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重力波物理の進展と将来計画
BH
重力波
Gravitational
waves
田中 貴浩
(京大天体核)
1
一般相対論100年
Einstein 方程式の誕生
1915年11月25日
1


R    T  g  T 
2


(物理学会誌2015年2月号岡村さんの記事)
JGWCなどの団体が中心
となって10月~11月に全
国講演会を組織
2
一般相対論の検証
• 光の曲がり
ニュートン
アインシュタイン
太陽
• 水星の近日点移動
太陽
43秒角/100年
水星
• 重力による光の到達時刻の遅れ
火星
太陽
地球
3
間接的な重力波の存在証明
Pulsar は理想的な時計
重力波放出による近点通過時刻の変化
PSR B1913+16
Hulse-Taylor binary
dPorb/dt2.418×10-12
連星をなすpulsar による
一般相対論の検証
一般相対論の
予言
(J.M. Weisberg and J.H. Taylor, astro-ph/0407149. )
4
しかし、重力波はまだ直接観測されていない。
あまりにも電磁波と相互作用の強さが違う
陽子間にはたらく重力
=10-36
陽子間にはたらく電気力
Gravitation
wave detectors
TAMA300
⇒KAGRA
15 16 17 18 19 20 21 22
iKAGRA
27
28
bKAGRA
29 30
年
adv LIGO
adv Virgo
LIGO India
LISA pathfinder
Pre DECIGO
LISA
⇒DECIGO/BBO
eLISA
DECIGO
6
LIGO⇒adv LIGO
(Moore, Cole, Berry
http://www.ast.cam.ac.uk/~rhc26/sources/)
7
なぜ重力波なのか
強い重力場で一般相対論は本当に正しいのか?
gravitonはちゃんと伝播してくるのか?
ブラックホール時空の時空構造をプローブする。
Minkowski + perturbation を越えた時空構造を見る
重力波の強い透過力
宇宙初期を見通す力がある。インフレーション、リヒーティング
コンパクト天体の性質を調べるのに有効
バイナリーパラメータ、NSの半径、超高密度での状態方程式の決定
統計と宇宙論
基礎過程が理論的によく理解されている(これからさらに理解がすすむ)
プロセス(コンパクト天体の連星)がある。ビーミングも余り重要でないの
で観測によってイベントレートがばっちり決まる。
重力波源
質量
2



速度
重力波の振幅~
距離
ただでさえ重力波は弱いので質量も速度も最大限に大
きいものでないと観測は難しい
大きな質量⇒星全体の大域的な運動
最大の速度⇒光速に近い運動
強い重力場中では重力によって光速近くにまで加速
普通の星
中性子星やブラックホール
弱い重力場
強い重力場
9
様々な重力波源
• Inspiraling binaries
• (Semi-) periodic sources
– 十分離れた連星系 (合体する前)
• 距離の情報をもった様々な質量の連星の膨大なカタログ
– パルサー
• optical counter partと関連付けられる重力波源
– 超新星
– g 線バースト
• Stochastic background
– 初期宇宙からの重力波
– 分解できない foreground
10
Inspiraling binaries
連星系からの重力波からは様々な情報を引き出せる
– Event rate
– 連星の軌道パラメータ
– 一般相対論のテスト
• Stellar mass BH/NS
–
–
–
–
地上干渉計のtarget
中性子星の状態方程式
Possible correlation with short γray burst
primordial BH binaries (BHMACHO)
• Massive/intermediate mass BH binaries
– 銀河中心の巨大ブラックホールの形成史
• Extreme (intermidiate) mass-ratio inspirals (EMRI)
– BH時空のprobe
11
• Inspiral phase (large separation)
クリーンな系、質点近似がよい
星の内部構造はほとんど無視できる
一般相対論が正しければ、正確な波形の予測が可能


Merging phase - 数値相対論の領域
近年の目覚ましい発展
Ringing tail -
quasi-normal oscillation of BH
12
Inspiral phaseの理論的な波形予測の重要性が認識さ
れるきっかけとなった論文
for detection
for parameter extraction
for precision test of general relativity
13
• 2体が十分に離れている初期
合体までに何周期もの重力波を出す。
およそ、1周期程度
のずれがあると区別
できる。
14
Inspiral重力波波形の理論的予測
Post-Newton 近似 と BH perturbation
BH
スタンダードな
ポストニュートン近似
(v/c)展開
重力波
ブラックホール摂動
(/M)展開
16
Post-Newton 近似 と BH perturbation
• Black hole perturbation
• Post-Newton近似
 v << c

m1 >>m2
v v v v v v v v v v v
0
0
1
○
μ1
μ2
μ3
2
3
4
5
6
7
○ ○○ ○ ○○
○
○ ○ ○○
○
○○
○
μ4
post-Newton
1995
2004
8
9
10
v
11
○ ○ ○ ○
△
△
△
△
BH perturbation
2005
2014
2002
17
連星のパラメータ推定
M chirp   3 5 M 2 5 ,  

M
1Gpcの距離にoptimalなorientation
(Ajith and Bose 2009)
18
重力波波形からNSを調べる
1.97±0.04MOの中性子星の発見(J1614-2230)
(Demorest et al. (2010))
様々な状態方程式が排除される
19
重力波波形からNSを調べる
数値相対論による
1.45MONS-NS連星@100Mpcの合体波形予測
(Hotokezaka et al. (2011))
回転する巨大NSがtentativeに形成されて重力波を出す。
波形はEOSに非常に依存している。
EOSの違い
450Hz以下の感度
の高い領域で区別
できないか?
20
r
潮汐力(1/r 3)×潮汐変形(1/r 3)
∝潮汐エネルギー(1/r6)
ニュートン重力の束縛エネルギー(1/r)と比べると5PN(1/r5)オーダー
潮汐力のinspiral波形への影響の観測可能性の評価
S/N比16を仮定
実線が様々なEOSの場合のtidal
deformability
点線がadvLIGOでの1s level
(Damour, Nagar and Villain 1203.4352)
21
連星中性子星 合体のイベントレートの推定
発見された連星中性子星で宇宙年齢以内に合体するもの
double pulsar
NS-WD
total coalescence time
 c   GW
(Faulkner et al ApJ 618 L119 (2005))
E回転   2
E回転   4  
双極
放射
  A 3
定数
d  d 1




2
 2
2
3
dt  dt A
A
c  
1
2 
22
Merger rateのestimate
roughには我々の銀河一個あたりのevent rateは
R
i
Vgal
Vmax i  i 
Vmax i  観測されたNS連星を
仮想的に他の場所に置いた
ときにそれが観測されている
はずと考えられる場所の体積
0.4~400yr-1 for advLIGO/Virgo (Abadie et al. 2010)
23
(Kalogera et al. ApJ 601 L179 (2004))
NS-NS Binary coalescence = short g ray bursts?
short
long
Jetの方向とbinaryの回転軸はおそらく同じ向き
Jet
最大の重力波のamplitude
しかも、時間や方向がknown
ひくいS/Nでも検出可能
(~2.4倍遠くまで見える)
24
Epeak-Lpeak correlation
(いわゆる Yonetoku relation)
がSGRBにも拡張される
(Tsutsui et al. (2013))
LGRB
SGRB
Epeak-Lpeak correlation を
BATSEのデータに適用して
SGRBのレートを評価
(Yonetoku et al. 1402.5463)
SGRBがNS-NS (NS-BH) 連星合体であるなら,
events/yr for advanced detector networkが期待される
0.4~400yr-1 for advLIGO/Virgo (Abadie et al. 2010)とconsistent
25
電磁波対応天体の探索
重力波検出の
Confirmation
Origin of
extended
emission
新しい天文学を拓く
ビーミングされていない
4πの放射が有利
(Metzger and Berger 1108.6056)
NS-NS, NS-BHの合体では何らかの電磁波シグナルが放出されることが期待される。
何か見えるはずだと考えると、正体不明のSGRBと関係がある可能性が有力。
26
Macronova/Kilonova,
中性子星連星合体の際に放出される中性子過剰物質
⇒ r -processによる元素合成 (A>130)
1.35M ◎ +1.35M ◎ やわらかいが2M◎を支えられるEOM
(Hotokezaka et al. 1212.0905)
~0.2c
~10-4-10-2 M ◎のejecta mass
潮汐力による質量放出(NS半径大)
とショックによる質量放出(NS半径小)
NS半径小⇔質量放出大
27
Taken from
https://t2.lanl.gov/nis/tour/sch005.html
28
Ejectaの断熱膨張とphotonのdiffusion timeのつり合いから放
射のピークの時刻と明るさが見積もられる (Li & Paczynski 1998)
t peak
 v 
 10days

0
.
3
c


1 / 2
 M 




 0.01M  10cm2 /g 

◎ 

1/ 2
1/ 2
L peak
 f  v   M 
41
 10 erg/s - 6 
 
10
0
.
3
c


  0.01M ◎ 
Tpeak
 f   v 
 2 103 K - 6  

 10   0.3c 
1/ 2
1/ 4
1/ 8





2
10
cm
/g


 M 


 0.01M 
◎ 

1/ 8
1/ 2
 



2
 10cm /g 
3 / 8
最初のkilonovaの観測か?
(Tanvir et al. 2013)
29
SGRBからのextended emission
Extended emissionがGRB本体と同
程度のエネルギーを持つ場合もある
(Nakamura et al. arXiv:1312.0297)
Soft X-ray
emission
BZ効果による
BH回転エネル
ギーの継続的引
き抜き
Extended
emission
of SGRB
Pre-ejected
matter
降着円盤
Kerr BH
(Gompertz et al. arXiv:1302.3643)
jet
BATSE (>20keV) ~7%
Swift BAT (>15keV) ~25%
低いエネルギー領域で
検出確率が高くなる傾向
Fireball
(Nakamura et al. arXiv:1312.0297)
31
どうして、世界中で同じようなものが何台も必要なのか?
KAGRA LIGO
波の到着時刻が場所ごとに異なる
重力波のやってきた方向がわかる
電磁波での同時観測
32
LIGO-India
33
Sky position
複数台の重力波同時検出によっ
てエラーボックスを小さくできる。
NS-NS連星なら光度距離から距
離もある程度わかる。
重力波データ解析からは
5-10分での速報を目指している
KISS (1.05m) 4deg2
PTF (1.2m) 7deg2
LSST (8.4m) 9.4deg2
(Nissanke,Sievers, Dalal, Holz arXiv:1105.3184)
34
BH-BH連星
Pop III の星は大質量星が多い。進化過程での
質量放出がefficientでないためNS連星を作ろ
うとすると超新星爆発の質量放出で連星が解
体してしまう。しかし、BH-BH連星なら形成され
る可能性が十分にある。
total mass ~
> 60M ◎
Detection rate of 2nd generation
~140 ×Errsys [yr-1]
(Kinugawa et al. 1402.6672)
NS-NS Formation
>
質量交換
He星
SN
NS
common
envelope
He星
SN
ブラックホールの準固有振動
ブラック
ホール
~
ブラックホールの質
量と自転で決まる
振動数と減衰率
f l  2, Schwarzschild  200Hz60M◎ / M 
ブラックホール形成
の決定的証拠
(Detweiler ApJ239 292 (1980))
37
超新星爆発
Core collapse超新星爆発 (II型超新星)がシミュレーション
で起こるようになってきている
ニュートリノによるショック再加熱
多次元性が重要となる不安定性によるアシスト
(Janka et al. 1211.1378)
38
球対称性からのずれ
⇒重力波放射
• bounce
• convective matter motions,
SASI
• anisotropic neutrino emission
重力波による爆発のメカニズムの探査
距離10kpcで超新星爆発が
起きた場合の計算例
(Kotake et al. 1106.0544)
重力波とニュートリノの同時観測
Neutronization burstによるeのスパイク⇔bounceからの重力波
重力波振幅大 ⇔ core rotationが大 (Yokozawa et al. 1410.2050)
eと重力波の伝播速度の比較
重力波の伝播速度を ∼ 10 −15で制限 (Nishizawa et al. 1405.5544)
39
相対論の検証
弱い重力の近似での相対論の検証
• Parameterized post-Newton
g :gij components

light bending
1
1  g 1.75
2
VLBI unpublished?
 
1
g  1  1.6 10 4
2
 Shapiro time delay
1
3
-5
g  1  102×10
2
Cassini衛星
g
1  BD
1
 1
2  BD
BD
Ref) Will gr-qc/9811036
b : 1PN g00 components
g00  1  2U  2b U 2

perihelion shift
43 arcsec/100yr
b 1  3 103

Nordtvedt effect
自己重力energyに対する等価原理
b 1  6 104
40
PPNからPPEへ
h  f   A f 7 / 6ei  f 
Quasi-circular軌道の場合の重力波波形


A f   1   i u ai  AGR  f 
i




 f    GW  f    bi u bi 
i


(Yunes & Pretorius (2009))
ai>0 or bi>-1.7ではpulsar constraintを上回る

Constraints from
BH-BH merger
pulsar
constraint
b
a
12MOBH-6MOBH and 18MOBH-6MOBH mergers
Constraints from
BH-BH merger
pulsar
constraint
b
(Cornish et al. 1105.2088)
41
重力波伝播のテスト
20??年、10年間のデータを解析した研究チーム
は次のような結果を得て、記者会見をした。
「PSR1913+16までの距離は重力波によると4万
光年で、電波天文学による距離2万光年をどの
ように見積もっても約2倍大きい。つまり、重力
波が伝播している間に1部が消えていると考え
ざるを得ない…」
こんなことは理論的に可能か?!
42
1) Ghost-freeなbigravity modelが存在
(Hassan et al. 1109.3515)
2) そのモデルにはGRに非常に近い振る舞いをする
FLRW 背景時空解が存在
3) 太陽系の重力のテストで棄却されない
(Vainshtein mechanism)
4) 2種類の重力子の間に振動現象が起こる
(De Felice et al. 1304.3920)
5) KAGRAでも観測可能なパラメータ領域が存在
(Narikawa et al. 1412.8074)
43
将来は、宇宙重力波干渉計へ
eLISAやDECIGO/BBO
地球
太陽
高い角度分解能を実現
地上では地面の振動に邪魔されて観測できない
低振動数の重力波を宇宙から観測
44
Science by DECIGO
(川村静児さんのトラぺを借用)
Formation scenario of
super-massive BHs
Inflation / early universe
フォアグラウンドの除去
Dark energy, astrophysics
45
Deci Hz 帯の優位性
背景ノイズが低い
原理的には最高のS/Nが実現できるバンド
free from WD-WD binary confusion noise ( >0.25Hz )
相対論の検証、重力波の宇宙論への応用、いずれにおいても
もっとも高精度な観測ができるポテンシャルがあるバンドである。
高い角度分解能
他の波長に比べて原理的に100倍高い
太陽質量程度の連星の合体予報、電磁波による観測とシンクロ
Targetの存在という点においても自然
mass rangeとしては104 M◎程度までがターゲット、ringing tailはもう少し上まで、
巨大ブラックホール、銀河中心の成長プロセスを明らかにできる。
太陽質量程度の連星もtargetになる。
つまり、DECIGOが実現すれば、大きな成果を挙げることは間違いない。
それでも、現時点では野心的な計画
宇宙背景重力波に対する観測可能性
(Smith et al. astro-ph/0506422)
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まとめ
重力波直接検出は近い
重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開(新学術領域)
48
まとめ
様々な重力波源
A. Chirp Signal
NS-NS連星合体
NS-BH連星合体
BH-BH連星合体
中質量BHと太陽質量
天体の合体
BH-MACHO連星の合体
B. Bust Signal
非球対称な超新星爆発
ソフトガンマ線リピータの
巨大フレアー
宇宙紐のcuspやkink等
C. 連続波
非軸対称なパルサー
低質量X線連星
D. 背景重力波
超新星
宇宙紐
宇宙初期の相転移
E. 未知のソース
+重力理論や宇宙モデルのテスト
49