回復期リハビリテーションを早期に 開始するメリットの確認 -予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化によ る測定法を用いて鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟(医師) 澤田石 順 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 問題意識と目的 早期に回復期リハビリテーションが開始されるべ きことは明らかであるが、早期リハの効果はどのよ うな対象で大きく、どんな場合は小さいかについて の研究は十分になされているように思えない 予後因子の階層化による手法を用いて、発症後 31日未満とそれ以上の違いを明らかにするととも に、上述の疑問への答えを得る 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 対 象 2003年6月から2005年6月に退院した 脳卒中の506例 •診療データベースに登録され FIM のスコアが正しく記 載されている症例に限定 発症後30日以下 発症後31日以上 213例 293例 早期 非早期 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 方 法 1. 予後に関連する因子(以下、予後因子)を年齢 、入 院時発症後日数、入院時FIMと定義し、成果に関 連する指標(以下、成果指標)をFIM改善幅、自宅 退院率、在院日数とした。 2. 予後因子および成果指標は正規分布しないため、 中央値で代表する 3. 予後因子の階層化を行い、階層毎に成果指標を 算出し、統計学的な解析を行った。 •統計処理にはフリーソフトウェアの R version 2.0.1 を用いた 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時年令 80 70 77 74 60 50 40 30 20 10 0 早期 非早期 ♪結 果: p < 0.04 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時発症後日数 60 56 50 40 30 20 10 0 16 早期 非早期 ♪結 果: p<0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIM 70 60 61 50 45 40 30 20 10 0 早期 非早期 ♪結 果: p<0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 FIM改善幅 20 21 16 10 0 早期 非早期 ♪結 果: p=0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 在院日数 120 119 100 80 90 60 40 20 0 早期 非早期 ♪結 果: p<0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 急性期~回復期の総入院日数 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 175 106 早期 非早期 ♪結 果: p<0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 自宅退院率 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 0.65 0.46 早期 非早期 ♪結 果: p<0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 __________________________考 察 __________________________ 全体の結果について • 年齢は「早期」が3歳低い • 入院時FIMは「早期」が16点高い • FIM改善幅は「早期」が6点高い • 在院日数は「非早期」が1.32倍 • 総入院日数は「非早期」が1.65倍 • 自宅退院率は「早期」が19ポイント高い 1. 「非早期」グループは、より重症である 2. 「非早期」グループの在院日数が長いにもかかわらず、FIM 改善幅が小さいのは廃用症候の不可逆性を示唆する 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの階層 & FIM改善幅 早期 45 非早期 42.5 40 35 34 30 28 25 25 20 15 10 19 18 14.5 13 13.5 10 5 0 18-35 36-53 54-71 72-89 90- 「90-」以外の階層で p<0.05 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの階層 & 自宅退院率 早期 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 非早期 p=0.03 0.95 0.88 0.84 0.74 0.69 0.52 0.52 0.44 0.32 0.26 18-35 36-53 54-71 72-89 90- p=0.10 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの階層 & 在院日数 早期 140 136.5 非早期 133 126.5 124 120 106 100 98.5 97 80 63.5 60 61.5 48 40 20 0 18-35 p=0.16 36-53 p=0.002 54-71 72-89 p=0.017 90- p=0.013 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時年令の階層 & 入院時FIM 早期 77.5 非早期 75 70 60 50 40 50 47 45 41 43 44 37 30 28 20 10 0 50代 60代 p=0.005 70代 80代 90代 P<0.0001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時年令の階層 & FIM改善幅 早期 45 非早期 42 40 35 30 29 p=0.66 26 25 21 20 17 15 15 13.5 p=0.77 15 9.5 10 7 5 0 50代 p=0.078 60代 p=0.024 70代 80代 90代 p=0.074 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時年令の階層 & 在院日数 早期 非早期 150 126 125 123 117 111 123 120 111 103 100 86 89 60代 70代 75 50 25 0 50代 p=0.002 80代 90代 p=0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時年令の階層 & 自宅退院率 早期 非早期 100% 0.8 80% 0.74 0.72 0.65 0.65 60% 0.5 0.44 40% 0.35 0.3 0.25 20% 0% 50代 60代 p=0.10 70代 p<0.001 80代 90代 p=0.07 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 __________________________考 察 __________________________ 階層化による比較検討 • 入院時 FIM > 89以外のすべての階層で、「早期」グループのFIM改善幅 が有意に大きかった • 入院時FIM 54~71の層で、FIM改善幅の差異(27.5点)および自宅退院率 の差異(22ポイント)が最大 • 80代および90代では、入院時FIMおよびFIM改善幅に有意差なし • 60代と70代の在院日数は「早期」グループにおいて有意に短い 1. 80歳未満で入院時FIMが36~89の階層において、発症後 早期にリハビリテーションを開始するメリットが大きいことが 示唆された 2. 回復期リハ施設は、早期リハがより効果的なグループを優 先する政策を実行すべきかもしれない 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟
© Copyright 2024 ExpyDoc