5章 国際金融市場 • 1 国際金融市場 国際金融市場の意義/国際金融市場の構成 • 2 伝統的金融市場とユーロ市場 伝統的市場/ユーロ市場/国際銀行活動と国際証券発行 • 3 デリバティブ市場 デリバティブ市場の急成長/先渡し・先物/スワップ/ オプション/デリバティブ市場の機能 2013-15 MohriR 1 5-1-1 国際金融市場の意義 • 資金過剰部門から資金不足部門への,国 際的な資金の調達や運用が行われる場 • 個別経済次元 ①再生産に関わる資本の 節約や遊休貨幣資本の動員 ②ヘッジ, 投機,裁定のための取引 ③金利収入や 手数料稼ぎ • 国民経済次元 各国の貯蓄と投資の ギャップを埋め,経常収支のファイナンス 2013-15 MohriR 2 5-1-2 国際金融市場の構成 • 市場機能から見た分類 ①伝統的市場:従来の国内金融市場において非居 住者が取引に参加する場合.ロンドン,NY,東京など ②ユーロ市場:本国以外で当該国通貨取引が行わ れる.ロンドンで米ドル建て.EUの共通通貨ユーロとは 別範疇. • 取引対象から見た分類 ①現物市場ないし原資産市場 ②デリバティブ(金融派生商品)市場 2013-15 MohriR 3 2 伝統的市場とユーロ市場 5-2-1① 伝統的市場 • 国内金融市場の国際化としてスタート • 短期金融市場(満期1年未満) ①コール市場:金融機関間の短期資金過不足を調整 ②手形市場:民間人の振り出した手形を売買(再割引) ③公共債市場:国債や政府短期証券の売買市場 • 長期金融市場(証券市場) ①株式市場equity market ②債券市場bond market ①発行市場primary market ②流通市場 secondary market 2013-15 MohriR 4 5-2-1②伝統的市場の展開過程 • ロンドン市場 英の経常黒字・資本輸出国化を背景 19世紀後半に国際金本位制下で国際化 ・短期金融市場:手形市場とコール市場が存在.マー チャント・バンカーなど引受商社がロンドン宛為替手形, BA手形を割り引いた. ・ロンドン・バランス 各国の銀行や輸出入業者は,ロ ンドンの金融機関に口座を開き振込・引き落とし勘定を 作った. 2013-15 MohriR 5 5-2-2①ユーロ市場のメカニズム • 発生:1950年代にソ連や東欧諸国がドル建て預 金をロンドンへの預換え • NYのドル建て当座預金をロンドンの定期預金 に預替え.ユーロ取引の決済はアメリカで行わ れる. • 金利規制と準備率規制がなかった.資金運 用者,利用者にとって有利⇒ユーロ市場の拡大 • 「最後の貸手」Lender of Last Resort 不在 2013-15 MohriR 6 5-2-2②ユーロ市場の拡大と変貌 • 1960年代半ばから70年代 変動金利による中 長期ユーロ・シンジケート・ローン 3か月また は6か月ごとに金利を見直し短期預金の借換え(ロール・ オーバー)で長期貸付 1970年代2度の石油危機 • 80年代ユーロ市場の証券化←中南米など債務 累積でシンジケート・ローンの役割低下.保証のない非 引受型ファシリティが登場(短期のユーロCPや中期の ユーロMTN) • ユーロ預金市場の流動性低下←90年代から 21世紀 世界的な通貨・金融危機の勃発 2013-15 MohriR 7 5-2-2③ニューヨーク,東京市場 • ニューヨーク市場 ・第2次大戦後,ドルの国際化 ・ドル・バランス ・アメリカ国債市場 ・広告塔 ADR(アメリカ預託証券) • 東京市場 ・1980年代後半最大の資本供給国になったが 空洞化 2013-15 MohriR 8 5-2-2④ オフショア市場 • 内外分離型:国外から資金を調達しても, 国内に流入させず,国外で運用 NY,東京 • 内外一体型:国内ーオフショア市場の資金 交流が自由 ロンドン,香港,バンコク • タックスヘイブン(租税逃避地)型 90年代国際資本取引の回転台 バハマ,ケイマンなど,カリブ海 2013-15 MohriR 9 5-2-3国際銀行活動と国際証券発行 • 伝統的市場とユーロ市場の併存 • 国際銀行市場 国境を越えて行われたクロスボー ダー取引では,①貸出・預金が7割を占め,②米ドルに次 いでユーロが上昇し,円は低迷,③運用先では英と米が 大きい. • 国際証券市場 国際債券(貨幣市場商品と債 券・ノート)と国際株式.①債券・ノートが量的に大きく, ②米ドルにユーロが急迫,③発行地では先進国,業種別 では金融機関が大きい. 2013-15 MohriR 10 5-3 デリバティブ市場 5-3-1 デリバティブ市場の急成長 • 背景:1972年5月,変動相場制移行にともなっ て,シカゴ商品取引所 通貨先物開始.債券,金 利,株価指数などに先物拡大 • デリバティブ市場 ①取引種類:先渡し,先物,オ プション,スワップ.②取引場所:店頭OTC取引(顧客 同士が相対)と定型的な取引所取引. • アメリカのIT革命⇒金融が比較優位産業 • 国際決済銀行BIS:Bank for International Settlements の自己資本比率規制で銀行のオフバランス化 • 原資産:商品,通貨(外国為替),金利,株式,信用 2013-15 MohriR 11 5-3-2 先渡し・先物 • 定義:ある金融商品を将来の一定時期に予め決められ た価格で取引することを契約する • 先渡し:非定型的な店頭取引.例為替先物予約 為替リスクのヘッジ(損失回避)や投機(安く買って高く売 る),裁定(先物相場の実際値が理論値から乖離するとき, それを利用して儲ける)の目的で利用される. • 先物:定型的な取引所取引.例-株価指数先物 約定価格に相当する資金を用意する必要はなく,委託証 拠金などを納めるだけで済む. 2013-15 MohriR 12 5-3-3 スワップ • 交換.直物の買いと先物の売りを同時に行う為替スワ ップ.中央銀行間でお互いの通貨を預けあうスワップ取 引. • 金利スワップ 有利な金利で資金調達できる異国の企 業同士が,異なる通貨資産を借り入れて金利を交換する • 通貨スワップ 有利なコストで資金調達できる異国の 企業同士が,異なる通貨で借り入れて資金を交換する 2013-15 MohriR 13 5-3-4 オプション • 将来一定の条件で金融資産を買う権利(コールオプショ ン),売る権利(プットオプション)の店頭市場における相 対取引. • 先物は売買契約の義務.オプションでは,不利益を被る 場合には権利放棄できる. • 損失は権利を得るために支払われたオプション料=プレ ミアム以上にはならない. • プレミアムを決定する要因:①原資産価格,②権利行使 価格,③金利,④満期までの期間,⑤原資産のボラティ リティ(変動度合い). • ブラック=ショールズ方程式(1973年): オプション価格の 計算式.ヨーロピアン(満期日にのみ権利を行使できる)・コー ル(およびプット)に利用可能.金融工学の先がけ.ノーベル賞 受賞1997. 2013-15 MohriR 14 3-5 デリバティブ市場の機能 • 経済的機能の整理=より高次の市場概念 (1)デリバティブ市場は,ヘッジ(リスク回避) ,投機(収益拡大),裁定(現実値と理論値の 差を利用) (2)伝統的資金調達活動の補完:スワップ (3)国際金融市場の相互依存性を強め,不 安定性を増幅する.レバレッジ効果. 2013-15 MohriR 15 2013-15 MohriR 16 2013-15 MohriR 17 2013-15 MohriR 18 2013-15 MohriR 19
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