14章 パクス・ブリタニカの盛衰 • 1 国際金本位制とポンド体制 金本位制の成立/金本位制下の外国為替相場/ 金本位制と国際収支調整/ポンド体制の展開 • 2 両戦間期の国際通貨体制と通貨の地 域化 再建金本位制の時期/金本位制から管理通貨 性へ/通貨ブロックとスターリング地域 • 3 戦後IMF体制とポンドの凋落 IMF体制下 のドルとポンド/ポンド危機とバーゼル協定/スターリング 地域の崩壊 2013-15 MohriR 1 14-1国際金本位制とポンド体制 4-1-1 金本位制の成立 • パクス・ブリタニカ Pax Britanica • 金本位制 金を本位貨幣とする制度 • イギリス 1816年 金1オンス=3ポンド17シリン グ10 ペンス (1ポンド=純金7.32239グラム) • 法定価格で金の無制限売買,金貨の自由 な鋳造,溶解,輸出入 2013-15 MohriR 2 14-1-1② 金本位制の3タイプ • • • • 金貨本位制 gold coin standard 金地金本位制 gold bullion standard 金為替本位制 gold exchange standard 19世紀後半に金本位制が支配的となる 背景:①先進国英が採用,周辺国も為替相場の 安定が求められた.②南ア,米,豪で金鉱発見. • イギリス1816,ドイツ1871,フランス1876, 日本,ロシア1897,アメリカ1900 2013-15 MohriR 3 14-1-2 金本位制下の 外国為替相場 • 金本位制国間で固定相場制が成立 • 金1オンス=3ポンド17シリング10 ペンス =20.67ドル →1ポンド=4.86ドル(等価関係の成立) • 為替平価 exchange parity • 金現送費(金の輸出入が生ずる為替相場 の上下限)=船積費+保険料+金利 • 為替相場変動は為替平価±金現送費 2013-15 MohriR 4 14-1-3金本位制と国際収支調整 • 主要国の金本位背が長期に維持された. 中心国イギリス 1816~1914 景気循環はあったが,金 の法定価格維持,物価安定 • 物価・正貨流出入機構説 price-specie flow mechanism 物価上昇→輸出減少・輸入増大→貿易収支 悪化→為替相場下落→金流出→金準備減少→兌換銀 行券発行高減少→物価下落 • 金本位制「ゲームのルール」を“中央銀行が守った” 実際には,①物価や金利は国際的に同調して動く傾向, ②金準備減少が公定歩合を引き上げる場合でも,中銀は 国内資産を増加させた,③経常収支黒字の先進国から,経 常収支赤字の周辺国へ巨額の長期資本輸出が行われた. 2013-15 MohriR 5 14-1-4 ポンド゙体制の展開 • ポンドは最も重要な国際通貨(貿易の取引・決済 通貨)として機能 • ロンドンは,世界の決済機構の中心地 ポンド残高(各国の政府や中央銀行,民間銀行はロン ドンに流動的な資産を保有し,決済にあてた) • 世界最大の国際金融市場 ロンドン宛て為替手形 bill on London 輸出業者は ポンド建て為替手形を振り出し,引受商社が満期日に支 払いを保証した銀行引受け手形はロンドン市場で第1級 の手形として割引かれた. 2013-15 MohriR 6 14-2戦間期の国際通貨体制とポンドの地域化 14-2-1 再建金本位制の時期 • 第1次大戦勃発→金本位制停止(銀行券の金兌 換の停止,金輸出の禁止など) • 1920年代の金本位制復帰 「相対的」安定期 • イギリス 1925年 金地金本位制,旧平価 アメリカ1919,ドイツ1924,フランス1926,イタリア 1927,日本1930 • イギリス 経常収支黒字縮小し,巨額の資本輸 出維持 (短期借り・長期貸し) • アメリカ 債務国から債権国へ転化 2013-15 MohriR 7 14-2-1-2再建金本位制 • 戦債(英仏は戦費を米から調達,独賠償金で支払うと いう資金循環) • ドイツ賠償問題(ニューヨーク市場でのドイツ公債の 発行) • 世界の公的金準備に偏在が生じた(米が貨 幣用金の半分を保有,英は7%) • 複数基軸通貨体制(NY市場が台頭し,ドル保有が 高まった) • 国際金為替本位制(金不足の懸念から,イングラ ンド銀行もドル保有を増やし,普及させようとした) 2013-15 MohriR 8 14-2-2金本位制から管理通貨体制へ ・1930年代世界大不況→主要国の金本位制 離脱(国際的には短期資本の海外流出=金兌換が引き 金,対内的には不況・失業問題への対処) ・管理通貨制 managed currency systemの採用.国民通 貨と金とのリンクを断ち切り,通貨の発行を国家(中央銀 行)の裁量に委ねる.英で歴史的な低金利政策 • 為替相場は変動相場制にならざるを得ないが,多く の国で為替管理が導入された.自由な為替相場が 建っていたのは,米ドル,英ポンド,仏フランの金ブロック のみ.為替安定基金,為替切り下げ競争を伴った管理フ ロート 2013-15 MohriR 9 14-2-3通貨ブロックとスターリング地域 • 1930年代は世界経済と通貨のブロック化が進展 • スターリング・ブロック sterling bloc イギリス本国,自 治領(南ア,豪,NZ),植民地(インド,マラヤ)・保護領. 貿易・金融上密接な国(スカンジナビア,バルト3国,ポル トガル,エジプト,イラク,シャム,アルゼンチン) • 通貨圏としての特徴:固定相場の維持.介入通貨, 外貨準備としポンドを利用.地域通貨に後退. • スターリング地域の英を中心国とするネットワーク: 特恵関税制度,起債の優遇措置,英系植民地銀 行による媒介 ・仏フラン・ブロック,大東亜共栄圏 2013-15 MohriR 10 14-3 戦後IMF体制とポンドの凋落 14-3-1 IMF体制下のドルとポンド • 第2次大戦中,世界経済は通貨ブロックの強化,為 替管理の導入によって分断化 • スターリング・ブロックの為替管理体制①英 本国とともに,居住者としての扱い,②ポンドの外貨交換 性に制限,③域内でドル・プール制(金・外貨準備をイギ リスの為替平衡勘定に集中) ・米国は「自由・無差別・多角主義」を掲げ,英の「管理・差 別・双務主義」を批判.1945.12「英米借款協定」で,ポンド の交換性回復を条件に,武器貸与法債務の大幅免除,37.5 億ドルの借款供与. ・第2次大戦後のポンドは,交換性を回復しないまま,第2位 の準備通貨の地位を維持. 2013-15 MohriR 11 14-3-2 ポンド危機とバーゼル協定 • 英ポンド危機 英経常収支60年代に赤字,長期資本 収支も赤字.ポンド残高は非スターリング地域にとって過 剰保有されており,他通貨に転換されるたび,危機発生. • 英当局の矛盾した対策:①金融引締め策,②国債費抑え るために低金利政策→インフレ. • スイス・バーゼルのBIS(国際決済銀行)と西欧7か国の ポンド救済融資(1966年,1973年,1977年).しかし 保有ポンドの大部分にドル保証を付けることを約束しても, ポンド離れ拡大. • 1977.4公的ポンド残高を削減←米ドル,独マルク,ス イス・フラン,日本円建て中長期債を発行.凋落決定的. 2013-15 MohriR 12 14-3-3 スターリング地域の崩壊 • 「慣性の法則」を破壊したネットワークの解体 ①国際収支調整:英とスターリング・ブロック諸国との 間の相互補完的・垂直的国際分業関係 英では成長鈍化のため周辺国から輸入財を吸収する能 力が低下,独立国は工業化を志向,英自体が関税同盟で あるECに加盟 ②国際流動性供給(ポンドを調達通貨とする仕組み) →資金供給余力の低下,ユーロダラー市場の発生,米系資 本の域内浸透,国際機関の援助 ③ポンドの信認:「カレンシーボード制」や「ドルプール」 など,ポンドを準備通貨として保有する慣行が弛緩←貿易 圏の縮小,植民地の独立,対外準備保有の強まり. 2013-15 MohriR 13
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