商品企画を通した市場創造:井村屋株式会社1

ケース
商品企画を通した市場創造:井村屋株式会社1
中京大学総合政策学部 教授 坂
井村屋株式会社は
田 隆 文
着目し、2012 年 3 月、スポーツやアウトドアシーン
1896 年、羊羹を取扱商
を意識した「スポーツようかん」を企画発売した。
品とした菓子舗として
「スポーツようかん」はさまざまなメディアで取り
創業しており、戦中の砂
上げられるとともに、これまで羊羹が並ぶことのな
糖統制が解かれた 1951
かったスポーツ用品店などの新しい売り場や新しい
年以降もいち早く羊羹
食シーンを生み出している。
の製造を再開するなど、
「えいようかん」と「スポーツようかん」の売上
羊羹製造に傾注してきた。また同社は現在でも、ゆ
げの伸びにより、同社の羊羹全体の売上げは順調に
であずきや水ようかん、あずきバーなど、小豆を
伸びており、同社はその売上げを更に伸ばすべく、
使った商品も多彩に取り揃えている。
2014 年 3 月、食欲のない朝でも食べやすい朝食向け
同社は2008年から防災用として販売していた「え
羊羹として「おはようかん」を発売した。
いようかん」を 2011 年にリニューアルした。この
リニューアルポイントの 1 つめは、製造技術の革新
により賞味期間を 5 年半に延長したことだ。2 つめ
は、化粧箱表面に点字をつけるなど、パッケージに
様々な工夫を凝らしたことだ。これらにより、東日
本大震災を教訓とした防災意識の高まりもあり、各
下表は 2013 年の 1 世帯当たり(二人以上の世帯・
所から引き合いを受けるとともに、売上げも順調に
全国)月別の羊羹への支出金額(単位:円)である
伸ばしている。
(総務省家計調査報告より作成)。この表を見ても分
そもそも、羊羹とは日本
かるとおり、羊羹の支出は夏場に集中しており、新
の代表的な和菓子である
たな市場の開拓が求められる。
が、同社は羊羹を新しい切
このような状況下で、あなたが井村屋の開発担当
り口で捉えることにより
者であったならば、どのような食シーンで食べられ
新市場・新顧客を創造でき
るどのような羊羹を提案するか。また、それをどの
ると考え、オリンピックイ
ような販路でどのようにプロモーションして販売す
ヤーであることや高まりつつあるスポーツブームに
るかを考えなさい。
1月
39
2月
33
3月
36
4月
45
5月
53
6月
73
7月
126
8月
126
9月
56
10 月
11 月
12 月
44
50
82
1 本ケースの作成にあたっては井村屋株式会社上席執行役員開発部部長中道裕久氏に格別のご協力を賜った。なお、本ケース
における記述はマーケティングの巧拙を示すものではなく、討議の資料として作成されたものである。
FORUM OF POLICY STUDIES 2015
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