3章 国際収支と国際貸借 • 3-1 国際収支と国際収支表 国際収支の概念/国際収支表 • 3-2 国際収支と国民経済 国民所得勘定と経常収支/開放経済における所得決定/ 経常収支の短期理論/経常収支の中・長期理論 • 3-3 国際収支と国際貸借 ストックとしての国際貸借/日米の対外純資産/ サステナビリティ問題とアメリカを中心とする国際資金循環 2013-15 MohriR 1 3-1-1 国際収支の概念 • • • • ある期間 居住者と非居住者間の経済取引 発生主義(取引=所有権移転時点で) 複式簿記の原則(1つの経済取引が,貸方 (受取勘定)と借方(支払勘定)に同時に計 上される) 2013-15 MohriR 2 3-1-2 国際収支表 • 日本は1996年1月,IMFの新基準準拠 • 貿易収支,貿易外収支→貿易・サービス 収支に.サービス収支の細分化.投資収 益収支は所得収支として独立. • 経常移転収支と資本移転収支 • 資本収支の長短を廃止し,機能別分類へ. • 自国通貨建て表示へ. 2013-15 MohriR 3 2 国際収支と国民経済 3-2-1 国民所得勘定と経常収支 • 総供給=国内総生産(GDP)+財・サービスの輸入(M) (1) • 総需要=消費(C)+投資(I)+財政支出(G) +財・サービスの輸出(X) (2) • 貿易・サービス収支(X-M)=GDP-(C+I)-G (3) • 経常収支(X-M+Z)=国民総生産(GDP+Z=Y)ー (C+I+G) (4) • 経常収支(X-M+Z)=民間純貯蓄(S-I)+財政黒字(T-G) (5) 2013-15 MohriR 4 3-2-2 開放経済における 所得決定 • 経常収支(X-M+Z)=民間純貯蓄(S-I)+財政黒字(TG) GDPが均衡するためには事前成立必要 • 輸出と所得・移転収支は外生変数,輸入は所得の 増加関数→左辺は所得の減少関数(右下がり) • 投資と財政黒字を外生変数,貯蓄を所得の増加関 数→右辺は所得の増加関数(右上がり) • 経常収支黒字削減策としての内需拡大→所得増大 • 同上 としての円高誘導→所得減少 2013-15 MohriR 5 3-2-3 経常収支の短期理論 (1)弾力性アプローチ • 円高→日本製品競争力低下→輸出減少・輸入増大 • 1%の円高→輸出品ドル建て価格1%上昇. 輸出の価格弾力性e.円表示輸出額e%減少. 輸入の価格弾力性e*.円輸入額(1-e)%減少. • 貿易赤字化のためには,輸出減少>輸入減少 マーシャル=ラーナー条件: e+e*>1 • Jカーブ効果: • 輸出入動向は,両国の所得の動きにも影響を受ける. 2013-15 MohriR 6 3-2-3経常収支の短期理論 (2)アブソープション・アプローチ • 国内総支出合計(C+I+G)=Aを(4)式に代入. (X-M) =GDP-A (6) • 為替切下げ→価格競争力上昇→外国からの需要増大→国 内総生産増大 • 国内総支出増加<国内総生産増加のとき,経常収支改善 (生産拡大の余裕のないとき,変化なし). • 為替切下げ→輸入物価上昇→消費抑制 (3) マネタリー・アプローチ ・貨幣市場の需給均衡条件=国内信用+外貨準備 ・固定相場制では,経常黒字⇒外準増加,赤字⇒減少 2013-15 MohriR 7 3-2-4 経常収支の中・長期理論 (1)IS(貯蓄・投資)バランス・アプローチ • 景気循環や政策の影響を取り除き,趨勢 的(構造的)な経常収支の不均衡を民間の 貯蓄・投資バランスに求める. (5)式から • 経常収支(X-M+Z)=貯蓄・投資バランス (S-I) (9) • 為替相場変化は,貯蓄・投資バランスに影響 せず,中長期的な経常収支調整には無力 2013-15 MohriR 8 3-2-4 経常収支の中・長期理論 (2)国際収支発展段階説 • 1国の経済発展に,貯蓄ライフサイクル仮説 • 未成熟債務国 国内貯蓄不十分で経常赤字を資本 流入でファイナンス • 成熟債務国 貿易黒字,債務利払い • 未成熟債権国 経常黒字,資本輸出,投資収益受取 • 成熟債権国 貿易赤字,投資収益で経常黒字を維持 • 債権取崩国 赤字を過去の対外債権取崩で補填 • 単線的歴史観 米日の経常赤字・黒字を弁護 •2013-15 1980年代半ばに『経済白書』『通商白書』が応用 MohriR 9 3 国際収支と国際貸借 3-3-1 ストックとしての国際貸借 • 国際貸借 一定時点における対外資産負 債残高というストックの記録 • 理論上は,経常収支の黒字(赤字)と対外 純資産の増加(減少)額は一致するはず. しかし統計上の誤差脱漏,為替相場変動 による評価増減などのため,一致しない. • 外貨建ての資産負債はその時点での為替 相場で評価する. 2013-15 MohriR 10 3-3-2 日米の対外純資産 • 図3-2 日米両国の対外純資産の推移 • アメリカの直接投資残高は再取得価格法と市場 価格法の2通りで表示,前者で1986年,後者で 1989年に純債務国に転落. • 対外資産残高はフローとしての経常収支に影響 されるだけでなく,経常収支にも影響を及ぼす. • アメリカ 世界最大の純債務国だが,対外投資 の収益が外国の対米収益を上回り,アメリカの 所得収支は2002年を除いて黒字. 2013-15 MohriR 11 3-3-3 サステナビリティ問題と 国際資金循環 • 各国の国際収支表を統合し,世界全体の資金循 環表 global flow of funds を描く. • 基軸通貨国 その国の対外取引のあり方だけで なく,国際通貨制度の安定にも重要. • サステナビリティの指標:債務残高のGDP比が 一方的に増大しない条件;①経常収支黒字,② 経済成長率>利子率. • ドル減価論やISバランス論よりも,米への資本流 入>経常収支赤字の「世界資産重視」論台頭 • アメリカは「世界の銀行」,「世界のベンチャー・ 2013-15 MohriR 12 キャピタル」論
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