初級ミクロ経済学 -ゲーム理論入門- 2014年12月15日 古川徹也 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 1 戦略型ゲームの定義 戦略型ゲームとは,以下の3つの要素に よって構成される。 (1)プレイヤー (2)各プレイヤーの戦略 (3)各プレイヤーの利得関数(あるいは 単に利得) 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 2 戦略型ゲームの例 隣り合った二つのガソリン・スタンドA, Bが,ガソリン価格を同時に決めようとし ている。 ガソリン価格は高価格(Hであらわす)か 低価格(L)のどちらかしか選べない。 客は安い方のスタンドに行くが,同価格 なら半分ずつ分け合う。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 3 戦略型ゲームの例(続き) どちらもHを選ぶ場合,両方とも2を得る。 どちらもLを選ぶ場合,両方とも0を得る。 片方がH,片方がLを選ぶ場合,Hを選んだ方 はお客がゼロとなり,-2,Lを選んだ方は, 3を得る。 これは典型的な囚人のジレンマの状況。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 4 利得行列であらわす 図4.2 A\B H L H 2,2 -2,3 L 3,-2 0,0 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 5 プレイヤーと戦略 図4.2 A\B H L H 2,2 -2,3 L 3,-2 0,0 プレイヤー:A,B 戦略:H,L 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 6 戦略の組と利得関数 図4.2 A\B H L H 2,2 -2,3 L 3,-2 0,0 戦略の組:(H,H), (H,L), (L,H),(L,L) 利得関数:戦略の組に対して,利得を対応 させる関数 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 7 戦略の組と利得関数 Aの利得関数 u A ( H , H ) 2, u A ( H , L) 2, u A ( L, H ) 3, u A ( L, L) 0 Bの利得関数 u B ( H , H ) 2, u B ( H , L) 3, u B ( L, H ) 2, u B ( L, L) 0 左側がAの行動,右側がBの行動 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 8 プレイヤーの合理性と支配戦略 プレイヤーの合理性:直面しているゲー ムの構造を隅々まで誤りなく熟知してお り,他のプレイヤーの戦略が決められた 時,自分の利得を最大化する戦略を求め ることができる。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 9 プレイヤーの合理性と支配戦略 支配戦略:プレイヤー i のある戦略 si が, 他の任意の戦略 si' に対して,i 以外のプレイ ヤーのどんな戦略の組 siについても, u i ( si , si ) u i ( s , si ) ' i を満たすとき,si をプレイヤー i の支配戦略 と言う。 すべてのプレイヤーに支配戦略が存在する とき,その支配戦略の組を支配戦略均衡と 呼ぶ。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 10 支配戦略均衡は? A\B H L H 2,2 -2,3 L 3,-2 0,0 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 11 支配戦略均衡は? A\B H L H 3,3 -2,2 L 2,-2 0,0 支配戦略が存在するのはかなり特殊なケース 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 12 戦略型ゲームの均衡 以下ではナッシュ均衡を考える。 支配戦略均衡は必ずナッシュ均衡である が,支配戦略均衡が存在しない場合でも ナッシュ均衡は存在しうる。 非協力ゲームにおいてもっとも基本的な 均衡概念と言える。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 13 ナッシュ均衡(1)最適反応 最適反応: i を除くほかのすべてのプレイ ヤーの戦略の組 si が与えられたとき si に対する i の最適反応とは,プレイヤー i ' が取れるどのような戦略 si に対しても u i ( si , si ) u i ( s , si ) ' i を満たすような戦略 si である。 最適反応は相手の戦略に依存するので,最 適反応関数 BRi ( si )と表現できる。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 14 ナッシュ均衡(2) 合理的期待とナッシュ均衡 (ナッシュ)均衡となる戦略を * 1 * n ( s ,..., s ) 合理的期待:各プレイヤー i は,他のプレイ * ヤーがプレイする戦略を si と予想する。 ナッシュ均衡:すべてのプレイヤー i につい て,BRi ( s*i ) が成立する戦略の組 のことを言う。 2014年12月15日 ( s1* ,...,sn* ) 初級ミクロ経済学 15 ナッシュ均衡は? A\B H L H 3,3 -2,2 L 2,-2 0,0 支配戦略均衡は存在しないが,ナッシュ均衡は存 在する。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 16 ナッシュ均衡の特徴 自己拘束的である。つまり,どのプレイ ヤーにも単独で逸脱するインセンティブ がない。 混合戦略まで含めれば,有限のプレイヤ ー,有限の行動選択肢のもとではナッシ ュ均衡は存在することが示されている( ナッシュ均衡の存在定理)。したがって ,「ないものの性質を議論する」という リスクがない。 2014年12月15日 初級ミクロ経済学 17
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