平成15年度卒業研究 トランスログモデルによる家庭 部門エネルギー消費分析 四蔵研究室 澤居 寛明 研究目的 家庭部門で消費されるエネルギーは増加の一途を たどっており、この部門の省エネと消費抑制が大き な課題になっている。 家庭部門におけるエネルギー消費には、様々な要 因が影響しているが、本研究ではエネルギー価格に 着目し、その変動によってどの程度消費を抑制でき るのか、あるいはエネルギー間の代替が生じるのか を、数学モデルを使い分析する。 研究方法 分析に用いたモデル式は、以下に示すトランスログ型の生 産関数である。ここで、Vは単位コスト、Piはi種エネルギ ーの価格、tは技術進歩を表す時間項、α0, αi, βij,γit, γttはパ ラメーター である。 logV 0 ilogPi n i1 1nn n 1 2 logP logP t logP tt t ij i j 2 it i i1 j1 i1 2 2 データはエネルギー価格、エネルギー消費量共にOECDの エネルギー統計を利用した。着目したエネルギー種は、灯 油、石炭、電気、ガスの4種である。モデル式の解法は Zellnerの同時推定法によった。得られたパラメーター値か ら、代替弾力性、自己価格弾力性、交叉価格弾力性を計算 し分析に供する。本研究では我が国を事例に分析した。 研究結果 代替弾力性については、「石炭と灯油」、「石炭と電気」、 「電気とガス」が代替関係として、「灯油と電気」、「灯油 とガス」は補完関係として計測された。 自己価格弾力性については、ガスと電気は一貫して価格に 対し非弾力的であった。また灯油と石炭は、当初やや弾力的 であったが、絶対値は経年的に減少してきている。 交叉価格弾力性については、電気、ガス、灯油の価格変化 に対する交叉価格弾力性は、いずれのエネルギー種も中立的 であった。石炭については、灯油と電気が代替的、ガスが補 完的と計測された。 以上より、我が国における家庭部門のエネルギー消費は、 自己価格に対して非弾力的、交叉価格に対して中立的であり、 エネルギー消費を政策的に抑制するためには、エネルギー価 格の引き上げが必要である。
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