小児HIV感染における抗レトロウイルス薬の 使用に関するガイドライン 抗レトロウイルス療法中の小児HIV感染者に おけるHIV感染合併症の管理 疼痛管理 翻訳:広島大学病院 エイズ医療対策室 石川暢恒、高田 昇 March 2005 このスライドについて このスライドは2005年3月の小児ガイドラインに沿って作成され た。HIV陽性患者のケアにあたる臨床家を対象としている。 利用者は、HIVケアの分野は変化が早いためここに述べてある情 報がすぐに時代遅れになってしまうことに注意されたい。最後に 、このスライドは内容を変更することなく使用して頂きたい。 AETC NRC http://www.aids-etc.org 03/05 はじめに 疼痛は多因子が関与する生物学的複合体である 生活の質の低下、死亡率の上昇、CD4%の低値と 関連がみられる 特に幼い子供たちと女児によくみられる 原因:神経や筋肉の炎症、心筋症、薬剤毒性、侵襲 的な二次感染など多岐にわたる ストレスは疼痛を増幅する 03/05 評価 自己報告 小児視覚表現疼痛スケールと評価システムー年齢、 発達状態、疾患の重症度、文化的要素に応じて 観察及び行動による評価 機能的評価法 小児総合健康評価 Functional Status II (R) 03/05 疼痛管理の原則 医療状態の基礎となる診断と治療 管理を進めていく過程でこどもと保護者を参 加させる 小児の疼痛の専門家への相談を考慮する 非薬物治療と薬物治療を組み合わせる 03/05 非薬物的介入 リラックスさせる技術、行動修正 環境の管理(遊び、音楽、計画的な医療・看護的介入、 しっかりした睡眠と休憩時間) 穏やかに接する、支えとなるような態度を示す 栄養学的支援、輸液、電解質補充 最適な組織灌流と酸素化を行う 経皮的電気刺激(TENS)、マッサージ、ジャグジー、理 学療法 針治療 03/05 薬物治療 投薬はガイドラインに準拠すべきだが、用量は個々 に応じて決定されなければならない 効果的な小児の鎮痛剤の用量は決定されていない (三環系抗うつ剤、SSRI、抗けいれん剤など) 付加的鎮痛剤の使用に関しては、鎮痛剤の用量が 初期治療に用いる標準的な用量より少なくて済む 可能性がある 少量で開始し、必要に応じて忍容できる程度まで増 量する 03/05 薬物的治療 多くの鎮痛剤が肝臓代謝を受ける PIまたはNNRTIと相互作用する可能性 鎮痛剤と(または)抗レトロウイルス薬の血中 濃度が変化する可能性 鎮痛剤の毒性または中止に伴うリスク:最適ではない、ま たは毒性を持つPI・NNRTIの濃度 03/05 薬剤の種類 カテゴリー 代表的な薬剤 GABA アゴニスト Baclofen, midazolam, lorazepam, diazepam Mu オピオイドア ゴニスト Fentanyl, morphine コメント Baclofenは筋攣縮によく使用される:GABA-B 受容体を刺激し、興奮性アミノ酸であるグルタミ ン酸とアスパラギン酸の放出を抑制する。 呼吸のモニタリングが必要。経皮的fentanyl投 与は、緩徐に発生に長期間持続するような挿間 的な痛みには使用されるべきではない。 NMDA 受容体ア Dextromethorphan, ketamine ンタゴニスト Dextromethorphanは失調やめまいの原因となる。 Ketamineは心拍数、血圧、心拍出量、頭蓋内圧、 眼圧を増加させる。また、幻覚を生じることもあ る。 混合アゴニスト Methadoneは、乳幼児向けの液状製剤が使用 できる。クリアランスに著しい変化が見られるの で、密なモニタリングを行い過剰鎮静を避ける 必要がある。rramadolに関しては、小児の用量、 安全性、投与間隔はまだ決定されていない。 Methadone (muオピオイド とNMDA効果を持つ); tramadol (muオピオイドと norepinephrine,serotonin 効果を持つ ) 03/05 薬剤の種類 カテゴリー 代表的な薬剤 コメント アルファ2アドレナ リンアゴニスト Clonidine 交感神経の反応を調節する。オピオイド減量効果。 経皮的投与が可能。患者が低血圧、敗血症、うつ状 態になったら中止する。 三環系抗うつ剤 Amitriptyline, nortriptyline NMDA受容体を遮断する。 内因性オピオイドを放 出する。クリアランスは様々である。2回め(a.m.)の 内服でさらに利点が現れる。血漿中の濃度を目安 にすると高用量になりやすい。 SSRIs Paroxetine, sertraline, fluoxetine antinociceptiveの効果のメカニズムは不明である。: 中枢オピオイドとセロトニン経路の両方か関与して いるのかもしれない。 鎮痛効果を持つ抗 けいれん剤 Gabapentin, lamotrigine, topiramate Gabapentinはカルシウムチャネルを調節し、GABA 合成を促進し、グルタミン酸を減少させる。神経原性 の痛みの治療に用いられる。Topiramate:ARVとの 薬物相互作用をモニターする。 NSAIDs Ibuprofen, celecoxib, diclofenac, acetaminophen, ketorolac cyclooxygenase-2 (COX-2)を阻害する。クラスの差 はほとんど無い。 Ketorolacは最初の経静脈投与の NSAIDであるが、肝不全と消化管出血を生じること がある。 03/05 留意事項 オピオイド 激しい痛みを緩和する 優れた鎮痛作用:一般的には安全である 他の薬剤と同時に使用すると鎮痛作用を増 強することがある: GABAアゴニスト、アルファ2アゴニスト、 TCAs、 SSRIs、抗けいれん剤 03/05 特に注意すべきこと オピオイドの合併症: 過剰な沈静 A.m.刺激剤(dextroamphetamine, methylphenidate)の 低用量使用を考慮する 掻痒感と便秘 極少量のnaloxoneの使用を考慮する 麻薬を変更する(methadoneなどへ) 嘔気と嘔吐 麻薬を変更する 03/05 特に注意すべきこと Methadone NMDA受容体拮抗作用を持つ 非麻薬性鎮痛剤に不応性の神経原性疼痛に対す る長期的治療に推奨される 他の麻薬に比べ忍容性を低下させることがある 成人では、CD4%が低値であることと関連している 03/05 特に注意すべきこと Methadone 高用量のモルヒネ(dilaudid、fentanyl)から methadoneへの変更 Methadoneに対する不完全な交差耐性 少量(予想必要量の20%)で開始する 必要量の上限で呼吸抑制のリスク 03/05 特に注意すべきこと Methadone いくつかのPI(lopinavirなど)とNNRTI(efavirenz、 nevirapine)がmethadoneの代謝に影響を与え血 中濃度を低下させる オピオイドの禁断症状が生じる可能性がある より高用量のmethadoneが必要になる可能性があ る 相互作用のあるARVが中止されたときに methadoneの毒性が出現するリスク 03/05 特に注意すべきこと 長期間のオピオイドとベンゾジアゼピンによる 治療からの離脱 身体的ストレスを最小化する 禁断症状を軽減する目的で、Clonidine(アルファ2作 動薬)を経皮的あるいは経口で使用する IVの麻薬からmethadone(またはfentanylパッチ、モ ルヒネ、MSコンチン)へ変更する Midazolamからlorazepamへ変更する 03/05 特に注意すべきこと 長期間のオピオイドとベンゾジアゼピン治療か らの離脱 Methadoneは2-3日毎に5-10%ずつ減量する 可能ならばlorazepamの5-10%減量と交互に行う 麻薬の中止後少なくとも3-5日経過後にclonidineの 減量を行う 禁断症状に関して頻回に評価を行う 03/05 特に考慮すべきこと 麻薬と鎮静の必要量が亢進する アルファ2アゴニストとNMDA受容体アンタゴニスト を開始する Clonidine、dextromethorphan(少量)を考慮する 他の麻薬をmethadoneへ変更し、lorazepamを midazolamへ変更する 麻薬をローテートさせることを考慮する 局在性の疼痛には局所麻酔を考慮する 03/05 特に考慮すべきこと 痛みを伴う処置の際の鎮痛及び鎮静 静脈穿刺:非薬理学的介入に加えて局所麻酔 さらに侵襲的な処置には意識レベルを下げることを考慮 する Midazolamに伴う注意:いくつかのPIとNNRTIによって血中濃度 が増加する Fentanylに伴う注意:PIまたはNNRTI投与中の患者では開始時 の急速投与で呼吸と循環抑制が生じる 少量で開始、注意深く増量、頻回にモニタリング 03/05 特に考慮すべきこと 末梢神経炎 小児においては重症度は低いようである 必要ならLidodermパッチを他の鎮痛剤とともに使用する 可能ならば進行中の投薬を中断する 神経原性疼痛 進行中の組織障害や炎症とは関係なく持続または激化 する 組み合わせ療法(麻薬と組み合わせた非麻薬性薬剤ま たは非麻薬製剤同士)が必要となる可能性がある 疼痛対策の専門家に相談する 03/05 特に考慮すべきこと 運動障害 Levodopaを考慮する 神経科、麻酔科、リハビリテーションの専門家へ 相談する 03/05 疼痛症候群別の治療 適応 治療目標 薬理学的アプローチ 組織障害、炎症、浸潤性 炎症と組織障害を軽減 感染症、腫瘍による局在 する:痛みの伝導を遮断 する:鎮痛 性または限局性疼痛 局所的鎮痛:局所麻酔:capsaicin: ステロイドの局所投与:NSAID:オ ピオイド:領域麻酔 筋原性の経過 原因を解消する:炎症を 軽減する 攻撃的治療を中止:ARV療法の最 大化:NSAID:ステロイドの全身投 与を考慮する 全身性炎症性の経過 炎症とストレスを軽減す る NSAID:コルチコステロイドを考慮 する 末梢神経炎 炎症と進行を限定させる Lidodermパッチ:三環系抗うつ薬 またはSSRI :抗痙攣薬:アルファ2 アゴニスト:攻撃的治療の中止 03/05 疼痛症候群別の治療 適応 治療目標 薬理学的アプローチ 神経原性疼痛症候群 CNSの興奮性と交感神経 反応を調節する:ストレス を減らす鎮痛:可動性 三環系抗うつ剤やSSRI:アル ファ2アゴニスト:NSAID:抗けい れん剤:NMDA阻害効果のある オピオイド:NMDA受容体アンタ ゴニスト:リドカインの全身投与: 領域麻酔 固縮、痙性を伴う運動障 安楽性と可動性を改善す る 害 易刺激性や不眠を伴っ た脳炎様の過程 GABAアゴニスト:L-dopa:領域 麻酔 睡眠を改善する:CNSの炎 GABAアゴニスト:ARV:NMDA 受容体アンタゴニスト:抗けいれ 症を軽減する ん剤 03/05 疼痛症候群別の治療 適応 治療の目標 薬理学的アプローチ 呼吸窮迫や重症の鬱血 安楽にしたり処置を忍容 するための鎮静及び鎮痛 性心不全 O2:モルヒネと他のオピオイ ド:GABAアゴニスト 麻薬依存性の亢進と麻 ゆるやかに抑制する:オピ オイド反応性の保存 酔抵抗性の亢進 アルファ2アゴニスト:NMDA 阻害効果を持つオピオイド: NMDA受容体アンタゴニスト オピオイドまたはGABA ストレス反応を最小化す る:忍容できる速さで離脱 アゴニストの離脱現象 アルファ2アゴニスト:NMDA 阻害効果を持つオピオイド: 長時間作用型CABAアゴニス ト する 03/05 結論 疼痛は生活の質を大きく損ない医学的管理 を複雑にする可能性がある 最適な管理にはしばしば領域を越えた専門 家(麻酔、疼痛対策、看護、社会福祉、その 他)の協力を必要とする 03/05
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