関係数ρ(-1≦ρ ≦1)に依存
相関係数:2つの株式の収益率がどの程度同じような動きをするかを示す係数
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野村證券投資情報部編『証券投資の基礎』丸善 p.137
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