予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階 層化による回復期リハの成果測定法の提唱 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟(医師) 澤田石 順 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 問題意識と目的 ◎回復期リハビリテーションの成果を測定・評価 する方法は未だ確立されていない ◎回復期リハの成果判定は、悪性腫瘍の治療 成績におけるごとく、対象の階層化を基礎とし て行われるべきであろう ▼本年2月に報告した”施設間、施設内病棟間 等での成果比較が可能な”方法を改良する 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 対 象 2003年6月から2005年6月に退院した 脳卒中の506例 •診療データベースに登録され functional independence Measure (以下 FIM) のスコアが正しく記載され ている症例に限定 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 方 法 1. 予後に関連する因子(以下、予後因子)を年齢 、入院 時発症後日数、入院時FIMと定義し、成果に関連す る指標(以下、成果指標)をFIM改善幅、自宅退院率、 在院日数とした。 2. 予後因子および成果指標の正規性を検定 3. 予後因子の階層化を行い、階層毎に成果指標を算 出し、統計学的な解析を行った。 •統計処理にはフリーソフトウェアの R version 2.0.1 を用いた 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 階層化の手法 1. 入院時FIM90以上は、FIM改善幅が小さくと も、自宅退院の確率が高く、施設間の差異 が出にくいと考えられるので一つのグルー プとする 2. 入院時FIMの階層化は、7段階または5段階 とする 3. 年齢の階層化においては、症例が少ない50 才未満は除外する 4. 発症後日数は30日毎の3階層とした 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIM(横軸)とFIM改善幅(縦軸)の散布図 このように、入院時 FIMのどの階層を とっても、平均値を中 心とした分布をして いないことに注目 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 _________________________結 果 _____________________________ 予後因子・成果指標の正規性→否定 1. Shapiro-Wilk検定(帰無仮説は正規分布する)では、 年齢、入院時発症後日数、入院時FIM、FIM改善 幅、在院日数のいずれについても、P < 0.000001 で正規性は否定された。 2. したがって、二群の差異判定には Wilcoxonの順 位和検定を用い、諸因子・指標は中央値で代表す ることとした。 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの7階層 & FIM改善幅 30 30 26 25 21 20 21 17.5 15 10 13 10.5 5 0 18-29 30-41 p=0.022 42-53 p=0.87 54-65 p=0.005 66-77 p=0.03 78-89 p=0.78 90- p<0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの5階層 & FIM改善幅 30 30 24 25 20 20 15 13 13 10 5 0 18-35 36-53 p=0.03 54-71 p=0.003 72-89 p<0.01 90p<0.01 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの7階層 & 自宅退院率 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 入院時FIMの中央値=50 自宅退院率=54% 92 82 67 60 52 35 25 18-29 30-41 42-53 54-65 66-77 78-89 p=0.03 90- p=0.07 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの5階層 & 自宅退院率 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 どの階層間でもp < 0.05 92.5 77 61.7 46 28.2 18-35 36-53 54-71 72-89 90- 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 退院時FIMの5階層 & 自宅退院率 87.2 90 80 70 60 47.8 46.4 54-71 72-89 50 40 30 20 10 0 20.6 12.6 18-35 p=0.18 36-53 p=0.001 p=0.86 90- p=0.0001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの7階層 & 在院日数 140 120 100 80 60 40 20 0 18-29 30-41 42-53 54-65 66-77 78-89 p=0.07 p=0.02 90- p=0.01 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時FIMの5階層 & 在院日数 140 どの階層間でもp<0.05 120 100 80 60 40 20 0 18-35 36-53 54-71 72-89 90- 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時年令 & FIM改善幅 35 35(6.9%) 症例数: 31 91(18%) 186(36.8%) 151(29.8%) 29(5.7%) 入院時年齢の中央値=76 30 25 21 20 18 14 15 9 10 5 0 50代 60代 p=0.01 70代 p=0.33 80代 p=0.004 90代 p=0.085 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 入院時発症後日数 & FIM改善幅 25 p<0.01 21 20 P<0.01 18 15 15 10 5 0 30日未満 症例数(%): 213(42.1) 31-60日 171(33.8) 61-90日 122(24.1) 入院時発症後日数の中央値=37 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 _________________________考 察_____________________________ 施設間等の比較をする手法 1. 入院時FIMの階層化: 成果指標に関する階 層間の差異は7段階では一部有意でなかっ た。データの蓄積が少ない施設が多いこと をも考慮して、5段階を推奨する 2. データがごく少ない場合は、成果指標の値 が中間のグループ(年齢が60~70代で入院 時FIM36~89)に絞って比較を行うのが妥 当と思われる 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 結 語 1.予後因子の階層化を基礎として成果指標を 判定する手法の改良を試みて、報告(提案) した。 2.この手法を用いて、院内回復期リハ病棟間、 年度毎、施設間等での成果比較を行うこと により、より優れた実践を明らかにし、成果 の向上につなげていきたい。 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟
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