6・文化の多様性と普遍性 2012.05.30. 成蹊教養・文化人類学の考え方 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [2] 前回 8本の民族誌フィルム A) B) C) D) E) F) G) H) Pomak Portraits: Women of Breznitza The Eskimos of Pond Inlet (1975) The Diary of a Maasai Village (1984) Sundanese Culture Alive (1988) The Sherpas (1977) The Tuareg (1972) The Ami Festival (1990年代後半と推定) Yanomamo of the Orinoco (1987) (1994) 6・文化の多様性と普遍性 前回 8本の民族誌フィルム・地図 2012/05/30 - [3] 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [4] 8本からわかる多様性と普遍性 多様性を見いだすことはたやすい 衣食住、生業のスタイル、言語など、第一印象ですぐにわかるほ どそれぞれの文化は異なっている いちいち自分たちの文化(≒日本文化)と比べるのが無意味に思 えるほど、地球上の文化は多種多様である では普遍性は? 一見して「共通点」を探すことは困難である 特に「自分たちの文化と比べて似ている点」を寄せ集めて普遍性 を見いだそうとすると「ごはんを食べている」「何かしら服を着 ている」「働いている」といった表現しか思いつかないかもしれ ない(もちろんそういった点も重要ではある) 「自分たちとの比較」ではない視点(cf. 先週のことばでいえば神 視点)からは、ではどんな普遍性を見つけられるだろうか 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [5] 文化の普遍性(1) 次のようなフレーズでとらえると理解しやすい それぞれに着ているものは様々だが、何かを身につけるという点 では共通である それぞれに踊りや歌は様々だが、踊りや歌という芸能・娯楽を持 つ点では共通である それぞれの言語は様々だが、コミュニケーション・ツールとして 言語を操る点では共通である 前段には、一見してわかる多様性が相当する 後段には、他の動物と比較してひとが持つ特異性が相当 する 普遍性は多様性をまとめたところに見いだせる。あるい は、普遍性と多様性は表裏一体である。 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [6] 文化の普遍性(2) (1)でみたのとは別のタイプの「普遍性」もまた見いだす ことができる 家族構成員間にみられた人間関係や感情 さまざまな環境下で暮らすために必要となる協働作業と、それを 支える言語・コミュニケーション 周囲の環境に働きかけながら、より快適に・より便利に・より楽 しく暮らせる環境を創り出そうとする営み 「文化」を世代間で継承しようという意志 常に周辺の「異文化」と接しながら変化を続ける「文化」 人間と文化の関係をより抽象的にとらえることで見えて くるこうした点について、それを人類の進化とリンクさ せて考えてみる 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [7] 文化の普遍性・多様性と人類 多様性をもたらすのは、人類の第一の特徴といえる創造 力と好奇心 環境という制約条件を緩和するために、本来人間は、どんなこと でも考えつくことができる 創造力・好奇心の淵源は、脳と手の発達 共通性・普遍性をもたらすのは、人類の第二の特徴とい えるコミュニティ(共同体)形成指向 コミュニティ維持のためにつくられるルールが、ある程度まで人 間の社会の共通性をもたらす コミュニティ維持のためのルール作りに大きな役割を果たすのが、 言語と家族(第一次的な居住集団) 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [8] 補足:文化と環境 もともと人は環境に適応するために文化を創り出したが、 その創り出した文化自体が、人にとって新たな環境とな っていった どんな動物でも(植物も含め)それなりに環境に適応する能力は 持っている。が、環境を「創り出す」能力を持っているのは、ひ とだけが持つ特徴 自分たちで創り出した「文化」という新たな環境に適応するため に、ひとの生態は著しく急速に変化を遂げた このことが、ひとの「進化」を、他の動物の進化と同列には考え にくくしている:「進化」という生物学的な生体構造の変化と、 「文化」に適応するひとの行動パターンの変化(「進歩」?)は、 本来は同一視できない 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [9] 文化とはなんだろうか 初回イントロダクションでの説明 民族誌フィルムから導かれる説明 あるひとびとの間に共有されるルールや感覚が文化 他の集団と接触することで、自分の文化に気づく 文化とは、さまざまな「環境」に適応するために、ひとびとが考 えだし、守り伝え、また磨き上げてきた知恵・知識の体系 文化人類学の古典的な定義としては次のようになる 「文化とは、後天的、歴史的に形成された、外面的および内面的 な生活様式の体系であり、集団の全員または特定のメンバーによ り共有されるものである」(KLUCKHOHN & KELLY [1945:98]) この定義のポイントは3点 1. 2. 3. 文化とは、学習されるものである(=自然にもって生まれてくるもの ではない) 文化とは、体系的なものである(=部分や要素に還元できない) 文化とは、共有されるものである(=個人ではなく、集団を想定) 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [10] 文化とは学習されるものである(1):文化と個人 社会 ● ▲ ★ ▼ ▼ ★ ◆ ■ ★ ■ ■ ● さまざまな 文化要素 ◆ ▼ ▲ ● 個人 ◆ ▲ 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [11] 文化とは学習されるものである(2):文化と個人 社会 ● ▲ ★ ◆ ▼ ▼ ★ ◆ ■ ★ ■ ▼ ★ ■ ● ■ ● ▲ ● 個人 ◆ ▲ 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [12] cf. 文化とは創られるものでもある:文化と個人 社会 ● ▲ ★ ◆ ▼ ▼ ♥ ♥? ★ ◆ ■ ★ ■ ▼ ★ ■ ● ■ ● ▲ ● 個人 ◆ ▲ 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [13] 文化は共有されるものである:文化と社会 社会 ● ★ ● ▲ ■ ◆ ● ▲▼ ▼ ◆ ★ ■ ▼ ■ ■ ▼ ■ ▼ ▲ ● ● ▲ ★ ▲ ◆ ▲ 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [14] 文化は創られるものでもある:文化と社会 社会 ● ★ ● ▲ ■ ◆ ● ▲▼ ▼ ◆ ♥ ■ ▼ ▲ ♥ ★ ▲ ■ ■ ♥ ▼ ▲ ● ● ▼ ★ ◆ ■ ▲ 6・文化の多様性と普遍性 2012/05/30 - [15] 文化・人間・社会 社会のなかで既に共有されている「文化」を、生まれた ての赤ん坊=人間は「学習」していく 社会 文化 人間 一方で、「文化」を身につけた人間は、自分の中で新た なものを創りだし、それを社会に還元し「新たな文化が 共有」されていく 社会 文化 人間
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