11章 開発金融の諸問題 • 1 南北問題の登場と国際金融 経済開発と 金融/南北問題と援助体制の構築 • 2 オイル・マネーの還流と債務危機 ユーロ 市場と国際収支ファイナンス/先進国とオイル・マネーの 還流/1980年代債務危機と資本移動の逆転/ベーカー提 案からブレイディ提案(債務削減)へ • 3 構造調整から貧困削減へ 構造調整融資の 失敗/成長促進から債務削減へ • 4 21世紀のODA ミレニアム開発目標/ODAの 新潮流/日本のODA 2013-15 MohriR 1 11.1 南北問題の登場と開発金融 11-1-1 経済開発と金融 • • • • 開発金融 経済開発のための資金調達 国内貯蓄の動員 & 外資導入 公的ルート ODAと公的保証融資 民間ルート 直接投資,株式投資,債券発 行,銀行融資 • 1950~60年代は公的資金フロー • 1970年代以降 民間資金フロー増大 2013-15 MohriR 2 11-1-2 南北問題と援助体制の構築 • ODA (Official Development Assistance) • ①政府ないし政府機関,②経済開発や福 祉の向上,③譲許的な供与条件 • ①2国間援助と多国間援助,②資金協力 と技術協力,③無償協力と有償協力 • グラント(贈与)比率,タイド(紐付き)比率 • 1960年 DAC(開発援助委員会),IDA(第 2世銀)設立 2013-15 MohriR 3 11-1-3 開発金融と輸出信用 • 満期1年超の公的輸出信用 • ①公的機関の直接融資,②民間銀行によ るサプライヤーズ・クレジット,③バイヤー ズ・クレジット • 限界:高い金利コスト,短い返済期間 ⇒債務累積 2013-15 MohriR 4 11-2 オイル・マネーの還流と債務危機 11.2.1 ユーロ市場と国際収支ファイナンス • 1973年秋 OPECによる原油価格引上げ • オイル・マネー ユーロ市場への流入 ⇒経常収支赤字の途上国への還流 • 金融革新 ①シンジケート・ローン(協調融 資),②変動金利,③借換え 2013-15 MohriR 5 11-2-2 先進国とオイル・マネー の還流 • 先進国の輸出市場確保のねらい • オイル・マネーを受入れた先進国の多国籍 銀行の融資先探し ①先進国は不況,② 産油国はカネ余り,③非産油途上国の資 金需要! • 先進国商品購入のための貿易金融.要す るに自国輸出拡大のための「負担転嫁」 2013-15 MohriR 6 11-2-3 1980年代債務危機と 資本移動の逆転 • 債務のメリー・ゴーランド • 金利支払い延滞⇒危機表面化⇒途上国向 け資金フロー逆転 • 原因 ①アメリカの高金利⇒変動金利で利 払い増大,②逆石油ショックによるオイル マネーの枯渇 • 流動性危機と支払い不能危機 • 途上国開発の危機と金融危機 2013-15 MohriR 7 11-2-4 ベーカー提案(新規融資)から ブレイディ提案(債務削減)へ • ベーカー提案 1985 ①民間銀行による新規融資,② 世界銀行の引き入れ,③中南米中心の15カ国に重点 • シティバンクによる貸倒引当金の積増し 1987 • ブレイディ構想 1989/3 ①債務削減・金利軽減 に応じた銀行に,IMF・世銀が債務返済を保証す る,②応じない銀行には元利支払いを3年間停 止,③財源の裏づけ:IMFの第9次増資と日本な ど先進国政府の公的借款 • ワシントン・コンセンサス 2013-15 MohriR 8 11.3 構造調整から貧困削減へ 11-3-01 1990年代 途上国向け資金フローの変化 • 民間資金急増 92年に公的金融を上回る ①冷 戦終結,②社会主義国の援助受取国化,③先進 国の財政赤字 • 直接投資増大:民間資金フローの半分 途上 国の自由化(規制緩和,国営企業の民営化,イ ンフラ民営化)と多国籍企業の戦略 • ポートフォリオ投資(株式・債券投資)増加 • 商業銀行融資の復活 1995年以降 2013-15 MohriR 9 11-3-02 エマージング・マーケット +ワシントン・コンセンサス • 1980年代債務削減策としての債務の株 式化 先進国銀行がもつ債権を,途上国に進出しょうと する多国籍企業に,額面より安く売却し,企業は買い 取った債権を債務国中央銀行に持ち込み,額面に近い 価格分の現地通貨に転換する • 銀行融資による資金調達 不可能 • 財政支出の規律づけ・国営企業の民営化と 株式市場の育成 • 貿易自由化・直接投資誘致 • 金融自由化 2013-15 MohriR 10 11-3-1 構造調整融資の失敗 • インフラ等向けプロジェクト融資の非効率 →輸入資金のための長期プログラム融資 • 世銀1980年 SAL,IMF 1986 SAF • コンディショナリティ 経常収支と財政赤字の解決, 外貨獲得部門を優先,政府支出(教育・保健,公務員)の 削減→民間債務の公的債務への移し替え • →国内経済の弱体化,対外債務の増大 2013-15 MohriR 11 11.3.2 成長促進から貧困削減へ • 債務危機はブレイディ提案により一応収束 • 2国間債務問題は,パリ・クラブ→サミット 会合へ. • HIPCイニシアティブ 1996:健全な実績の重債務 貧困国むけ特別援助 42か国指定 適格条件①低所得 国,②構造調整プログラムを忠実に実行,③持続可能な レベルを超えている,④合計6年間 • 新PRSP貧困削減戦略ペーパー1998:当事 国主体,福祉・社会保障・教育・保健医療にも配慮 2013-15 MohriR 12 11-4 21世紀のODA 11-4-1 ミレニアム開発目標(MDGs) • 国連開発計画(UNDP)1990:人間重視,人 間開発指標を発表,『人間開発報告』 • 2000.9MDGs採択 ①極度の貧困と飢餓の半 減,②初等教育の完全普及,③男女平等,④5 歳未満死亡率を3分の1に,⑤妊産婦死亡率を4 分の1に,⑥HIV,マラリア,結核の蔓延防止, ⑦環境の持続性,⑧開発のためのグローバル・ パートナーシップの推進.←取り残された国が先 進国を脅かす危惧.図11.2,図11.3 2013-15 MohriR 13 11.4.2 ODAの新潮流 • 1990年代後半に①手段:債務削減,②目標:MDGs, ③手続き:PRSPが確立. • 21世紀に①選択的援助の潮流;同時多発テロ以 降2002ブッシュ「テロ対策としての貧困削減」ガバナンス 重視でMCA贈与.②2005「援助効果にかかるパリ 宣言」質の改善.オーナーシップ重視/制度・政策の整合 性/援助の調和化/開発成果の管理/説明責任.③援助 の供給と管理.アンタイド透明化/援助の贈与化と財政 支援型(not財貨の立替払いbut予算会計に給付) 2013-15 MohriR 14 11.4.3 日本のODA • 日本のODA:1990年に世界一.2001年以降ODA予 算縮小で米に再逆転.対GNP比0.18%でDAC加盟23か 国中下から2番目の低さ. • 「政府開発援助大綱」①旧1992理念.人道的 見地から飢餓・貧困からの解放/平和と繁栄/環境の保全/ 自助努力.②新2003理念.国際社会の平和と発展に 貢献し,我が国の安全と繁栄を確保.③新新2010外 務省まとめ.開かれた国益の増進. • 日本の特徴①円借款中心(贈与が少ない),②ハー ドのインフラ支援が多い,③アジア中心だったがアフリカ 増大,④タイド比率は低下しつつある. 2013-15 MohriR 15
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