初級ミクロ経済学 -生産者行動理論- 2014年10月20日 古川徹也 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 1 生産者行動理論の目的 市場において, (1)生産物市場(消費者が消費する財・サー ビスの市場)では供給側, (2)生産要素市場(生産に必要な投入物の市 場)では需要側, として振る舞う生産者の行動を分析する。 以下では「生産者=企業」と考える。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 2 「合理的」な企業 「合理的な」企業の目的は, 技術的制約のもとでの利潤の最大 化 である。 利潤とは, 利潤=収入(売上)-総費用 である。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 3 なぜ利潤最大化と見なしてよいか なぜ利潤最大化とみなしてよいか (1)株式会社ならば当然だから (2)利潤最大化を目指さない企業 が市場で生き残ることはほとんど不 可能だから。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 4 プライステイカー ここで考える企業はプライステイカーであるとする。 プライステイカー:市場で決まる価格を与件として 行動する。 市場に比べてあまりにも小さいので,他の企業の行 動を変えずに自分だけが行動を変えても,価格に影 響を与えることができない。→ 他の企業の利潤に影 響を与えない。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 5 企業の利潤 総収入:(生産物の価格)×(生産量) 生産量は企業が決める。そのとき,生産物の価格は 与件(プライステイカーだから) 費用:ある生産量を生産するのに最適な(費用を最 小化した)生産要素が選ばれているとする(合理的 だから)。 費用は生産量の関数として表される。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 6 1生産物,2生産要素,生産関数 この講義では, (1)労働 (2)資本 の2種類の生産要素(投入物)を用いて,1種類の生産 物を生産するモデルを考える。 生産物の生産量を y ,労働投入量を L ,資本の 投入量を K とおくと, y f ( L, K ) とあらわせる。利潤最大化を仮定するので,通常は等号 だけを考えればよい。この f ( L, K ) を生産関数と呼ぶ。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 7 生産関数の形状の例 この講義では,もう少し複 雑な形状となる生産関数 を考える。 https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1996/00424/contents/004.htm 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 8 限界生産物 各生産要素の限界生産物:残りの生産要素の水準を 一定とおいて,考えている生産要素の投入量を追加 的(限界的)に1単位増やしたときに,生産量がど れだけ増えるかを表す量 数学的には偏微係数のことである。 (1)労働の限界生産物 f ( L, K ) (2)資本の限界生産物 2014年10月20日 L f ( L, K ) K 初級ミクロ経済学 9 限界生産物の図 限界生産物の大きさを図で考える。 労働の限界生産物:資本を一定とおいて,横軸に労 働投入量,縦軸に生産量をとったグラフを考える。 (労働の軸に平行に生産関数を切った断面) 上のグラフの接線の傾きが労働の限界生産物。 ある投入量までは逓増するが,途中から逓減するよ うなものを考える。 資本の場合も全く同様。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 10 「限界」と「平均」 「限界」と「平均」 (1)限界:独立変数にあたるものを追加的に1単位変 化させたときに,従属変数が何単位変化するか。 (2)平均:従属変数を独立変数で割ったもの。 図で区別する「限界」と「平均」 (1)限界:グラフ上の1点における接線の傾きの大き さ。 (2)平均:グラフ上の1点と原点とを結んだ線分の傾 きの大きさ。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 11 労働の平均生産物(生産性) ある生産量について,そのときの労働投入量で割っ た大きさを「労働の平均生産物」と呼ぶ。 f ( L0 , K 0 ) L0 労働投入量と生産量とのグラフにおいて,グラフ上 の1点と原点とを結んだ線分の傾きがそれにあたる。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 12 可変生産要素と固定生産要素 生産者行動モデルでは,短期と長期の区別が たいへん重要である。それと関連する可変, 固定の概念を説明する。 企業が投入量を選択できるような生産要素を 可変生産要素と呼ぶ。また企業が投入量を選 択できない(与件として見なす)生産要素を 固定生産要素と呼ぶ。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 13 長期と短期 長期:すべての生産要素の投入量を企業が選 択できるほど十分に長い期間。したがって, 長期ではすべての生産要素が可変生産要素と して扱える。 短期:労働投入量は選択できるが,資本投入 量は与件となるような期間。したがって,労 働は可変生産要素だが,資本は固定生産要素。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 14 費用最小化問題 与えられた生産量を生産するときに,費用を 最小化するような生産要素投入量の組み合わ せを考える問題を,費用最小化問題という。 労働の価格を ,資本の価格を とする。 問題は以下のようになる。 r w min wL rk s.t. y f ( L, K ) 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 15 費用最小化問題(続き) 短期では K は与件 K 0。したがって,与えら れた生産量を生産するための労働投入量は, 制約条件式より自動的に決まってしまう。つ まり,労働や資本の価格に関係なく, y f ( L, K 0 ) を満たす Lである。 長期では与えられた生産量を生産できる組み 合わせを自由に選べるので,最小化問題は複 雑となる(後の課題)。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 16 短期の総費用 固定生産要素投入量は一定(与件):固定生 産要素にかかる費用(固定費用)も一定。 可変生産要素投入量は,生産量の変化すると 変化する。これは短期の生産関数の逆関数と なっている。 可変生産要素投入量にその価格を掛けたもの が,可変生産要素にかかる費用(可変費用) である。 可変費用と固定費用の和を総費用と呼ぶ。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 17 短期の総費用:式とグラフ 固定費用: FC rK 0 (一定) 1 可変費用: VC ( y ) wL( y ) wf ( y; K 0 ) 総費用: C ( y ) VC ( y ) FC 短期の総費用のグラフ:黒板 このグラフを総費用曲線と呼ぶ。 縦軸との交点と原点との長さは,固定費用の 大きさを表していることに注意。 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 18 限界費用,平均費用,平均可変費用 限界費用: MC ( y ) C ( y ) VC ( y ) 総費用曲線(可変費用曲線)の接線の傾き 平均費用: AC ( y ) C ( y ) / y 総費用曲線上の点と原点を結んだ線分の傾き 平均可変費用: AVC ( y ) VC ( y ) / y 可変費用曲線上の点と原点を結んだ線分の傾き グラフ化するとどうなるか?:黒板 2014年10月20日 初級ミクロ経済学 19
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