経済変動論II 2006年度前期 第7回 3.5 国際関係のレギュラシオン様式と フランス経済 清水 耕一 www.e.okayama-u.ac.jp/~kshimizu/ クスクス(couscous) 3.5 国際関係のレギュラシオン様式 (1)パクス・アメリカーナと国際関係のR様式 フォード主義的成長体制を可能とした国際経済秩序 固定相場制、国際的資本移動の管理、自由貿易 ブレトン・ウッズ体制(1945~73年) ブレトン・ウッズ協定⇒金・ドル本位制と固定相場制 国際収支の不均衡⇒通貨価値の切下げは可 裁量的金融政策も可 物価の安定、完全雇用の達成、対外均衡の維持、安定高成長を目的 為替相場の安定と金融政策の両立⇦国際資本移動の管理 国際的資本移動が制限されていた理由 為替管理 米国も資本流出を防止 国内の設備投資⇒資本輸出能力は低い 開発途上国への援助は小規模(借款、政府援助) 私的資本もヨーロッパ内に投下されていた 3.5 国際関係のレギュラシオン様式 (1)パクス・アメリカーナと国際関係のR様式(続) 国際流動性のレギュラシオン様式 対外不均衡の調整に際して外貨準備が重要な役割を果たす 国際流動性(基軸通貨としてのドル)は米国の国際収支に依存 経常収支黒字⇒資本流出⇔ドル供給の増加 経常収支赤字⇒資本流入⇔ドル供給の減少 背景:米国多国籍企業の行動 米国経済が好況⇒多国籍企業は海外よりも国内に投資 米国経済が不況⇒多国籍企業は国内よりも海外に投資 ドル保有国の行動 国際流動性過剰の局面⇒ドル準備の一部を金に交換⇒国際流動 性の減少 ブレトン・ウッズ体制は国際流動性の国際的なレギュラシオン・ メカニズムを備えていた。 参考:金本位制の時代のレギュラシオン様式 ΔNX>0⇒金流入⇒国内のマネーサプライの増加 3.5 国際関係のレギュラシオン様式 (2)米国の技術的優位と安定した国際分業体制 米国の技術的優位:1950代~1960年代前半 戦後には各国が圧倒的な技術水準をもった米国から新技術を導入 媒介としての生産性運動 バーノンのプロダクト・サイクル説 全ての新技術(新製品)は米国で生れる 米国内で新製品の生産と普及 製品の陳腐化⇒生産の海外移転 パクス・アメリカーナ(Pax Americana) 根拠:技術的優位⇒経済的優位性⇒政治的軍事的優位性 技術的優位性を喪失するとどうなるのか? 技術・経済的優位性の喪失を補うものとしての軍備と武器の消 費? 1960年代末 :独、日がキャッチアップ⇒国際秩序の不安定化 1970年代のOPEC⇒国際秩序の不安定化の加速 3.5 国際関係のレギュラシオン様式 (3)フランスの対外ポジションの変化 1946~1950年:戦後復興期 輸出量は4倍に増加−−1938年水準の1.64倍 主要な輸出品:鉄鋼製品と電気関連資材 主要な輸出市場:周辺国およびイギリス、大陸西欧諸国 フランスの海外領土とドイツが喪失した市場 問題点 貿易黒字はフランスの海外領土との貿易から 先進国との貿易は赤字⇒支払い(外貨準備)問題 1950年代からの構造変化 殖民地帝国の解体⇒海外市場の縮小 半製品輸出はマイナス20%、消費財はマイナス51.8% 旧植民地への輸出(シェア) 1949年の38.2%⇒1973年の9.1% EECの結成(1957年のローマ条約による)の影響 EEC諸国との貿易の増加 輸入シェア 1947年の26.3%⇒1973年の54.6% 輸出シェア 1947年の33.4%⇒1973年の53.1% 貿易品目の変化 農産物 エネルギー 中間財 資本財 家庭用設備財 自動車 消費財 輸入 1959 1973 33.5 15.7 輸出 1959 1973 7.7 16.6 19.3 21.3 11.7 26.7 3.6 24.7 2.1 22.1 10.3 6.1 17.9 1.9 11.8 0.8 18.1 0.9 1.2 5.7 1.9 10.7 10 18.7 10.3 13.4 3.5 国際関係のレギュラシオン様式 (3)フランスの対外ポジションの変化(続) 貿易構造の変化 農業の発展⇒農産物輸入の減少と輸出の増加 中間財輸出入の高いウエイトは不変(先進工業国の特徴) 資本財輸出入のウエイトも増加傾向(先進工業国の特徴) 貿易構造に見られる問題点 対開発途上国は貿易黒字 対先進工業国は貿易赤字 フランス産業の国際競争力? 軍需品とコスメティックとルイ・ヴィトン? 1959年以降、国内市場は外国製品によって侵食され始める 工業製品の輸入は国内工業生産の2倍の速度で増加 ⇒カバー率(輸出額÷輸入額×100)の低下(参照Figure 9) 1969年のフランの切下げ以降、経済成長は内需中心から外需中心へ フォード主義的成長体制から外向的成長体制への転換?
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