高血圧を伴った石灰化腎動脈瘤例

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
高血圧を伴った石灰化腎動脈瘤例
Author(s)
小田, 完五; 平竹, 康祐; 小野, 利彦
Citation
Issue Date
URL
泌尿器科紀要 (1965), 11(7): 620-626
1965-07
http://hdl.handle.net/2433/112783
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
620
泌 尿 紀 要11巻7号
昭 和40年7月
高血圧 を伴 った石灰化腎動脈瘤例
京都府立医科大学泌尿器科学教室(主 任
CALCIFIED
Kango
教
授
小
田
完
五
講
師
平
竹
康
祐
助
手
小
野
利
彦
ANEURYSM
WITH
OF
HYPERTENSION
ODA, Yasusuke
From the Department
A case of calcified renal
according
A 25-yers-old
man
revealed
no significant
abdomen
revealed
RENAL
: A CASE
of Urology,
aneurysm
THE
ARTERY
REPORT
HIRATAKE and Toshihiko
(Director
was discussed
小田完五教授)
Kyoto Prefectural
: Prof.
ONO
University
of Medicine
Kango Oda)
with hypertension
was reported
and renal
aneurysm
to literatures.
was admitted
changes
several
ring-like
of the first and second lumbal
to our hospital
except
with epistaxis.
for hypertension
calcifications
vertebrae.
Physical
(180/110 mmHg).
between
An excretory
examination
Flat film of the
the right transverse
urogram
processes
and perirenal
air insuf-
flation revealed a small non-functioning
right kidney and a hypertrophied
shadow of the
left kidney.
An aortogram failed to reveal the right renal artery as well as significant
changes of the left renal artery.
The patient was subjected to laparotomy.
The small
and atrophic right kidney and several calcified tumors at its hilum were explored and
excised
together
was proved
vessel.
without
remission
both macroscopically
序
of hypertension.
and
Calcification
histologically
to have
with partial
occulted
ossification
the
renal
artery
勝 目 らG)の 報 告 以 来 わ れ わ れ の症 例 を含 め6例
言
に 過 ぎな い.
腎 動 脈 瘤 は 剖 検 上0.01∼0.015%1)-4)に
さ れ る 比 較 的 稀 な 疾 患 で あ る.臨
の こ とが 多 く,問
わ れ わ れ は鼻 出血 を 主 訴 と した若 年 性 高 血 圧
床 的 に 無症 候
患者 の泌 尿 器 科 的 検 査 中 発 見 され た,石 灰 化 し
題 は む しろ 高血 圧 又 は動 脈 瘤
破 裂 な ど の合 併 症 に あ る.近
関 心 が 高 ま り,同
発 見
時 腎性 高血 圧 へ の
時 に 臨床 診 断 法 と して の腎 動
脈 撮 影 法 が 普 及 し て 以 来,本
症 の 臨 床報 告 例 は
た 腎 動 脈 瘤 の ユ例 を経 験 した の で,そ の 大要 を
報 告 し,併 せ て本 症 と高血 圧 お よ び本 症 の 石 灰
化 を 中 心 に若 干 の交 献 的 考 察 並 に本 邦6症
つ い て の 簡 単 な要 約 を試 み る次 第 で あ る.
欧 米 に お い て は あ い つ い で み られ る よ う に な っ
た.Garritanos)は
真 性 動 脈 瘤142例
例 計60例,即
症
文 献 上 本 症 の180例 を 集 め,
中57例,偽
ち 約1/3が
性 動 脈 瘤38例 中3
極 く最 近 の1951∼1957
年 の 間 に報 告 され て い る とい う
ひ るが え つ て
本 邦 文 献 を ひ も と い て み る に そ の 報 告 は1961年
例
恩者:野 口某,25才,6.
主訴;鼻 出血.
初診:昭 和39年1月13日.
家族歴;特 記すべ きことはない.
例に
621
小 田他一高血圧を伴つた石灰化腎動脈瘤例
既 往 歴:昭 和38年12月13日
当科 で包 茎 の 手 術 を 受け
た他,特 記 す べ き こ とは な い.
現 病 歴:約6ヵ
心 電 図で 軽 度 の 左 心室 肥 大 。
月 前 鼻 出血 を 来 し,某
(収 縮 期 血 圧240rnmHg)を
医に 高血圧
指 摘 され,本 院 内科 へ 入
院.尿 路 単 純 レ線 検 査 の結 果 腎 結 石 の 疑 で 当泌 尿 器 科
に転 科 した.な お 内 科 入 院 中 の血 圧 は 収 縮期120∼180
mmHg,拡
張 期90∼120mmHgで
心 血 管 系 の所 見=血 圧 は180/110mmHg.
あ つ た.
眼底 検 査 で 異 常 な し.
大動脈撮影で左 腎動脈は正常.右 腎動脈 は確認 出来
な い(図4).
な お レ線 学 的 に 胸 部 に異 常 な く
胃腸透視 で慢性 胃
炎 を認 め る.
現 症:体 格 栄 養 共 に 良 好.皮 膚 な らび に 可視 粘 膜 に
貧 血 は ない.胸 部 で は 心 肺共 に打 聴 診 上 特 に 異常 を認
め な い.腹 部 では 左 腎 下 極 を触 れ るが 呼 吸 性移 動 を有
し表 面 平 滑 で あ る.肝 脾 右 腎 は触 知 不 能.鼠 径 部 お よ
以上 の所 見 か ら1)高
血 圧,2)右
倭 小 腎,3)右
腎
門 部石 灰 沈 着 と診 断 した.
手 術 所 見 お よび 術後 経 過,
び性 器 に異 常 所 見 は 認 め られ な い.
腰 椎 麻 酔 の も とに右 腰 部 斜 切 開 に て型 の如 く後 腹膜
検 査 成績
腔 に 入 るに,正 常 腎部 の 高 さに 小鶏 卵大,扁 平 な倭 小
血 液 所 見:血 液 像 で は 赤 血 球 数416×104,Hb量
12.1g/dl,Ht値38.0%.白
23%,分
診 断.
葉 核 球31%,好
ソパ 球31%,単
血 球 数3300,桿
酸 球IO%,好
状核球
球状 の腫 瘤 を 触知 した.こ の 腫瘤 は線 維 性 索状 物 とな
塩 基 球1%,リ
つ て,腎 静 脈 と並 行 して 横 走 し,大 動 脈 に 連絡 して い
球3%.
血 液 生 化学(主
腎 を認 め,腎 門部 前 面 に数 箇 の 小指 頭 大 結 石 様 硬 度 の
と して 腎 機能 を示 す もの を除 く)で
た.尿 管 は や や細 い が 容 易 に確 認 出来 た.尿 管 を可 及
は 黄 疸 指 数5.1単 位,総 蛋 白6.19/d1,A/G比2.0,
的 下 部 に て結 紮 切 断 し,腫 瘤 よ り大 動 静 脈 側 で 腎茎 に
チ モ ール 混 濁試 験0.4単 位,硫 酸 亜 鉛 試 験4.2単 位,
鉗 子 を か け て,結 石 様 腫 瘤 と共 に腎 を 易11除
した.
アル カ リフ ナ ス フ アター ゼ1,6BL単
位,総
コ レス テ
術 後 経 過 は順 調 で あ るが血 圧 の改 善 は 殆 ん ど認 め ら
れ ず,術
ロ ール168mg/dユ.
後 約1ヵ 月後 の血 圧 は172/114mmHgで
あ
る.
血 沈1時 間 値4mm.
血 清梅 毒 反 応 陰 性.
易1出標 本.
泌 尿 器 系 の所 見:尿 は 黄 色透 明,酸 性.蛋 白(一),
糖(一),ウ
ロ ビ リノ ーゲ ン(正常).赤 血 球(一),白
血
球(一),上
皮 細 胞(一),円
菌
柱(一),結
晶(一),細
易lj除
腎 は大 き さ6.5×3.0×1.7cm,重
量27gr.腎
上
極 は 腎 下極 に比 べ て 小 さ く二 次 的 萎 縮 が 更 に著 明で あ
る.前 面 では 腎 門 中 央 部 に一 条 の 腎 静脈 を認 め,上 極
お よび 腎門 に各 一 条 の索 状 物 が あ る.こ れ らの索 状 物
(一).
血 液 生 化 学 で は 残余 窒 素26mg/d1,尿
素窒 素 ユ6
は嚢 状 構 造 を 呈 し,石 灰 化 腫 瘤 を 包 埋 して い る.腎 の
mg/dl,Na142mEq/L,K4.2mEq/L,Cl106
表面 は暗 褐 色 を 呈 し,割 面 は や や 膨 隆 し皮 髄 両 質 の 境
mEq/L.
界 は不 明瞭 で あ る,腎 孟 腎 杯 お よび 尿管 移 行 部 は や や
PSP試
計60%.水
験15'30%,30'15%,60t10%,120t5%
試 験 で 比 重 差1001∼1035=34,尿
小型 で あ る他 特 に異 常 を認 め な い が,尿 管 は全 体 と し
素 ク リア
ラ ンス57∼67%,
て細 く,ゾ ンデ が挿 入 出来 る程 度 で あ る(図5),(図
6).
膀 胱 鏡 的 に は 膀胱 粘膜 正 常,尿 管 間靱 帯 お よび 両 側
易1除腎 の 単 純 撮影 では 術 前 レ線所 見 と 同様 腎 門 部 に
尿管 口 の位 置 お よび形 態 はほ ぼ 正 常 で あ るが,右 尿 管
数 個 の 輪 状 で濃 淡 の あ る石 灰 化陰 影 を認 め,逆 行 性 腎
口か ら の尿 の 流 出 は確 認 出来 ず,尿 管 カ テ ー テル 法 は
孟 撮 影 で は 石灰 化 陰 影 は 腎 孟 とは全 く無 関 係 で あ る こ
右 側 不 能.従 つ てHowardtestは
とが 確 認 され る(図7),(図8).
不 能.青 排 泄 は 左
側 は5分 で初 発,右 側 は18分 後 も排 泄 が み られ な い.
レ ノ グ ラム で左 腎 は 正 常 で あ る が,右 腎 は 高 度 の 腎
機 能 障害 を思 わ せ る(図1).
を 認 め る.腎 門 部 石灰 化腫 瘤 の脱 灰 標 本 で は 明 らか に
尿路 レ線 像 は 単 純 撮 影 で右 腎門 部 に掲 指 頭 大∼ 碗 豆
大 数 箇 の輪 状 石 灰 化 陰影 を認 め,PRP(図2)お
IP併
用PRP(図3)で
よび
右 倭 小 腎 と左 腎 の 代 償性 肥 大
像 を 認 め る,左 腎孟 腎 杯 像 は 正 常 で あ るが,右 腎 か ら
の 造影 剤 の排 泄 はな い.
組 織学 的 には 腎 実 質 は 間質 結 合 織 の 増 殖 が 著 明 で 糸
球 体 の 萎 縮,尿 細 管 の 萎 縮消 失 あ るい は 管 腔 の拡 大 等
血 管 と思 われ る管 腔 様 構造 が認 め られ,管 腔 の 中央 に
は,一
部 に 骨 髄 化 の 傾 向 を示 す 顕 著 な 石灰 沈 着 が あ
る.そ の 内膜 は 脱落 消 失 し,中 膜 は 疎 造 とな り萎 縮 を
示 して い る(図9),
小 田他一高血圧 を伴つ た石灰化腎動脈瘤例
622
の有 無 を決 め る上 に極 め て 重 要 で あ る.既 述 の
総 括 と考 按
1)腎
各 種 の原 因 に基 く腎 性 高血 圧 の診 断 に は 数 多 く
の検 査 法 を用 い偏 腎 の虚 血 に基 く病 変 を 左 右 比
動 脈 瘤 と腎 性 高 血 圧
腎 動 脈 瘤 患 者 は 臨 床 的 に 無 症 候 の こ とが 多
く,時
痛,腰
に 血 尿,腰
部,側
腹 部 叉 は 上 腹 部 の疹
部 又 は 上 腹 部 の 腫 瘤 等 を 訴 え る.然
が ら愁 訴 の 大 多 数 は 頭 痛,眩
量,鼻
出 血,不
な ど 不 特 定 の 高 血 圧 症 状 で あ る.こ
安
の よ うな高
Ii3ihippuranレ
ノ グ ラ ム12)の 左 右 の 比 較 等 は
screeningtestと
し て 高 く 評 価 され て お り,
Howardtesti7)を
始 め とす る分 腎 機 能 検 査 法18),
逆 行 性 腎 孟 撮 影 法 で形 態 的 に全 く正 常 で あ る場
は従 来 存 在 した もの が突 然 悪 化 し固
合 の 静 注 性 腎 孟 像 の左 右 の 比 較 等 も亦 有 益 で あ
定 化 す る 傾 向 を も つ て お り,い
わ ゆ る腎 性 高 血
さ て 腎 性 高 血 圧 はGoldblatt7)が
これ を 犬 を
用 い て 実 験 的 に偏 腎 性 に発 生 せ しめ る こ とに成
功 し て 以 来,泌
尿 器 科 領 域 か らの臨 床 的 研 究 は
急 激 に 活 澄 と な つ た.そ
の 原 因 とな り得 る 疾 患
は 多 種 多 様 で あ る が,大
き く腎 実 質 性 疾 患 と血
管 茎 自 身 の 疾 患 と に 区 別 出 来 る.前
球 体 腎 炎,腎
に は 動 脈 硬 化 症,腎
者 に は腎 孟
周 囲 血 腫 等 が あ り,後
動 脈 血 栓,腎
る.こ こで は そ の詳 細 は 省 く.自 験 例 に お い て
術 前 尿 管 カ テ ー テ ル法 が不 成 功 に終 り,分 腎 機
圧 と呼 ば れ る も の に 属 し て い る.
腎 炎,糸
性 腎 孟 撮 影 法 に よ る 腎 陰 影 大 小 の 比 較12)-16)・
然発症
血 圧 は 家 族 的 に 発 生 す る こ と は な く,突
す る か,又
しな
較 し て総 合 的 に判 断 す る必 要 が あ る.即 ち 静 注
動 脈 瘤,腎
者
動
能検 査 お よび逆 行 性 腎 孟 撮 影 法 を行 い え な か つ
た が,後
腹 膜 腔 気 体 撮 影 法 と静 注 性 腎 孟 撮 影
法 との併 用 に よ る右 腎 の縮 小 と左 腎 の代 償性 肥
大,レ
ノグ ラ ムお よび排 泄 性 腎 孟 撮 影 法 に よ る
右 腎 機 能 の 高 度 の 低 下 は腎 性 高 血 圧 の有 力 な裏
附 け とな るで あろ う.
腎 動 脈 瘤 に 合併 す る高 血 圧 は 降 圧 剤 治 療 に 抵
抗 し,外 科 的 治 療 に よつ て改 善 し得 る点,他
の
原 因 に よ る腎性 高 血 圧 と同 様 わ れ わ れ 泌 尿 器 科
脈 の 炎 症 性 閉 塞 性 疾 患(Endoarterits,Thromboangitisobliterans,Periarteritisnodosa)
医 に とつ て 甚 だ 興 味 あ る 疾 患 の1つ で あ る.
等 の 他 腎 動 脈 の 攣 縮,外
Poutasse9)に
傷,腎
廻 転 又 は 腎下 垂
動 脈 瘤 等 に よ る腎
よれ ば 巨大 動 脈 瘤(直 径1.5cm
以 上)は 石 灰 化 の 有 無 に か か わ らず,特
に臨 床
に よ る 腎 茎 の 轡 曲,腫
瘍,大
茎 の 圧 迫 等 が あ る.け
だ し高 血 圧 は 上 述 の疾 患
症 状 を呈 す る とか,高 血 圧 を併 う場 合 外 科 的 手
に よ る血 流 障 害 のた め 該 当 す る腎 が 虚 血 腎 の 状
術 の適 応 で あ る とい う.こ の際 対 側 腎 の機 能 が
態 に 陥 い り,こ
産 生 が 高 め られ
充 分 で あ れ ば 腎 捌 除 術 は最 も普 通 に 行 な わ れ る
を 介 して 発 症 す る も の
術 式 で あ る19)-21).又 近 時 腎 前 性 の 腎 動 脈 瘤 に
こでreninの
renin-angiotensin系
と一 般 に 考 え られ て い る.然
し こ れ ら原 因 的 疾
対 して動 脈瘤 頸 部 の結i紮,動 脈 瘤 縫 縮,動 脈 瘤
患 の す べ て に 高 血 圧 が 発 生 す る も の で は な く,
切 除端 々吻 合,by-pass形
そ の 発 生 頻 度 は 腎 動 脈 瘤 の場 合 で も報 告者 に よ
と血 管外 科技 術 の 進 歩 に伴 な つ て 成 功 裡 に行 な
つ て か な りの 差 が あ る.Berneikeら8)は
的 に56例 中11例
に,Garritano6)も
例 に,Poutasse9)は
sheous3》
中1例
も2例
自 験 例12例
中1例
に,Mathen》
亦180例
中3例
文献
わ れ る よ うに なつ た9)B2)一従 つ て 今 後 腎 内性 動
中44
脈 瘤 とか 巨 大 で 複 雑 な症 例 を 除 け ば 上 述 の 如 き
に,Abe-
に,Harrowio)も5例
も10例 中3例
成 等 が 症 例 の選 択
に 高 血EEを
認 め て い る.
血 管外 科 的 術 式 に よる治 療 法 が 漸 次 腎 捌 除術 に
とつ て 代 わ る も の と思 わ れ る.
腎 動 脈 瘤 を 原 因 とす る と否 とにか か わ らず,
一 般 に腎 性 高 血 圧 が外 科 的 療 法 に よつ て所 期 の
腎 動 脈 瘤 の 診 断 は 疹 痛,血
尿 お よび腹 部 腫 瘍
目的 が 達 せ られ る に は,反 対 側 腎 に高 血 圧 に よ
等 に よ つ て 推 測 さ れ る が,確
診 又 は 無 症 候 の場
る二 次 的 な不 可 逆 的 変 化 の 起 る以 前 に外 科 的 処
合 に は 後 に 述 べ る 単 純 レ線 像 又 は 動 脈 撮 影 法 に
置 が 加 え られ ね ば な らなv・14'15'21)23)24).腎
動脈
よ らね ば な ら ぬ.な
瘤 に合 併 した高 血 圧 の外 科 的 療 法 の臨 床 成 績 に
っ い て,Smith2s)は 高 血 圧 発 生 後1年 以 内 な ら
お腎 動 脈 瘤 に高 血 圧 の合 併
した 際 両 者 の関 連 性 を確 認 す る こ とは手 術 適 応
小 田他一高血圧 を伴つた石灰化腎動脈瘤例
ば35%,そ
れ 以 上 経 過 し た 場 合 は26%,Scho-
ffer26)は2年
%有
以 内 な らば67%,そ
効 で あ り,手
れ,血
rowlo》 に よ れ ば142例
れ 以 上 で は47
術 時期 に よ る成 績 の 差 異 が 認
め られ る と 述 べ て い る.自
験 例 に 腎捌 が 行 わ
圧 の正 常 化 が起 らな か つ た こ とは 以 上 の
理 由 に よ る も の と解 釈 し て い る.
る.勿
論 石 灰 化 した 腎 動 脈 瘤 はv.Ronnen4)も
あ げ て い る 如 く,1)脾
灰 沈 着,6)腎
腎 動 脈 瘤 を 分 類 し,
性腎動脈瘤
石,3)胆
石,
間 膜 リンパ 節 の石
腫 瘍 の 石灰 沈 着 お よび 石 灰 化 し
た 腎 結 核 等 との 鑑 別 が 必 要 で,DUx23》
は この
た め に も 動 脈 撮 影 法 を 重 視 し て い る.わ
れわれ
石灰 化 の第 二 の臨 床 的 意 義 は治 療 方 針 の決 定
a)嚢
状(sackfδrmige)
b)紡
錐 状(spindelf6rmige)
並 び に 予 後 の 判 定 に 関 す る も の で あ る.腎
c)解
離性動脈瘤
瘤 の合 併 症 と して の高 血 圧 につ い て は既 に述 べ
d)狭
た 如 く で あ る が,他
窄 後 拡 張(poststenotischean-
脈 瘤 の 破 裂 で,致
eurysmatischeDilatationorder
の1つ
命 的 で さ え あ る.Harrowら1・
石 灰 化 を 伴 つ た69例
der
osierendenProzessen
Arterie)
動脈
の重 要 な合 併 症 は 動
はarteriovenoustype!1例
PreBstralaneurysmenbeisten一
を 除 い た169例
とそ う で な い100例
お よ び 仮 性 動 脈 瘤 と の2群
》
を
の 冥性
に わ け て ,破
裂 の有
無 を 検 討 し て い る.こ
れ に よ る と石 灰 化 を み な
内 性(intrarena1)
か つ た24例(24%)内
真 性!9例,仮
腎前 性 と同 じ
裂 が 起 り,そ
2.腎
偽 性 腎 動 脈 瘤(Falsche
と し,真
嚢 胞 の 石 灰 沈 着,5)腸
一お よび
認 め て い る.
前 性(prarenal)
(Aneurysmadissecans)
皿
一,膵
の 症 例 で も比 較 的典 型 的 な輪 状 陰 影 を腎 茎 部 に
(EchteNierenarterienaneurysmen)
■
一,肝
腸 問 膜 動 脈 瘤 の 石 灰 沈 着,2)腎
動 脈 瘤 壁 に し ば し ば 石 灰 沈 着 が み られ る.
1.腎
に 過 ぎ な い が,
単 純 撮 影 で 診 断 さ れ た 症 例 は 約 半 数 の69例 で あ
4)腎
1真
の 真 性 動 脈 瘤 の う ち,動
脈 撮 影 法 に よ る 診 断 は1/5の28例
1工)腎 動 脈 瘤 の 石 灰 化
DUx23)は
623
Nierenart一
性5例
の 内20例 が 死 亡,6例
起 つ た も の で あ つ た が,石
に破
は妊 娠 中 に
灰 化 を伴 つ た症 例 に
erienaneurySmen)
は1例
動静 脈痩
に は 破 裂 を 来 し た と の 報 告 が 少 か らず み られ る
(Arterioven6seFisteln)
の に 反 し,こ
性 嚢 状 の も の に 石 灰 沈 着 が 起 り易 い と
危 険 性 が な い 理 由 に つ い て は 明 らか で な い
述 べ て い る.Abeshouse3)は115例
Garitano5)は60例
脈 瘤12例 中6例
中31例,
中3例,Poutasse9)は
に 石 灰 化 を み て い る.そ
の 破 裂 も な か つ た .石
灰 化 した大 動 脈 瘤
の よ う に石 灰 化 腎 動 脈 瘤 に破 裂 の
翼状動
も の よ り長 期 に 存 在 し て お り,破
裂 す る以 前 に
の他に
動 脈 瘤 壁 が 線 維 組 織 に よ つ て 十 分 に 取 り囲 ま れ
も石 灰 化 した 腎 動 脈 瘤 の 報 告 は か な り多 数 み ら
た 状 態 に あ る こ と が 考 え られ る22).そ
れ る.
お き 上 述 の 臨 床 的 事 実 か らHarrowら10}も
石 灰 化 の第 一 の臨 床 的 意 義 は そ の診 断 的 価 値
で あ る.腎
動 脈 瘤 の 診 断 に つ い て は 先 に も少 し
ふ れ た 通 り,動
た
だ 石 灰 化 腎 動 脈 瘤 につ いて 云 えば 石 灰 化 しな い
脈 撮 影 法 は 石 灰 化 を み な い腎 動
論 し て い る如 く石 灰 化 腎 動 脈 瘤 は,そ
れは さて
結
の予後は
高 血 圧 を 合 併 し な い 限 り致 命 的 で さ え あ る 動 脈
瘤 の破 裂 とい う点 に お い て は極 め て 楽 観 的 で あ
脈 瘤 の 診 断 に 欠 くこ との出 来 な い重 要 な手 技 で
り,又
若 年 者 お よび妊 婦 を 除 け ば正 常血 圧 で 血
あ る こ と は い う ま で も な い が,単
尿,疹
痛 等 を 伴 わ な い無 痛 候 性 の もの は手 術 の
純撮影上腎門
部 に 認 め られ る 極 め て 特 微 の あ るcalcificringlikeshadow,又
anceも
はcrackedeggshellappear-
亦 本 症 診 断 の 確 定 又 は 診 断 へ の 手 引 き・
に な る こ と が 少 な く な い9〕12)20)2D23)24)Har一
対 象 と な らぬ と い え る.
皿)本
邦 報 告 例 につ い て
既 述 の 如 く本 邦 に お け る 腎 動 脈 瘤 の 報 告 は 勝
目 ら(1961)が
最 初 で 本 例 を 含 め て6例
に過 な
小 田他一高血圧 を伴つた石灰化腎動脈瘤例
624
表1本
報告年度 年 令性 別 患側 主
N。.i報 鵠
邦 腎 動 脈 瘤 報告 例
訴
・舗
血 圧
(mmHg)
見縫 辮
馳
1961
9
♀
輪状
腎 萎縮
石灰 像
化 像(2コ)
血 圧 240/170 左
左 高
頭 痛,嘔 吐
・i岸 本他
1961
51
♀
左 左
1962
52
6
右 血
ll964♀
1441
高
左 鼻
血 血
出
圧
ミ
幡
1
永
3
田他
、L齢
158/1・
・
隣
髪講
1965
62ド
左 高
左
血 圧 210/110 石 灰 化 像(1コ)
腎孟 圧 迫 像
腰 痛
右 腎別 除 術(
術 後1カ 月 血 圧
172/114mmHg)
t約 厩
約6年
左腎別除術
除 術 が 施 行 され て い るが血 圧 の改 善 は み られ て
これ を 一 括 表 示 した もの で あ る.
年 令 は9∼62才
右 腎捌 除 術
(術 後4年 血圧
147/724mmHg)
左 腎捌 除 術
(術 後1年 血圧
190/1iO5mmHg)
約5年
右
輪状石灰化像(4コ)
腎萎縮像
血 圧
出
血 180/120
腎動脈撮影
左 腎捌 除 術
(術 後4日 目死亡)
左腎捌 除術
輪状石灰化像(1コ)
尿 185/95 腎孟圧迫像
右 腎萎縮像
高
右 鼻
E
月
約10年
25i♂
目他
い.表1は
輪状石灰化像
腰 痛 128/70 腎動脈撮影
1964
L5小 田 他
6勝
約3年6カ
療
治
に お よび半 数 が40∼60才 で 占
い な い 、 唯 発 病 か らの推 定 期 間 に つ い て 記 載 の
め られ,欧 米 の報 告 とほぼ 同様 で あ る.性 別 で
な い 永 田例 に術 前185/95で あ つ た もの が 術 後4
は男 子2例 女 子4例,患
年 ユ47/72に改 善 を み て い る.
側 別 で は左4例 右2例
で症 例 数 が少 く これ を もつ て結 論 す る こ とは 早
計 で あ る.欧 米 文 献 で は 特 に有 意 の 差 は み とめ
られ て い な い.高 血圧 は5例 にみ られ,4例
が
これ を主 訴 とし,高 血 圧 にみ られ る鼻 出血 を 主
訴 とす る も の2例,頭
痛 嘔 吐 を 主 訴 とす る も の
1例 で あ る.又 患 側 の腰 痛 を2例,血
にう て い る.こ
尿 を ユ例
れ らの 主 訴 あ るい は 臨 床 症 状
は,愁 訴 の大 多 数 が頭 痛 眩 量 鼻 出血 不 安 な ど不
特 定 の高 血 圧 症 状 で あ り,時 に血 尿,患 側 の腰
痛 又 は腫 瘤 で あ る とす る先 の記 載 と全 く符合 し
て い る.
レ線 所 見 と して輪 状 石灰 化 像 が6例 中5例 に
み られ診 断上 極 め て重 要 で あ る こ とを 示 して い
語
結
1)鼻
出 血 を主 訴 とした25才,男
子高血圧患
者 の泌 尿 器科 的検 査 中 発 見 さ れ,腎 別 除 術 に よ
つ て確 認 され た 石 灰 化 腎 動 脈 瘤 の1例 を報 告 し
た.
2)腎
動 脈 瘤 と腎 性 高 血 圧 との 関 連 性 お よび
腎 動 脈 瘤 の石 灰 化 の臨 床 的 意 義 につ い て 若 干 の
文 献 的 考 察 を 行 つ た.
3)本 邦 に お け る腎 動 脈 瘤 臨 床 報 告 の6例 を
一 括 して,簡 単 な要 約 を行 つ た.
(本論文の要 旨は昭和39年11月1日 第15回 中部連合
地方会において報告 した.)
る.腎 動 脈 撮 影 は3例 に施 行 され,土 屋 の 非 石
主
要
文
献
灰 化 例 で は血 管 拡 張 像 が診 断 の 根 拠 となつ て い
る.そ の他 腎 孟 圧 迫 像 を2例
に,患 側 腎 の 萎 縮
像 を3例 に 認 め て お り,こ れ らの所 見 も又 腎 動
ユ)Kment:Beitr.klin.Chir.,147:144,
1929.
2)Howard,Suby&Harberson;J.Uro1,,
脈 瘤 の 二 次 的 間接 的 病 変 として 見 逃 が す こ とは
出 来 な い,
45:41,1941.
3)Abeshouse:Uro1,cutan.Rev.,55:451,
発 病 か ら治 療 まで の期 間 と治 療 成 績 との相 関
1951.
につ い てみ る に高 血 圧 を伴 つ た5症 例 の 中発 病
4)v.Ronner1:Actaradio1.,39:385,1953.
か らの推 定 年 月 日の記 載 の あ る もの は4例 で,
5)Garritano:Amer.J,Surg.,94=638,
1例 が6ヵ 月 で あ る他,他
お よび6年
は3年6カ
月,5年
の長 期 にわ た つ て お り,全 例 に腎 易」
1957.
6)勝
目 三 十 人 他:日
泌 尿 会 誌,52,341,1961.
小 田他一 高血圧を伴つた石灰化腎動脈瘤例
7)Goldblatt,Lynch,Hanzal&Summer.
625
20)Fuller:NewEngl.J.Med。,267:757,
ville:J.Exp.Med.,59:347,1934.
1962。
8)Bemeike&Pollock:Uro1.Surv.,1:47,
21)Sidery:Amer.J.Surg.,105:269,1963.
1951.
22)Ippolito&Le▽een:工Uro1,,83:10,
9)Poutasse:J.Uro1.,77:697,1957。
1960.
10)Harrow&Sloane:J.Uro1.,81:35,1959.
23)DUx&Thurn:Fortschr・R6ntgenstr・.
11)Math6:J.Uro1.,82:413,1959.
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12)WhitleylRadiolog・y,78414,1962.
24)Andrenlakakis:Z.Urol.,55:11,1962.
13)Kaufman:J.Uro1.,89:498,1963.
25)Smith:J.Uro1.,76:685,1956.
14)ThurnDtsch.med.Wschr.,87:838,
26)Schoffer:Amer.J.Med.Sci.,227:417,
1962.
1954.
15)Crocker:NewEng1.J.Med.,267:794,
27)岸
1962.
本
孝
・ 松 本 恵 一 他:泌
尿 紀 要,7:962,
1961.
16)Spencer:Ann.Surg.,154:674,1961.
28)永
田 正 夫 他;日
17)Howard:BullJohnsHopkinsHosp.,94.
29)土
屋 文 雄
51,1954.
泌 尿 会 誌,53・428,1962。
・ 田 原 達 雄:日
泌 尿 会 誌,55:287.
1964。
30)勝
ユ8)RapoportNewEng1.J.Med.,263:
1159,1960,
目 三 千 人
・加 藤 哲 郎 他:臨
林 皮 泌,19:7.
1965..
(ユ965年3月9日
19)MiltonLancet.,726411024,1962.
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受 付)
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腹膜腔気体撮影像
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泄性腎孟撮影像
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図4大
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動脈撮影像
626
小田他一高血圧を伴つた石灰化腎動脈瘤例
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図5別
出腎前面
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出腎割面
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図7別
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出腎単純撮影像
図8別
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出腎逆行性腎孟撮影像
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図9動
脈瘤組織像(弱 拡大)