初級ミクロ経済学 -余剰分析- 2014年11月14日 古川徹也 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 1 いままでの講義のポイント 需要曲線と供給曲線の交わるところで市場均衡 価格,市場均衡数量(取引量)が決まる。 需要曲線は,消費者の予算制約のもとでの効用 最大化行動から導かれる。 供給曲線は,生産者(企業)の技術の制約の下 での利潤最大化行動から導かれる。 すべて現象を説明しているだけであり,それが 望ましいかどうかを教えてくれるわけではない 。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 2 ミクロ経済学における 「望ましさ」の基準 ミクロ経済学では望ましさの基準を「効率性」 におく。 効率的である=無駄がない では「無駄がない」とはどういうことか。 (1)生産が最低の費用で行われている。 (2)人々にとって不要なものが作られていない 。 (3)別のものを作ればもっと望ましくなる余地 がない。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 3 パレート効率性 ある実現可能な資源配分(何をどれだけ作り,ま たそれらが誰にどれだけ配分されるのか)に対し て,他の実現可能な資源配分の中に,以下の条件 を満たすものが見つからないとき,考えている資 源配分はパレート効率的であるという。 (1)もとの資源配分にくらべて,すべての消費者 が悪くならない。 (2)少なくとも1人の消費者の状態はよくなる。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 4 具体例(1)電車の座席 席は12席あるとする。 客は座らないよりも座っているほうが望ましいと する。 効率的?非効率的? (1)客が12人で,全員座っている。 (2)客が8人で,全員座っている。 (3)客が15人で,12人が座り,3人が立つ。 (4)客が10人で,8人が座り,2人が立ってい る。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 5 具体例(2)柿をわけよう 消費者はAとBの2人。 財は柿しかない(考えない)。全部で10個ある とする。 AもBも柿をできるだけ食べたい。 効率的?非効率的? (1)Aに5個,Bに5個 (2)Aに6個,Bに4個。 (3)Aに4個,Bに5個。 (4)Aに10個,Bに0個。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 6 具体例(3)2財モデル 消費者はAとBの2人。 財は柿と梨しかない(考えない)。それぞれ10 個あるとする。 A,Bともに柿と梨に関する無差別曲線は前にやっ たものと同じような形。 効率的?非効率的? (1)Aに柿3個,梨6個,Bに柿5個,梨1個, (2)Aに柿2個,梨9個,Bに柿8個,梨1個, エッジワースボックスを使って考えてみよう 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 7 余剰分析とは何か 前と同様の効率性について,需要・供給曲線を 使って考えるモデル。 ある1種類の財の市場に絞って考えることで, 政策の影響などを深く考えることができる。 エッジワースボックスと目的は一緒だが道具が 違う。より単純(たぶん) 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 8 余剰分析の直観的な意味 消費者の「お得分」=消費者余剰(Consumer Surplus,CS) 生産者の「お得分」=生産者余剰(Producer Surplus,PS) 両者の合計=社会余剰(Social Surplus) 社会余剰の大きさによって(その市場における) 効率性を測る。またCSやPSの大きさによって,政 策の影響について考える。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 9 消費者余剰 消費者の「お得分」:「ここまで払ってもよい と考えたのに,それ以下で済んだ」。その差額 の合計。 限界便益曲線(限界評価曲線)を考えるのがポ イント。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 10 消費者余剰の考え方 ビール1杯1000円だった ときの余剰の大きさ 0 1 2 3 4 5 6 http://www.kabu-gakkou.com/2005/11/post_28.html 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 11 消費者余剰の考え方(1杯1000円) 杯目 払っても よい額 実際に 払う 余剰 (お得) 余剰合計 1 2000 1000 1000 1000 2 1300 1000 300 1300 3 800 1000 -200 1100 4 500 1000 -500 600 5 300 1000 -700 -100 -6 250 1000 -750 -850 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 12 消費者余剰の考え方(1杯400円) 杯目 払っても よい額 実際に 払う 余剰 (お得) 余剰合計 1 2000 400 1600 1600 2 1300 400 900 2500 3 800 400 400 2900 4 500 400 100 3000 5 300 400 -100 -2900 -6 250 400 -150 -3050 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 13 消費者余剰:一般的 p 限界便益曲線=需要曲線 CS 赤:マイナスのCS p* 0 2014年11月14日 X * X 初級ミクロ経済学 X 14 限界便益曲線と需要曲線 限界便益曲線と価格に対応する水平線の交点が ,消費者余剰を最大化する消費量である。 消費者余剰を最大にする消費量=需要量と見な せるので,限界便益曲線を需要曲線と見なすこ とができる。 消費者行動理論との関係は?:一定の条件のも とでは,「限界代替率=価格比」の関係から限 界便益曲線を導けるので,前の議論とは矛盾し ない。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 15 価格変化と消費者余剰 p 価格低下によるCS の増加分 p1 p2 0 2014年11月14日 X1 X2 初級ミクロ経済学 X 16 生産者余剰 生産者余剰の意味はきわめて明確。利潤に固定 費用を加えたもの,である。 上のことは,(1) 供給曲線が限界費用曲線と等 しいこと,(2) 限界費用曲線の下側の面積は可 変費用に等しいこと,からわかる。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 17 生産者余剰 p 供給曲線 =限界費用曲線 収入-可変費用 =利潤+固定費用 p 全体の長方形が 収入 この生産量での 可変費用 2014年11月14日 X 初級ミクロ経済学 X 18 価格変化と生産者余剰 p 供給曲線 =限界費用曲線 p 価格が上がったこと による生産者余剰 の増加分 p X 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 X X 19 市場均衡と社会余剰 p CS+PS=SS p* 供給曲線 CS PS 需要曲線 X 2014年11月14日 * 初級ミクロ経済学 X 20 市場メカニズムについて MB, MC 社会全体に とってのMC 社会全体に とってのMB X1 X 2014年11月14日 * X2 初級ミクロ経済学 X 21 社会余剰を最大にする生産量 X1では,生産量を1単位増やしたとき, 限界便益>限界費用が成立しているから ,もっと生産を増やしたほうがよい=社 会余剰は最大化されていない。 X2では,生産量を1単位減らしたとき, 便益の減少によるSS減(限界便益)<費 用の節約によるSS増(限界費用)となる から,生産を減らしたほうがよい=社会 余剰は最大化されていない。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 22 市場均衡と社会余剰を 最大にする生産量との関係 社会余剰を最大にする生産量,すなわち * 効率的な生産量は X X *を達成するメカニズムは市場メカニズ ムに限らない。計画経済でもよい。 しかし市場メカニズムならば,各消費者 ,各企業が分権的に意思決定しても達成 できると言う意味で望ましい。 2014年11月14日 初級ミクロ経済学 23
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