院内の回復期リハ病棟間の成果比較 -予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による測定法を用いて鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟(医師) 澤田石順鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟問題意識と目的 回復期リハの成果判定は、悪性腫瘍の治療成績におけるごとく、対象の階層化を基礎として行われるべきであろう 予後因子の階層化による手法を用いて、当院の回復期リハビリテーション病棟(A, B, C)の成果を判定し、課題を探る鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟対象 2003年6月から2005年6月に退院した623例 A病棟 246例 B病棟 276例 C病棟 111例 2000年11月～ 2002年6月～ •診療データベースに登録され FIM のスコアが正しく記載されている症例に限定(脳卒中が78.6%) 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟方法 1. 予後に関連する因子(以下、予後因子)を年齢、入院時発症後日数、入院時FIMと定義し、成果に関連する指標(以下、成果指標)をFIM改善幅、自宅退院率、在院日数とした。 2. 予後因子および成果指標は正規分布しないため、中央値で代表する 3. 予後因子の階層化を行い、階層毎に成果指標を算出し、統計学的な解析を行った。 •統計処理にはフリーソフトウェアの R version 2.0.1 を用いた鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時年令 80 70 79 76 78 A B C 60 50 40 30 20 10 0 A-B: p < 0.05 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時発症後日数 50 40 42.5 40 41 B C 30 20 10 0 A 有意差なし鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時FIM 60 50 40 55 56 B C 48.5 30 20 10 0 A p=0.02 p=0.14 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 FIM改善幅 20 21 15 10 0 12 A B p=0.01 C p=0.0002 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟在院日数 120 100 116 103 98 80 60 40 20 0 A B p=0.0062 C p=0.001 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟自宅退院率 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 0.51 A 0.55 B 0.58 C 有意差なし鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時FIM<54の割合 A病棟 58.1% B病棟 46.0% C病棟 49.5% 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 __________________________考察 __________________________ 全体の結果について • A病棟の入院時FIMが他より低い • B南病棟のFIM改善幅が他より大きい 1. A病棟に重症患者が偏っていたことは明らかで、入院患者の振り分けが適切ではなかったことが示唆される 2. B/C病棟間で、予後因子において有意な差異はないものの、FIM改善幅はBが有意に大きく、C は自宅退院率が高く、在院日数は短い。この結果はB/C病棟間での取り組みの違いを示唆する鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時FIMの階層 & FIM改善幅 A 35 B B-A: p=0.087 B-C: p=0.021 30 C B-A: p=0.060 B-C: p=0.10 33 25 24.5 22 20 20 15 10 18 18 18 16 15 13 14.5 12.5 9.5 9 5 5 0 18-35 36-53 54-71 72-89 90- AとC間: 有意差なし鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時FIMの階層 & 自宅退院率 A 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 B C B-A: p=0.005 B-C: p=0.006 47.6 31.3 30 52 63.3 56.4 56 97 85 79 89 76 63.3 35 22 18-35 36-53 54-71 AとC間: 有意差なし 72-89 90- A-B: p=0.10 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時FIMの階層 & 在院日数 A 140 120 B C C-A: p=0.08 C-B: p=0.15 138.5 126 125 126 116 100 116 114 98 95 97 96 88.5 80 60 54 50 51 40 20 0 18-35 36-53 54-71 72-89 90- 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時年令の階層 & 入院時FIM A 80 70 B C 73.5 65.5 62.5 60 57 52 51 50 52 55.5 46.5 40 30 20 10 0 60代 70代 80代有意差なし鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時年令の階層 & FIM改善幅 A C 25.5 25 20 B 23 19.5 B-A: p=0.08 B-C: p<0.01 20.5 18.5 15 15 12 11.5 10 10 5 0 60代 70代 80代 B-C: p=0.02 B-A: p=0.22 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時年令の階層 & 自宅退院率 A B C 1 A-C: p=0.04 0.78 0.8 0.69 0.58 0.6 0.57 0.54 0.58 0.58 0.39 0.4 0.43 0.2 0 60代 70代 80代鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟入院時年令の階層 & 在院日数 A 125 B C 121 109 114 114 108 99 100 102 83.5 80.6 75 50 25 0 60代 A-B: p=0.05 70代 80代 A-C: p=0.09 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟 __________________________考察 __________________________ • 入院時FIM54～89の階層で、B病棟のFIM改善幅が有意に大きかった • 70代および80代で、B病棟のFIM改善幅が他より大きかった(80代のBA間のみ非有意) • 80代において、C病棟のFIM改善幅は最小であったが、自宅退院率は有意に高く、在院日数は有意に短かった。 1. 入院時FIMが54～89および入院時年齢が70～89才の階層で、最も明瞭なFIM改善幅の差異が認められたことから、施設間比較においても、これらの階層に注目すべきことが示唆される。 2. B/C病棟間に予後因子の有意差はないがBのFIM改善幅が大きく、Cの開設が19ヶ月遅いことから、蓄積された経験が成果に反映していることが示唆される 3. C病棟では80代のグループに対して、早期自宅退院への強力なアプローチが実行されていたのかも知れない鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟結語 1.予後因子の階層化による手法を用いて、院内病棟間比較を行った 2.病棟による成果の違いは明らかになったが、どの病棟のどのようなやり方が他より優れているかを知ることが今後の課題である鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟