検査診断総論 • 検査の感度と特異度 • 基準範囲 • カットオフ値とROC曲線 • 尤度比 検査結果の表現 • 定性検査:結果が陰性か陽性となるもの • 半定量検査:ー、±、+、++、+++など • 定量検査:結果が数値として報告されるもの • 波形、パターン:心電図、電気泳動など • 画像:血液像、病理、X線検査、その他 検査の使われ方 検査陽性 疾病あり 検査陰性 疾病なし 実際には 検査陽性 疾病であること が多いが、ない 場合もある 検査陰性 疾病でないこと が多いが、ある 場合もある さらに 検査A 陽性 検査B 陰性 検査C 陽性 検査D 陰性 検査E 陽性 疾病は? 検査と疾患の関係 • 多くの検査は、複数の疾患(病態)で 陽性となる • 特定の疾患でしか陽性を示さない検 査もある(特殊検査) 検査の使い方 • ふるい分けのための検査 (スクリーニング) • 診断を確定するための検査 (確定診断) • 他の疾患を除外するための検査 (除外診断) • 経過観察、治療効果判定のための検査 検査の特性(能力)の評価 • まず特定の検査と、特定の疾患の組を考える 疾患 有 検 査 陽 性 陰 性 無 真陽性 偽陽性 偽陰性 真陰性 感度、特異度 疾患 検 査 • 感度(sensitivity) 陽 性 陰 性 有 無 a b c d = a / (a + c) (その検査による疾病発見の能力) • 特異度(specificity) = d / (b + d) (非患者を陽性としない能力) 感度も特異度も高い検査 検 査 疾患 陽 性 陰 性 有 無 a b ー c ー d • 偽陽性、偽陰性となる確率が低い • 検査陽性ならばその疾患、陰性ならばその疾 患でないといえる • 従って、その検査だけで診断が確定できる • このような検査は、一般にリスクが高く(侵襲 が大きい)、経費も大 感度が高い検査 疾患 検 査 陽 性 陰 性 有 無 a b c0 ー d • 偽陰性となる確率が低い(患者群) • 偽陽性となる確率はさまざま(非患者群) • その疾患に罹患していれば、大部分が検査陽 性となる(スクリーニングに有用) • 検査が陰性ならば、その疾患をほぼ否定でき る(除外診断) 特異度が高い検査 疾患 検 査 陽 性 陰 性 有 無 a b ー c d • 偽陽性となる確率が低い(非患者群) • 偽陰性についてはさまざま(患者群) • その疾患に罹患していなければ、大部分が 検査陰性 • このような検査で陽性となれば、その疾患に 罹患しているといえる(確定診断) 疫学的指標 疾患群総数(a+b)と 非疾患群総数(c+d) とが、母集団における それぞれの群の比率 を反映している場合は 疾患 検 査 陽 性 陰 性 有 無 a b c d 有病率(prevalence) = (a + c) /(a + b + c + d) 有効度(efficiency) = (a +d) /(a + b + c + d) その他の検査の効果指標 検 査 陽 性 陰 性 疾患 有 無 a b c d 陽性反応的中度(Positive Predictive Value) = a / (a + b) 陰性反応的中度(Negative Predictive Value) = d / (c + d) ベイズの定理 P(D/T+) = • • • • • P(D)×P(T+/D) P(D)×P(T+/D) +P(noD)×P(T+/noD) T+は検査陽性、P( / )は条件付き確率 P(D) = 疾患頻度(有病率) P(T+/D) = 感度 P(noD) = 1 - P(D)(疾患頻度) P(T+/noD) = 1 - 特異度 ベイズの定理 陽性反応的中度 =検査陽性者が疾患に罹患している確率 = 有病率×感度 有病率×感度+(1-有病率)×偽陽性率 (=1-特異度) 計算すると 疾患 検 査 陽 性 陰 性 有 無 9 1000 1 100,000 有病率(事前確率)=0.01% 感度=90% 特異度=99% 陽性反応適中度(事後確率)=0.9% !! 尤度比(ゆうどひ:likelihood ratio) 尤度比 = その状態のひとがその検査結果となる確率 その状態にないひとがその検査結果となる確率 = 感度 1-特異度 (検査陽性の場合) = 1-感度 特異度 (検査陰性の場合) 尤度比が大きければ(10以上)確定診断に 小さければ(0.1以下)除外診断に有用 定量的検査の解釈基準 • 基準範囲 – 基準個体群(通常は健常者)の95%が含 まれる範囲 • カットオフ値 – 特定の疾患(病態)の有無を識別するため の値 • その他、治療目標値などもある 基準範囲とカットオフ値の関係 健常者群 カットオフ値 疾患群 基準範囲 実際の検査値分布 0.12 0.1 健常者 肝疾患患者 Frequency 0.08 0.06 0.04 0.02 0 1 10 100 GPT (IU/l) 1000 基準範囲の設定 健常者の検査値分布は正規分布ばかりではなく、 対数正規分布などさまざまな場合がある • ノンパラメトリック法 – 測定値を小さい順に並べ、上下2.5%のデータを 除いた範囲 • パラメトリック法 – 正規分布、対数正規分布等の分布モデルを仮定 – 正規分布の場合 平均±1.96×標準偏差の範囲 なぜ「正常値」といわなくなったか • 健常者=「健康なひと」を明確に定義、識別 することができない • 「健康」は「病気ではないこと」だから、その範 囲は時代とともに変わる • 明確な選別基準を決めて、その条件を満た す個体群(基準個体群)の95%を含む検査 値の範囲だから「基準範囲」 基準範囲はあくまでものさし • 検査値が基準範囲内であれば正常(健康)と いうことでは決してない! • 個体の検査値の変動は、集団の変動(基準 範囲)にくらべてずっと小さい • 基準範囲内であっても、一定の傾向で値が変 動していれば、なんらかの問題が潜んでいる カットオフ値の決め方 非疾患群 疾患群 カットオフ値を動かして、 感度や特異度が望ましい 値をとるところに決める ROC曲線 (Receiver Operating Characteristic curve) 1 理想的な検査 感 度 一般の検査 役に立たない検査 0 1 偽陽性率=1-特異度 曲線が左上に偏っていて 曲線下の面積が大きい検 査ほど有用! 検査の比較もできる • ROC曲線の曲線下面積(AUC)は、その検査 による、その疾患の識別能力を反映する – 理想的な検査 → 1 – 役に立たない検査 → 0.5 • AUCの大きな検査ほど、疾患の識別能力が 高い(疾患群と非疾患群の分離がよい)とい える 検査の一般的な進め方 スクリーニング 感度の高い検 査で真の疾患 を取りこぼさな いよう絞込み 侵襲、経費が少ない検査 除外診断 確定診断 感度の高い検 査で、他の疾 患を除外し 特異度の高 い検査で診 断を確定 侵襲、経費が大きい検査
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