薬物副作用による消化性潰瘍

薬物副作用による消化性潰瘍
5班
石山勝也、栗原唯生
瀬山貴博、鍋井敬文
畠達夫、蓬田幸人
症例
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79歳 女性
症状:腹痛・易疲労感・タール便(血便)
変形性関節症の鎮痛のためNSAIDを服用
上部消化管内視鏡検査により、十二指腸潰瘍を発見
H2-blockerを処方し、6週間後の再検査を指示
4週間後、吐血によるショック症状でERへ運ばれ、
蘇生術を受ける
• 患者は薬の処方後、10日で症状が消えたので、薬の
服用を中止していた
女性の症状
経過
持病の変形性関節症
鎮痛のためNSAIDを
服用していた
この症例では、NSAIDをOA
(変形性関節症)の関節痛を
抑えるために用いている。
NSAIDs
・・・アスピリン、インドメタシン etc.
作用: 主にCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害し、
PGs(プロスタグランジン)生成を抑制するこ
とで効果を発揮する
効果:1)解熱
2)鎮痛
3)抗炎症
*酸性抗炎症薬は抗血小板作用も持つ
女性の症状
経過
持病の変形性関節症
鎮痛のためNSAIDを
服用していた
腹痛、易疲労、血便
(内視鏡で)
十二指腸潰瘍発見
潰瘍とは?
定義:酸・ペプシンによる消化管粘膜の欠損
で、欠損が粘膜筋板を越えて粘膜下
組織またはそれよりも下層に及んだもの
cf.びらん:粘膜上皮の欠損
潰瘍の組織学的分類
Ul-Ⅰ
Ul-Ⅱ
Ul-Ⅲ
Ul-Ⅳ
粘膜
粘膜筋板
粘膜下層
固有筋層
漿膜下層
漿膜
十二指腸潰瘍の原因
バランス説
胃十二指腸粘膜の防御機構と攻撃因子による侵
襲力との間の平衡が崩れて潰瘍が生じる
⇒潰瘍は攻撃因子が防御因子を上回ったときに生
じる
(近年はH.pyloriの関与も指摘されている)
十二指腸潰瘍の病態生理
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壁細胞数増加による胃酸分泌の亢進
ガストリンに対する壁細胞の感受性亢進
胃酸分泌の負のフィードバック機構の破綻
胃排出の亢進
女性の症状
経過
持病の変形性関節症
鎮痛のためNSAIDを
服用していた
腹痛、易疲労、血便
(原因:NSAID )
(内視鏡で)
十二指腸潰瘍発見
NSAIDsによる消化性潰瘍
原因:PGsの消化管粘膜での生成抑制のため
どうしてPGs抑制で潰瘍が形成されるのか?
PGsの消化管粘膜における作用
1)酸分泌抑制
2)Cytoprotection
3)血流量増加
その他のNSAIDs潰瘍誘発要因
1)フリーラジカル・・・発生源:好中球
2)apoptosis
NSAIDs潰瘍を防ぐには?
1)Prodrug
2)COX-2特異的阻害薬
3)プロトンポンプ・インヒビター(PPI)
4)その他 ・・・PG製剤、H2blocker
女性の症状
経過
持病の変形性関節症
鎮痛のためNSAIDを
服用していた
腹痛、易疲労、血便
(原因:NSAID )
(内視鏡で)
十二指腸潰瘍発見
治療のために
H2blocker服用
潰瘍治療薬としてのH2-blocker
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作用機序
薬物動態
副作用
反跳現象
Parmacokinetic and Other Features of Major H2-Receptor Antagonists
Cimetidine Ranitidine
Famotidine
Nizatidine
Bioavailability
60-70%
50%
40-50%
90%
Elimination t1/2 2-2.5 hours 2.5-3 hours 3-3.5 hours 1-1.5 hours
Excretion
Renal
Renal
Renal
Renal
Adverse effects
Many
Few
Few
Few
Drug interactions
Many
Few
None
None
Dose (once daily)
800mg
300mg
40mg
300mg
シメチジン投与の時間帯と胃酸分泌量の関係
35
30
Mean Hourly Hydrogen ion
25
Placebo
400mg b.i.d.
800mg h.s.
1600mg h.s.
20
15
10
5
0
1000
1400
Study Period (Hour)
400
一日一回の夜間投与が最も効果的
副作用
シメチジン:副作用の頻度は低く、投薬を中止する程度でもない
ex)頭痛、めまい、下痢、筋肉痛など
1)抗アンドロゲン作用
女性化乳房、乳汁分泌
2)CNSへの作用
錯乱、幻覚
3)薬物相互作用
チトクロームP450を阻害して、薬物代謝を延長
(ワルファリン、ジアゼパム、フェニトイン、テオフィリン など)
シメチジン以外:副作用、薬物相互作用は少ない
女性の症状
経過
持病の変形性関節症
鎮痛のためNSAIDを
服用していた
腹痛、易疲労、血便
(原因:NSAID )
(内視鏡で)
十二指腸潰瘍発見
治療のために
H2blocker服用
吐血、低血圧
る潰瘍の増悪
H2blocker服用中止によ
H2-Rアンタゴニストの反跳現象
H2blocker投与を急に中止すると、投
与前よりも胃酸分泌が一時的に亢進
し、急激な消化器症状が出現すること
発生機序の仮説
H2-Rアンタゴニストの投与を中止
壁細胞のヒスタミンに対する感受性の亢進
反跳現象
感受性の亢進とは
H2受容体のヒスタミン非依存性の基礎活性が
受容体拮抗薬により抑制される
細胞内の伝達が抑制され、胃酸分泌量が減る
受容体数を増して胃酸分泌量の減少を補う
具体的症状
1)低量ヒスタミン投与に対する壁細胞の感受性が亢進する
2)胃酸分泌量が一過性に亢進する
(とくに夜間では、治療前に比べて50%近い増量)
予防
1)中止するときはかならず漸減投与
2)防御因子増強薬、制酸薬の併用
この症例の問題点
患者のコンプライアンス
薬物治療におけるコンプライアンス
「薬物を医師の処方通りに服用すること」
具体的なノン・コンプライアンス(正しい服用率の低下)の
例
1)飲み忘れる
2)量を誤る
3)飲む時間を間違える
4)患者の判断で使用を中止する
高齢者における
ノン・コンプライアンス
原因:①多数の疾患を抱えているため、使用している薬剤
の
種類が多い
②服用指示に対する理解力、記憶力の低下
③難聴・視力障害などの感覚障害
④高齢者特有の頑固さ・迷信・昔ながらの習慣に左
右
される
⇒自己判断
対策
1)薬剤を必要最小限にする
2)服薬指導をしっかりと行う(その際に相手の
理解力や感覚障害、どのような薬を現在服用
しているかについての情報を得たうえで行う)
3)飲み忘れを少なくする処方上の注意、飲み
忘れのチェックを行う
問題1
H2受容体に関する次の記述のうち、
間違っているものを1つ選べ。
1) H2受容体拮抗薬で競合的に阻害される。
2)壁細胞内ではCa2+を介してプロトンポンプを促
進する。
3)壁細胞に存在するH2受容体はGたんぱく質共役
方である。
4) H2受容体拮抗薬は夜間の胃酸分泌に効果的
である。
答え:2)
問題2
潰瘍の原因となるNSAIDsの作用を選べ
1)PGsの抑制
2)フリーラジカルの増加
3)HCO3-の分泌促進
4)apoptosisの亢進
答え:1)、2)、4)
完
監修:布木和夫