14 国際政治経済学で解く現代世界経済 ーグローバル化の進展と国民国家の変容ー 14.1 国際政治経済学の理論的枠組 14.2 IPEの基礎概念と主要な学説 14.3 グロバリの進展とパワーシフト 14.0 国際政治経済学で解く現代世界経済 ーグローバル化の進展と国民国家の変容ー • グローバリゼーションの進展 →①国家の管理能力の弱体化と変容 →②国境を超えた地球規模の問題群 環境汚染,大量の移民の流出入,投機的な国際短 期資本移動,生命特許などの知的財産権問題など →③NGOやNPO等の非国家アクターの台頭: グローバル・コミュニティへの展望やそこでの統治を めぐるグローバル・ガバナンスが問題 14.1 国際政治経済学の理論的枠組 a 政治と経済の相互作用と国際政治経済学の有効性 • ハイポリティクス(高次元政治):国家安全保 障問題中心の主権国家間の外交関係 • ローポリティクス(低次元政治):通貨,通商, マクロ経済調整など⇒経済問題の政治化 • 国際政治経済学(IPE)の登場:ただし政治学 の立場から考察・整理・展開 14.1 国際政治経済学の理論的枠組 b 国民国家体系から覇権国による組織化への変貌 • 国益をめぐる諸国家間の対抗と妥協 • 第2次大戦後は,「冷戦対抗」 • パクス・アメリカーナ:主権国家アメリカのヘゲ モニー(覇権)行使.政治・経済・軍事・イデオ ロギー.門戸開放政策や市場原理の提唱 • 国際機関による補完的機能:IMF,世界銀行, ガット • 2国間投資保証協定,二重課税防止協定 14.1 国際政治経済学の理論的枠組 c パクス・アメリカーナの揺らぎと再編 • パクス・アメリカーナの揺らぎ ①アメリカの過剰な軍事的干渉と軍事支出 ②アメリカ企業の多国籍化と国内経済の空洞化 ③軍事中心⇒民間製品技術の立ち遅れ ④貿易収支・経常収支の大幅赤字化⇒ドル危機 ⑤日本,西欧の経済力の回復と上昇,NIEsの台頭 ・ 再編 ①弱体化したアメリカを先進諸国が共同で支える ②IT革命に先導されたアメリカの知識中心の情報立国への道 14.2 IPEの基礎概念と主要な学説 a IPEの基礎的概念・分析ツール・手法 • IPE:政治と経済の相互作用.経済の政治化 • 手法:国益に昇華された個別課題が外交交渉を通 じて実現・頓挫していく経緯の分析 • 国家とその国力:「ウェストファリア体制」. 軍事力,経済力,知力 • 利益集団間の個別利害の国益への昇華 • 統治形態の模索:民主主義国家,独裁国家 • 覇権国と「覇権安定論」:正当性,妥当性,信従 • 構造的パワー(軍・経・知)と関係的パワー(見えない糸によ る指導力) 14.2 IPEの基礎概念と主要な学説 b IPEの主要潮流① • ナショナリズム:マーカンティリスト(重商主義者),ナショナリスト, リアリスト,ステイティストなどの形態.国益中心の分析と解決姿勢. • リベラリスト:古典派経済学,新古典派経済学,相互依存論など. 政治的な干渉を最小にして,事物を自然な運動に任せる. • マルキシズム:政治と経済の相互作用.後者が土台. • ネオリアリズム:リアリスト(政治的現実主義者)からの本質的継承 と批判.アイデアリスト(理想主義者)の批判.権力闘争としての国際 政治における勢力均衡.全体として戦争のない状態を次善. 冷戦爛熟期のアメリカ中心の世界を覇権安定論から説く.構 造的現実主義者ギルピン • ネオリベラル派:経済合理性.公共選択論.合理的選択論. 14.2 IPEの基礎概念と主要な学説 b IPEの主要潮流② • 国際レジーム論:冷戦爛熟期を相互依存世界と規定し, 国際協調の必要性とその事実を次善と説く.多国籍企業・銀 行の台頭,グローバル化による国家主権の危機(ヴァーノ ン).ソフト・パワー論(ナイ).結局は,覇権国アメリカの必要 な決定権と選択肢のあれこれの手法の違いに収斂.別のオ ルタナティブ(代替可能策)なし. • クリティカル・セオリー:従属論(フランク).世界シス テム論(ウォーラスティン).ネオ・グラムシアン(ギル,コック ス):社会の全体構造(生産力,それに照応する観念,社会制度)のヘゲ モニーを誰が握るか.有機的知識人によるトランスナショナルな「資本の 権力」.構造的暴力(ガルトウング) 14.3 グロバリの進展とパワーシフト a ポスト冷戦時代,知中心時代へのパワーシフト • 1990年代 冷戦体制の瓦解 ソ連・東欧の社会主義体制の崩壊 アメリカ IT革命・情報化,しかし双子の赤字 日本,アジアNIEs,中国 EU,拡大EU • アメリカの知中心へのパワーシフト インターネット,金融,物流,研究開発 国民国家を基本とした世界の溶解→グローバル・ ガバナンスの必要 14.3 グロバリの進展とパワーシフト b アンチ・グローバリズムの試みー21世紀への展望 • フェア・トレード(fair trade):市場原理でない 妥当な価格での生産者と消費者間の交換 • マイクロ・クレジット(micro credit):女性の社 会進出.グラミン・バンク • コラボレーション(collaboration):先進国の中 小企業と途上国の地場企業との間の互恵的 生産者協力のネットワーク形成 • ゼロ・エミッションをめざす循環(recycle)・再 利用(reuse)・省廃棄(reduce)
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