戦う研修医のための カンファ 『頭痛』と戦う! ~“緊急性の高い頭痛”にプラスαしてみよう~ 頭痛の国際分類 一次性頭痛 (頭痛もちの頭痛) 1.片頭痛(ずきんずきんタイプの頭痛) 2.緊張型頭痛(頭重タイプの頭痛) 3.群発頭痛(片目の激痛発作) 4.その他(スポーツをしたときの頭痛など) 二次性頭痛 外科的二次性頭痛 (主として脳神経外科的治療の対象となる頭痛) 5.頭部外傷による頭痛 6.血管障害による頭痛(くも膜下出血などによる頭痛) 7.脳腫瘍など頭蓋内疾患による頭痛 内科的二次性頭痛 (主として内科的治療の対象となる頭痛) 8.物質またはその離脱による頭痛(二日酔いの頭痛など。薬物乱用頭痛もここに分類) 9.感染症による頭痛(かぜの頭痛など) 10.ホメオスターシスの障害による頭痛(高血圧による頭痛など) その他の二次性頭痛 11.眼・耳・鼻、口腔疾患による頭痛 12.精神疾患による頭痛 第3部:神経痛と顔面痛 13. 神経痛と顔面痛 14. どれにも該当しない頭痛 一次性頭痛の分類 片頭痛 緊張型頭痛 群発頭痛 部位 片側性(60~70%) 両側性(30%) 両側性 必ず片側性 眼やこめかみの周囲 性質 誘因 拍動性 圧迫感・絞扼感 激痛・爆発痛 アルコール・チョコレート 赤ワインなど 心理的ストレス タバコ・アルコールなど 随伴症状 嘔気・嘔吐,暛明 前駆症状(閃輝暗点など) なし 眼球結膜の充血 流涙・鼻汁・発汗など 片頭痛 緊張型頭痛 片頭痛 • 思春期発症が多いが、あらゆる年齢に起こる • 女性の方が男性より約4倍多い • 全ての再発性頭痛症候群の中で最も重度の 痛みを生じる • 前兆の性質が特徴的であり、詳細な問診を 必要とする • 約50%が非拍動性頭痛をもつ • 約40%は両側性の頭痛である 片頭痛の前兆の性質 前兆のタイプ 頻度(%) ジグザグ 星または瞬き 暗点 半盲 56 83 40 7 感覚性前兆 失語 運動性前兆 20 11 4 前兆の持続時間 <30分 頻度(%) 70 30~60分 18 >60分 7 片頭痛の症状の特性 基準 吐き気 光過敏 音過敏 身体活動による増悪 片側性 拍動性 チョコレートで誘発 チーズで誘発 感度 82% 79% 67% 81% 66% 76% 22% 38% 特異度 96% 87% 87% 78% 78% 77% 95% 92% LR+ 23.2 6.0 5.2 3.7 3.1 3.3 4.6 4.9 LR- 0.19 0.24 0.38 0.24 0.43 0.32 0.82 0.68 片頭痛の問診“POUND” • • • • • Pulsating(拍動性) hOurs(4~72時間) Unilateral(片側性) Nausea(吐き気) Disabling(何もする気が起こらなくなる) 4項目以上⇒片頭痛の可能性が極めて高い 2項目以上⇒片頭痛の可能性が低い 片頭痛の治療原則 • • • • • 睡眠 ストレス 食事 くすり その他 片頭痛の急性期治療 日本神経学会 慢性頭痛治療ガイドライン(臨床神経 42; 330-360, 2002) • Group 1(確実な有効性) トリプタン系製剤 アセトアミノフェン+アスピリン、アスピリン、イブプロフェン • Group 2(ほぼ確実) クロルプロマジン(静注)、ナプロキセン • Group 3(不確実) エルゴタミン、アセトアミノフェン、メトクロプラミド • Group 4(無効) • Group 5(不明) 各トリプタンの特徴 • レルパックス: 確実な効果、半減期の長さ(再発しにくい) • イミグラン: 即効性、ペインフリー効果 • マクサルト: 味、立ち上がりの早さ、飲みやすさ • ゾーミッグ: 携帯のしやすさ、立ち上がりの早さ 予防が必要な場合 • • • • 片頭痛発作の頻度が多い 頓用薬無効 急性期治療薬が使用できない 急性期治療薬の頻用 緊張型頭痛 • 一般的に月に数回生じ、両側性の絞められ るような痛みと表現される • 持続時間は30分から7日間とバラバラ • 吐き気や嘔吐などの前兆はない • 通常の活動では増悪しない • より頻回の緊張型頭痛に侵されている人は、 頭痛の無い群と比べ、より高いストレス認識 レベルとより低い疼痛閾値をもつ • 活動に支障を来たすことはめったにない 緊張型頭痛の治療 • • • • • 適度な運動 ストレス対策 姿勢のチェック・矯正 寝具に注意 薬物療法 緊張型頭痛に有効とされる薬 • エビデンスレベルA(高い効果) NSAIDS • エビデンスレベルB(ある程度有効) 抗うつ薬(アミトリプチリン、ミアンセリン、マプ ロチリン) • エビデンスレベルB/C(あまり効果なし) チザニジン、エチゾラム 見逃せない“5 headache” 脳血管疾患 脳内感染症 脳腫瘍 緑内障 側頭動脈炎 生命の危険性あり! 失明の可能性あり! 頭痛に重要な3つの質問 増悪!突発!最悪! • 以上の質問に対してすべて「いいえ」 で答えた場合、危険な頭痛(脳血管 障害、脳腫瘍、髄膜炎)はほぼ100% 否定できる! Basugi A, Ikusaka M, Mikasa G, et al. Usefulness of three simple questions to detect red flag headaches in outpatient settings. Japanese Jounal of Headache 2006; 33: 30-3. より くも膜下出血 • 主にWillis動脈輪の嚢状動脈瘤の破裂により 起こる(約80%) • 1cm以上の動脈瘤の破裂率は0.5%/年 • 破裂の大多数は40~65歳の患者に生じる • SAHの死亡率は約50% • 「頭痛+発熱+項部硬直」といった髄膜炎様 の症状を呈することがある • Typical is atypical/Atypical is typical こいつは恐い!『警告頭痛』 • 10~50%に、SAHに先行する数週間に警告ま たは見張り頭痛があるといわれている • 要注意はsentinel bleeding! • この頭痛は通常SAHのような雷鳴頭痛と同種 であるが、24時間以内に消失する • 警告頭痛がある患者の約50%が、その頭痛の 時点で実際に医療機関を受診 している エビデンスを組み合わせてみましょう • SAHはERの頭痛患者のうち1~4%を占める • ERの頭痛患者のうち『人生最悪の頭痛』を訴 える患者の12%、『人生最悪の頭痛』+『神経 症状あり』の患者の25%にSAHを認める • 典型的な症状が揃うことは少ない(頭痛90%、 項部硬直74%、意識障害60%、昏睡27%) • 頭部CTの感度は時間とともに低下する • 髄液中の赤血球やキサントクロミーの検査は、 血管造影に次いで最も正確な診断法である 髄膜炎の身体所見 〔髄膜炎の診断における身体所見の感度〕 感度% 発熱 項部硬直 意識障害 古典的 三徴 神経学的 巣症状 皮疹 Jolt accent -uation test 85 70 67 46 23 22 97 〔髄膜炎の重症度別身体所見〕 軽症~重症全例 (CSF-WBC≧6) Kernigサイン Brudzinskiサイン 項部硬直 中等度以上 (CSF-WBC≧100) 感度 特異度 感度 特異度 5% 5% 30% 95% 95% 68% 9% 9% 52% 96% 96% 71% 重症 (CSF-WBC≧1,000) 感度 0% 25% 100% 特異度 95% 96% 70% 側頭動脈炎 • 大動脈弓部(特に外頸動脈)など中~大血管 の炎症性疾患である • 50歳以上、白人、男性:女性=1:2~3 • 頭痛の他、発熱、貧血(慢性炎症パターン)、 疲労感、体重減少など漠然とした症状を呈す ることが多い • 特徴的な症状として顎跛行と失明がある • リウマチ性多発筋痛症の15%に側頭動脈炎 が、側頭動脈炎の60%にリウマチ性多発筋痛 症がある 側頭動脈炎の症状/徴候の尤度比 症状/徴候 顎跛行 複視 数珠状の側頭動脈 拡張した側頭動脈 側頭動脈の脈拍消失 側頭動脈の圧痛 側頭動脈のあらゆる異常 滑膜炎 LR+ 4.2 3.4 4.6 4.3 2.7 2.6 2.0 0.41 LR- 0.72 0.95 0.93 0.67 0.71 0.82 0.53 1.1 エビデンスを組み合わせてみましょう • ESRは側頭動脈炎の除外に有用(感度96%) ・ESR異常:LR+1.1、LR-0.2 ・ESR>50mm/時:LR+1.2、LR-0.35 ・ESR>100mm/時:LR+1.9、LR-0.8 • 側頭動脈超音波が行われることもあるが、生 検を回避できるほどの特異度はない • 診断のゴールドスタンダードは側頭動脈生検 • 側頭動脈生検の感度85%、特異度100%(LR +∞、LR-0.15) その他の注意点(頭痛のred flag ) ◆今までの頭痛と根本的に違う,進展する。初めての、また は最強の頭痛 ◆急激発症の頭痛(5分以内に最強点に達する超急性のも の。睡眠から目覚めてしまうものも含む) ◆ 全身症状(発熱、るいそう、痙攣) ◆神経局在所見を1時間以上伴う頭痛 ◆ 5歳未満、50歳以上の初めての頭痛 ◆癌を持つ患者、免疫不全患者、妊婦の初めての頭痛 ◆意識障害や意識消失を伴う頭痛 ◆運動、性行為、バルサルバ法により誘発された頭痛 ◆最近の頭部外傷
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