線形台数学

線形代数学
4.行列式
吉村 裕一
4.1 面積、体積(1)
2
平面 R 上の二点A,Bをとるとき、座標原点Oと結ぶ線分OA、OBの位
置ベクトルを以下のように表す。
 a1 
OA  a   
a2 
 b1 
OB  b   
b2 
今Sの面積を a, b の関数と考え、
a1 b1
a b 
a2 b2
と表し、以下のような性質を持つ
(ⅰ) a b   a b
(ⅱ)任意のλに対して  a b  a b   a b
(ⅲ) a  c
(ⅳ)
b  a b  c b, a b c  a b  a c
1 
0 
e1    , e 2   に対し
0 
1 
e1 e 2  1
4.1 面積、体積(2)
行列式の表し方
b 
任意の a   1  b   1  に対し
b2 
a2 
a
a  a1e1  a2e2 , b  b1e1  b2e2
であるので
a
b  a1e1  a2e 2
 a1b1 e1
e1
e1   e1
e1
e1
e2   e2
e1  1
b1e1  b2e 2
e1  a1b2 e1
e 2  a2b1 e 2
e1  a2b2 e 2
e2
 a1b2  a2b1
よって
a1
b1
a2
b2
 a1b2  a2b1
と求まる。3次の行列式についても同様にして求めることができる。
4.2 行列式(1)
・行列式の定義
n次正方行列Aに対する行列式を次のように定義する
a11  a1n
det A 
a21  a2 n
 a1

a 2  an
an1  ann
この行列式は次の性質をみたす関数として定義する
1 (交代性)任意のi≠jに対し
2 (多重線形性)任意のiに対し
a1  a i  a j  a n   a1  a j  a i  a n
a1  ai  bi  an   a1  ai  an   a1  bi  an
3 (単位の定義)単位行列Iに対し
det I  1
4.2 行列式(2)
主な定理
(ⅰ) n個の列ベクトルのどれか2つが等しければ、行列式は
0である。
n
(ⅱ) λをスカラーとするとき det(A)   det A
ai  a jでお
(ⅲ) 任意のスカラーλと任意のi≠jに対し aを
i
きかえても行列式の値は変わらない。
(ⅳ)n次行列式はAの関数として唯1つ存在しその形は
1 2  n
ai11ai2 2  ain n
det A   sgn 
i
i

i
( i1in )
n
1 2
(ⅴ) dett A  det A
備考
1 2  n
 は(1
sgn 
 i1 i2  in 
2 ・・・ n)をi
1
i2  in 
に並べ替える
のに必要なだけ(-1)のべきを作ったもの
例:
1 2 
 1 2
0
1








sgn 


1

1
sgn


1
 1

 2 1
1
2




 1 2 3
   13  1 sgn 
 3 2 1
4.2 行列式(3)
(ⅵ) n個のn次元ベクトルa1 , 
行列式の定義の条件のうち
, an の関数 f a1 ,  , an  が
1 (交代性)任意のI≠jに対し
f a1 ,  , ai ,  , aj ,  , an    f a1 ,  , aj ,  , ai ,  , an 
2 (多重線形性)任意のIに対し
f a1 ,  , ai  bi ,  , an   f a1 ,  , ai ,  , an   f a1 ,  , bi ,  , an 
をみたしているとき、
f a1 ,  , an   det a1  an  f e1 ,  , en 
が成立する。
4.2 行列式(3)
サラスの方法
4.3 行列式とその性質(1)
余因子
定義:行列式detAにおいてaij を交差点とする行ベクトルと列ベクトルを除いて
作る小行列を
a11

a1 j

a1n

ain

ann

Dij  ai1

aij
赤枠部分を除いて作った行列


anj
とし、それに(i,j)に対応する符号(1)
i j
an1
をかけたものを
Δij  (1)i  j Dij
とおき、detAの(i,j)-余因子(または余因数)といいこれを用いてdetAを以下
のように表せる。
det A  ai1Δi1  ai 2Δi 2   ainΔin (i  1,, n)
det A  a1 j Δ1 j  a2 j Δ2 j   anj Δnj ( j  1,, n)
4.3 行列式とその性質(2)
余因子を並べて作った行列を
 
adjA Δij
とおき、Aの余因子行列という。また、detA≠0ならAは正則であり、
逆行列 A 1 を次のように表すことができる。
A 1 
1 t
adj A 
det A
また、連立一次方程式
 a11
a
 21


 an1
 a1n   x1   b1 
 a2 n       

     

   
 ann   xn  bn 
において、係数行列Aの行列式が0でないならば解xは以下の式より求まる。
xi 
det a1  a i 1 b a i 1  a n 
(i  1,, n)
det A
a1 , , an :Aの列ベクトル
b b1,, bn 
t
4.4 行列の積と行列式(1)
定理
(1)
2つのn次正方行列A、Bに対し
detAB  det A  det B
(2)
Aが正則ならdetA≠0
(3) Aを(m,n)-行列、Bを(n,m)-行列としたとき(m,m)-行列AB
の行列式は
(i) m>nならば det(AB)=0
(ii) m<nならば det(AB)=  Al1 ,, lm Bl1 ,, lm 
l1 lm
4.4 行列の積と行列式(2)
グラムの行列式
m個のn次元ベクトルa1 ,  , amにたいして次の行列式をグラムの行列式という。
 a1 t a1  a1 t a m 





t
t
a m  a1  a m  a m 


a1 ,  , am が一次独立であるためにはグラム行列式が0でなければいけない。
宿題
1.次の行列式を計算せよ。
2 1 1
1 2 1
(i ) 1 1 2
1 1 1
1
2 1 3  2
1
1 7
1 1
(ii) 1
3 5 5 3
2
4  3 2 1
2.次の行列は正則かどうか調べ正則であるならば逆行列を調べよ。
 3 1 2


A  3 2 1
 4 2 3


3.行列式を用いて次の方程式を解け
 x  2y  z  6

3x  4 y  2 z  19
 4 x  2 y  3z  5
