長崎全共を生かした今後の 肥育牛への取り組み -黒毛和種(雌)肥育牛

長崎全共を生かした今後の
肥育牛への取り組み
-黒毛和種(雌)肥育牛へ
の飼料用米給与について-
担
当
家畜改良研究室 やまぐち和牛改良繁殖グル-プ
○西村隆光・中谷幸穂・岡崎亮
研究課題名 地 域 資 源 を 活 用 し た 高 品 質 な 県 産 和 牛 肉 の ブ ラ
ンド化
研 究 年 度 平 成 22 年 ~ 26 年
背
景
消費者の牛肉に求めるものが、安心・安全に加え食味や機能性など
多岐にわたっている中、県産肉用牛の牛肉特性を把握し、給与飼料に
よって、さらに付加価値を見出すため、やまぐち和牛の肉質特性とブ
ラ ン ド 化 に 関 す る 研 究 に 取 り 組 ん で き た 。 こ う し た 中 、 平 成 24 年 10
月 に は 和 牛 の オ リ ン ピ ッ ク と 言 わ れ る 第 10 回 全 国 和 牛 能 力 共 進 会 最
終審査が行われ、本県からも肉牛の部に5頭が出品された。
目
的
地域資源として畜産分野でも活用が進む飼料用米を活用して肥育し、
飼料摂取量や増体性、肉質への影響を調査する。
成
果
肥育全期に飼料用米を給与する試験区と給与しない対照区に分け、
各 6 頭(雌)ずつ飼育する。ま た 、 性 及 び 月 齢 の 違 い は あ る が 、
全 国 和 牛 能 力 共 進 会 の 結 果 を 踏 ま え 、肥 育 試 験 へ の 取 り 組 み を
検 討 す る 。
1
肥育期間中の 1 頭あたり飼料摂取量に差はない。(表1)
2
肥 育 終 了 時 の 体 高 及 び 体 重 、 肥 育 期 間 中 の 一 日 増 体 量 ( DG) の 平
均 値 は そ れ ぞ れ 試 験 区 : 132.0cm、 728.7kg、 0.77kg、 対 照 区 : 131.
5cm、 726.3kg、 0.76kg と 差 は な い 。 ( 表 2 )
3
主要な産肉形質である枝肉重量及びロース芯面積、脂肪交雑は、
そ れ ぞ れ 試 験 区 : 459.1kg、 52.8cm2 、 No.6.5、 対 照 区 : 458.6kg、
53.8cm2 、 No.6.2 と 差 は な い が 、 全 国 共 進 会 ( 去 勢 ) : 446.4 ㎏ 、
5 8 . 3 ㎠ 、№ 6 . 6 に 比 べ ロ ー ス 芯 面 積 及 び 歩 留 基 準 値 で 劣 る 。( 表 3 )
4
オレイン酸、不飽和脂肪酸の割合は、筋間脂肪及び腎脂肪で対照
区 が 高 い 傾 向 に あ る 。 モ ノ 不 飽 和 脂 肪 酸 割 合 ( MUFA 値 ) は 、 去 勢
よ り も 雌 で 高 い 。 (表 4 )
以上の成果より、肥育牛に飼料用米は、全期間を通じて給与量等を調
整することで利用可能であるが、出荷月齢の早期化や皮下脂肪厚の改
善等、肥育をより効率化する技術の検討が必要。
表1 飼料摂取量の比較
試 験 区
原物
TDN換算
1,198
1,337
394
区 分
(単位:㎏)
対 照 区
原物
TDN換算
1,717
1,360
395
前期用濃厚飼料
中後期用濃厚飼料
仕上げ用飼料
フスマ
3,178
3,071
大豆粕
210
211
圧片トウモロコシ
411
412
飼料米
628
0
濃厚飼料 計
4,177
4,094
乾草
184
195
イナワラ
795
808
467
478
ヘイキューブ
154
156
粗飼料 計
1,133
1,159
TDN合計量
3,645
3,550
※前期用濃厚飼料:ビタミン無し 中後期用濃厚飼料:ビタミン添加
表2 発育成績
単位:(日、㎝、㎏、%)
終 了 時
開 始 時
試験区
平均
標準偏差
日齢
295.0
11.3
対照区
平均
標準偏差
294.5
7.6
体高
113.5
2.3
113.0
1.5
体重
日齢体重
276.3
0.94
17.1
0.06
279.0
16.2
日齢
0.95
0.05
体高
体重
DG
884.0
11.3
132.0
2.5
728.7
44.8
0.77
0.05
883.5
7.6
131.5
3.0
726.3
26.9
0.76
0.06
表3 産肉成績の比較
単位(㎏、㎠、㎝、%、№、円)
枝肉重量 ロース芯
バラ厚
皮下脂
厚
歩留基
準値
BMS
BCS
単価
販売価格
4・5等
級率
試験区
平均
標準偏差
459.1
33.4
52.8
7.6
7.7
0.7
3.4
0.8
72.6
1.5
6.5
2.1
3.8
0.8
1,682
773,141
83%
対照区
平均
標準偏差
458.6
15.5
53.8
9.0
7.8
0.6
3.7
1.0
72.6
1.8
6.2
1.7
3.7
0.5
1,655
757,873
83%
平均
山口県代
表牛5頭 標準偏差
平均
全国共進
会 175頭 標準偏差
509.6
21.9
446.4
43.2
60.0
7.6
58.3
8.2
8.6
0.5
7.6
0.8
3.0
0.6
2.4
0.7
73.9
0.9
74.3
1.4
6.6
1.9
6.6
2.2
表4 脂肪酸組成
皮 下 脂 肪
不飽和
融点 オレイン酸
脂肪酸
試験区
平均
標準偏差
19.7
2.5
56.5
1.7
69.1
2.0
筋 間 脂 肪
不飽和
融点 オレイン酸
脂肪酸
24.5
1.9
55.1
3.5
64.2
3.1
80%
77%
単位:(℃、%)
腎 脂 肪
MUFA値
不飽和
※
融点 オレイン酸
脂肪酸
31.3
1.5
50.5
3.1
56.1
3.4
61.2
3.2
平均
19.9
57.0
68.3
22.8
58.1
66.1
32.6
52.9
58.2
63.5
標準偏差
1.3
1.5
1.7
2.4
2.7
3.4
3.7
2.4
2.7
3.2
山口県代
平均
60.4
表牛5頭 標準偏差
2.4
平均
全国共進
57.6
会 175頭 標準偏差
3.3
※MUFA値については、試験及び対照牛は筋間脂肪の分析値。共進会牛については、光ファイバー分光測光法による推定値
対照区